SunはJavaFXのための2つのRADツールに取り組んでいる。ひとつはWeb開発者とWebコンテンツ作成者をターゲットとしたもので、もうひとつはもっとJava開発者向けのものだ。Java開発者向けのツールは暫定的に"JavaFX Composer"と呼ばれており、そのプレビュー版がNetBeans 6.8アップデートセンターからダウンロードできるようになった。
「これはまだベータ版と呼べるものではありません。私たちは「Early Access」またはプレビュー版と呼んでいます」Sunの開発者向けツールエンジニアリング担当ディレクターであるDavid Folk氏は電話会議でこのように語った。「このツールで実際にやろうとしているのは、JavaFXを使ってフォームベースのアプリケーション開発を可能にすることです」
この新しいJavaFXツールの基本的な考え方は、SwingのためのProject Matisseとよく似ている。Project Matisseは、Visual BasicやDelphiにあるようなビジュアルエディタを提供することで、Swingを使った開発を簡単にするものだ。NetBeans 5に同梱されてNetBeans GUIビルダーとなったMatisseと同様、JavaFX Composerもあなたがやるようにコードを生成してくれる。生成されたソースコードは閲覧することはできるが、つまらないくらい変更しなくてもよい。
パレットからJavaFXコンポーネントを選んでデザインエリアに追加することで、JavaFXコンポーネントをデータソースにバインドすることができる。現在のところ、プラグインとして、JDBC、HTTP (XML / JSON)、FileSystem、Fileといったデータソースと、ネストしたFilterをサポートしている。プラグインには単純なコンバータ機能があり、例えば、RESTやJSONデータソースをリストコンポーネントにバインドする、といったことが簡単にできる。
単純にドラッグ&ドロップするのに加えて、プラグインには「ステート」という概念がある。マスターステートという初期状態から始めて、ビジュアルコンポーネントやレイアウトを変更した新しい状態を追加することができる。アプリケーションを実行すると、ボタンクリックなどのイベントをトリガーとして状態遷移し、あなたが定義した通り自動的にUIに反映される。各遷移には簡単なアニメーションを対応付けることができるので、あなたはズームやフェード、ローテーションといったエフェクトを伴うUIを簡単に構築することができる。
このツールには他にも役立つ機能がたくさんある。プロファイル(デスクトップ、モバイル、HDTVなど、さまざまなデバイス、さまざまな解像度でアプリケーションをプレビューすることができる)、追加およびカスタマイズ可能な、Wizard(cancel, back, next, finish)やIndex(previous, next)ボタンといった共通GUIパターンをすばやく構築できる定義済みのテンプレートなども備えている。
Early Access版であることから想像できるように、このツールには制約がたくさんある。例えば、JavaFX 1.2に追加されたチャートなど、多くの重要なコンポーネントがまだビジュアルデザイナーでサポートされておらず、サポートされているコンポーネントでもまだビジュアル編集ができないプロパティがいくつかある。また、プレビューパネルは時々固まることがあり、そのときにはIDEを再起動しなければならない。こうした制約にもかかわらず、このツールをいじって午後を過ごすのは、JavaFXで何ができるのかを調べるのに面白い方法だ。
JavaFXにはこうしたツール必要だが、お客さんを得るためには、もっと注目度の高いアプリケーションも必要だ。JavaFXプラットフォームを早期採用しているところとして、Ubiventがある。彼らの仮想イベントのプラットフォームはすべて、JavaFXとWhiteStone Technologyをベースにしている。WhiteStone Technologyは彼らの統合サービスデスクとITサービス管理製品のWorkflowコンポーネントの中でJavaFXを使っている。しかし、JavaFXへの注目を集める上でおそらく最も重要なのは、2010年の冬季オリンピックだろう。オリンピック組織委員会はSunの主要な取引先であり、そのWebサイトには、JavaFXベースのメダルビジュアライザアプリケーションが登場している。