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Microsoft,HTML 5 と H.264 の支持を表明

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原文(投稿日:2010/04/30)へのリンク

Microsoft の Internet Explorer 統括責任者である Dean Hachamovitch 氏が,IE9 の HTML5 ビデオ再生に H.264 標準のみを使用する,と発表した。Microsoft が今後 HTML 5 に大きく傾くことによって,Flash はさらに役割を失うものと考えられる。この発表は,Apple が iPhone と iPad に Flash を受け入れない 理由について,Steve Jobs 氏がその詳細を発表したのと同じ日に行われた。

Microsoft はついに,HTML5 に真剣に取り組み始めたようだ。Hachamovitch 氏はブログポストの最初の部分で, “Web の未来は HTML5 にある” と述べている。 “HTML5 は,リッチでインタラクティブな Web アプリケーションとサイトの設計を進める上で,重要な役割を担うことになるだろう。” Microsoft が HTML 5 に関して何をするつもりなのか,その実装に着手するのならばビデオ標準には何を採用するのか,というのは,多くの人々が疑問に思っていたことだ。確かに Microsoft は,すでに HTML 5 機能のいくつかの機能 – ヒストリ,インライン編集,Web データベースなど – の実装を開始している。しかしライバルのブラウザたちは,キャンバス,ドラッグ・アンド・ドロップ,メッセージ,ビデオ,オーディオ,ワーカといった数多くの機能を実装しているので,これをキャッチアップする必要に迫られていた。しかし Microsoft は,一旦決定したことを迅速に実行する点では広く知られた存在である。IE9 でこれらの機能の大部分が実現されるのは確実だろう。実際に IE チームは最近,GPU 上で HTML5 を実行する IE9 のデモを行っている。ハードウェアによるアクセラレーションを利用するという点で,これは他のブラウザよりも一歩先に進んだものだ。

Microsoft にはプロプライエタリなビデオ標準である H.264,別称 Advanced Video Coding (AVC)と,フリーの Ogg Theora コーデックのいずれかを選択する必要があった。ちなみに Firefox と Opera は後者を選択し,Chrome は両方とも実装している。そして Microsoft は IE9 で H.264 のみ使用することを発表したのだ。Hachamovitch 氏はさらに H.264 コーデックの使用ライセンスについて言及し,ライセンス料は Windows に含まれているので,アプリケーション開発者は,ハードウェアアクセラレーション機能を利用する場合であってもライセンス料を支払う必要はない,と述べている。

Hachamovitch 氏は,Adobe プレイヤーの問題解決のために,Adobe との共同作業を継続すると発表している。それでも彼らが Flash ではなく,HTML 5 ベースの Web に注力しようとしているのは確実だ。

Hachamovitch 氏の今回の発表と同じ日に,Apple の CEO である Steve Jobs 氏は,iPhone と iPad で Flash を許可しないことに関して詳細を発表した。Jobs 氏は理由をいくつか挙げているが,その中で Flash が古いバージョンの H.264 を実装していて,非常に多くのパワーを必要とする点に触れている。

モバイルデバイスのバッテリーの持続時間を長くするためには,ビデオ再生においては,ハードウェアでビデオをデコードしなければなりません。ソフトウェアによるデコードでは必要なパワーが大きすぎるのです。最新のモバイルデバイスには数多くのチップが使用されていますが,その中には H.264 と呼ばれるデコーダも含まれています。H.264 はすべてのブルーレイ DVD プレイヤで使用されていて,Apple や Google (YouTube), Vimeo, Netflix, その他の企業でも採用されている業界標準です。

Flash は最近になって H.264 サポートを追加しました。しかし現行の Flash Web サイトの大部分は前世代のデコーダを必要とします。これはモバイルチップには実装されていないので,ソフトウェアで実行する必要があります。この違いは非常に大きなものです。iPhone を例にすれば,バッテリを完全に消費するまでに H.264 ビデオであれば10時間以上再生可能ですが,ソフトウェアでデコードされるビデオでは5時間にも達しません。

HTML 5 に話を戻すと,主要なブラウザの中で現在も Ogg Theora を中心として扱っているのは Firefox と Oprea の2つだけだ。Ogg Theora は H.264 に比較して,ビデオ品質の面で劣ると言われているが,この2社は,プロプライエタリな標準で要求されているライセンス料に異議を訴えているのだ。H.264 をライセンスするのは MPEG LA である。MPEG LA はパテントプール管理会社であり,現在は MPEG-2,MPEG-4,ATSC,IEEE 1394 などの技術権利を管理している。Apple,Microsoft,Google は MPEG LA のライセンシーである。しかし同時に,Apple と Microsoft はライセンス提供者でもあるのだ。 このようなことが可能なのは,MPEG LA の説明では 次のような理由による

AVC 標準において重要性のある特許の所持を主張し,かつAVC 特許ポートフォリオへの参加許諾を希望するいかなる団体に対しても,その評価及び登録のための提出を推奨する。

H.264 ライセンス方針は5年毎に見直しが行われる。現在のものは,2010 年 12 月 31 日まで有効である。H.264 をベースとしたコーデックの作成に課されるロイヤリティは,オペレーティングシステムへの添付の有無,およびビデオ提供形式 (サブスクリプション形式か,タイトル単位での提供か,あるいはフリーTV番組のインターネット配信か) によって異なる (ロイヤリティ要約を参照 (PDF))。例えば,H.264 コーデックをオペレーティングシステムに添付するためには,2009-2010 年の1年間について 500万ドルの料金が必要である。ロイヤリティが増額される場合においても,以降5年間の増分額が 10% を越えることはない。

H.264 を使用するデバイスは “セットトップボックス,メディアプレイヤなどのパーソナルコンピュータ用ソフトウェア,携帯電話や可搬型テレビ受信機などのモバイルデバイス,ブルーレイディスク(Blu-ray DiscTM)プレイヤとレコーダ,ブルーレイビデオディスク,ゲーム機,パーソナルメディアプレイヤデバイス,静止画及び動画カメラ,サブスクリプション/ペイパービュー/タイトル単位などのビデオサービス,無償放送テレビサービス,その他の製品” など,多種多様である。

最近の開発動向から見て,Web の将来は HTML 5 に大きく関与したものになりそうだ。そのビデオコンポーネントが H.264 ベースになることは確実だろう。

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