CloudCat(Apache Tomcatサーブレット・コンテナのクラウド・サービス・オファリング)が提供する仮想イメージにより、開発者およびQAチームはクラウド環境でのWebアプリケーションの構築およびテストが可能になる。MuleSoft(Mule ESB製品を提供する企業)は、先ごろCloudCat製品を発表した。CloudCatは、物理サーバ内でTomcatをホスティングする代わりに使用できる。さらにMuleSoftは、クラウド・インフラストラクチャのホスティング・プロバイダであるGoGridとパートナーシップを結び、Cloudcatをクラウド・サービスとして提供することも発表した。この提携は、開発者にクラウド・コンピューティングとオープンソース・ソフトウェアの利点の活用方法をもたらすことになる。
Cloudcatがリリースされるまで、Tomcatをクラウドで使用するには、Tomcat以外に必要なソフトウェアのインストールに加えて、Tomcatを手動でインストールし構成する必要があった。事前に構成されたApache TomcatのイメージをCloudcatで使用することで、開発者および運用チームは物理サーバの購入やハウジングに投資することなく、クラウド環境でWebアプリケーションのデプロイやテストを行うことができる。現在、CloudcatはAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2 AMI)およびGoGrid(GoGrid GSI)クラウド環境のクラウド・サービスとして利用可能である。これには、Linux(GoGridではRedhat、EC2ではUbuntu)で稼働するApache Tomcat 6サーバおよびMySQLが含まれている。
Cloudcatサーバの主な機能は以下のとおりである。
- Tomcatアプリケーションの開発とテストのためのプロビジョニング。
- MuleSoft Tcat ServerコンソールからのCloudcatのランタイム診断。
- 開発環境およびテスト環境の継続的な統合を目的としたApache Mavenとの統合。
- Tcat Server RESTの管理および制御用APIとの統合。
- Tomcatアプリケーションに対するオンデマンドでのランタイム性能とリモートからの再起動機能。
InfoQは、Mulesoftの製品管理ディレクタであるSateesh Narahari氏と、Cloudcatサーバの発表およびGoGridとの新たなパートナーシップについて話した。
InfoQ: CloudCat発表の背後にある主な動機を聞かせてください。
Mulesoftには、すべての推進力となる1つの重要な動機があります。それは、エンタープライズとクラウドの両方で、ミドルウェアをより使い易くすることです。今回は、われわれが得意とするWebアプリケーション・サーバであるApache Tomcatに注目しました。Tomcatは堅牢で、開発の場でも広く利用されていますが、優れた運用ツールや商用の技術サポートが十分ではないために、多くのIT管理者にとって、本番環境で扱うにはまだまだ難しい存在です。さまざまなパブリック・クラウドではTomcatに対して、欠点がなく最新かつサポートが行き届いているイメージを持っているようでしたが、実際には全くそうではありませんでした。CloudCatは、市場のそのようなギャップを埋めようとするわれわれの最初の試みです。Tomcatのノウハウを生かしたベスト・プラクティス、Amazon EC2およびGoGridのプロビジョニング・ツールにおける経験、およびTcat Server管理サービスに関する付加価値をわれわれが提供することによって、CloudCatがクラウドの試用に注目する企業の"スイートスポット"を捉えると確信しています。
InfoQ: CloudCatを使用して本番環境のWebアプリケーションをホスティングすることは可能ですか?それとも開発およびQA環境のクラウドでのアプリケーションのテストだけに限られるのでしょうか?
Cloudcatは、開発およびテスト環境に加えて本番環境でも使用できます。Cloudcatには、再起動やサーバ制御の信頼性を高め、IT運用担当者の使用にも適した実績ある初期スクリプトが組み込まれています。
InfoQ: CloudCatサーバ環境ではロード・バランシングもサポートされますか?また、CloudCatではフェイルオーバはどのように行われますか?
Cloudcatは、クラウド・プロバイダが既に提供しているロード・バランシング・ソリューションと連携する予定です。Cloudcat自体にはロード・バランシング機能は用意されていませんが、インフラストラクチャが提供する機能と連携します。たとえば、ユーザはEC2でElastic Load Balancingを使用できます。
InfoQ: 開発者およびQAチームのメンバは、新しいCloudCatサーバを使用してパフォーマンス・テストを実施できますか?
はい、実施可能です。Cloudcatのプロビジョニングをそれ以外のすべてのクラウド・インフラストラクチャのプロビジョニング・プロセスに統合しているため、Cloudcatの新規インスタンスをプロビジョニングする時間を短縮でき、Cloudcatインスタンスを使用してパフォーマンス・テストの実施や高負荷シナリオのシミュレーションを行いたいという開発/QAメンバのニーズを満たすことができます。Amazon EC2と連携する場合、Cloudcatインスタンスは、オプションのEC2プラグインを使用してTcat Serverコンソールから直接作成することも可能です。
InfoQ: CloudCat環境にアプリケーションをデプロイする開発者には、どのようなツールがサポートされますか?開発、ユニットテストおよび統合(コンテナ内)テスト、デバッグ、アプリケーション・プロファイリングなどの観点から教えてください。
Cloudcatは、追加料金なしでTcat Serverと使用することができます。Tcat Serverは、Tomcatのインスタンス上で実行されるWebアプリケーションの詳細な診断とデバッグ機能を提供します。これらの機能は、CloudcatインスタンスにもTcat Serverコンソールから使用できます。さらに、Tcat Serverが提供するデプロイ機能を使用すると、開発、テスト、ステージング、本番の各環境へのアプリケーションの移行が非常に簡単に行えます。
InfoQ: 新しいCloudCatサーバでは、どのような監視ツールが使用できますか?
Cloudcatのインスタンスは、デフォルトのクラウド監視ツール、またはTcat Serverコンソールからも監視できます。Cloudcatには、現時点でアラート機能は用意されていませんが、業界トップのクラウド対応の監視ツールを使用して、Cloudcatのサーバ・インスタンスを監視できます。
InfoQ: 新機能という点において、CloudCat Server製品の今後のロードマップを教えてください。
MuleSoftにとって、Cloudcatは今後も戦略的な投資であることは変わりません。われわれは、Amazon EC2やGoGrid以外にもクラウド・プロバイダの見解を広げていきたいと考えています。Cloudcatの今回のバージョンに関して、お客様から多くのフィードバックをいただいておりますが、これが製品のロードマップに影響を与えることになるでしょう。また、プライベート・クラウドでCloudcatをより簡単に使用する方法についても検討しています。今後はパートナーの皆さんと、この分野で大変興味深い発表ができると思っています。