Richard Veryard氏の最近のブログのポストでは次のような内容をとりあげている。
SOAの世界は最終的にエコシステムのアイデアのいくつかにたどりつきます...ビジネスとソフトウェアサービスを作成するための生物学的なアプローチです。
Richard氏によると、このアプローチはSOAに対するソリューション主導のアプローチとは根本的に異なり、特定のソリューションの要求に基づいてサービスを定義するかわりに、それらが属するエコシステムにもとづいて定義を行うというものだ(トップダウンとボトムアップのサービス・デザイン・アプローチの違いと比較できる)。 Richard氏は、ソリューション主導のSOAからSOAエコシステムへの移行は、SOA成熟度のあるフェーズだとに考えている。彼は、次のような3つの成熟度レベルを示している。
- 次のようなステップを含む特定のソリューションに基づいた実験的なSOA:
- ビジネス上の問題の特定
- ソリューションのユーザの特定
- ソリューションに対する要求に関する交渉
- ソリューションの設計と実装
- 次のようなステップを含む一般的なソリューションに基づいたエンタープライズSOA:
- ビジネス領域の特定
- ビジネス領域のユーザの特定
- 領域特有の要求の定義
- 特定のビジネス領域に対するソリューションキットの設計と実装
- 次のようなステップを含む進化に基づいたエコシステムSOA:
- エコシステムの特定
- エコシステムに特有のサービスの特定
- エコシステムの参加者へのサービス実装の配布
エンタープライズSOAとエコシステムSOAの主要な相違点のひとつは、サービスポートフォリオの定義のアプローチの違いにある。エンタープライズSOAでの典型的なポートフォリオは、企業の能力・機能をあらわすエンタープライズ・ビジネス・モデルに基づいている。エコシステムSOAの場合は、ビジネスモデルを、コア(戦略的)、コンピテンス、周辺の各領域にわけて考える。コアは常にサービスのセットとして設計され、その企業によって実装される。コンピテンスは、典型的にはその企業とパートナーによって分割して実装され、周辺領域はパートナーにアウトソースされる。
結果として、エコシステムSOAはサービスの分割を行うだけではなく、企業のコアな機能に集中し、その他の機能をパートナーと共にサポートするビジネスプロセスを構築することを可能にする。
Richard氏は、エコシステムSOAへの2つの主要なアプローチを定義している。
...エコシステムSOAへのひとつのアプローチは、企業からエコシステムに押し出す方式です。John Hagel氏は、これをInside-Outアーキテクチャと呼び、Outside-Inアーキテクチャと対比しています... Outside-Inアーキテクチャでは、エコシステム全体での知識と価値(の流れ)のモデルからスタートします。企業に対する戦略的な質問として次のようなものがあげられます。エコシステムに価値を提供し、エコロジーで利用可能なサービスを提供することを通じて、どのようにエコシステムに価値を提供する方法を探るか、また、どのようにエコシステムから価値を引き出す方法を探るかというものです。
孤立している企業など存在しない。よって、企業のパートナーから提供される機能やサービス、プロセスを考慮することなくエンタープライズ・サービスを定義することは困難だ。Richard氏のポストに述べられているエコシステムのアプローチは、全体像を考慮しながら特定のエンタープライズ・サービスを定義する際に役立つものだ。