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Chris Matts 氏,決断のタイミングについて語る - インタビュー パート2

| 作者: Dan Mezick フォローする 0 人のフォロワー , 翻訳者 吉田 英人 フォローする 0 人のフォロワー 投稿日 2010年5月24日. 推定読書時間: 7 分 |

原文(投稿日:2010/05/13)へのリンク

先週の InfoQ では,学習機械 (learning machine) として見たアジャイルコミュニティ について Chris Matts 氏と対談した。今週も引き続き Chris Matts 氏と,今回はリアルオプション (Real Option) と意思決定の戦略を中心的として話をする。

Chris,あなたはよく "理由を知らないのなら,決断を急いではならない" ということを言っていますね ... このことばについて説明してください。

リアルオプションでは,決断のタイミングをとても重要視します。目標を達成するための方法はたくさんあります。その異なった方法それぞれが選択肢,すなわち "リアルオプション" なのです。それぞれの選択肢には,それが選択肢として無効になる '期限日時' があります。現実の世界ではさらに '期限条件' というものもあります。

簡単な実例を挙げて頂けますか?

あなたが建築の請負業者で,4人の作業者を雇っているものとしましょう。あなたにはパーティの予定があって,それまでにプールを作りたいと思っています。その作業は1人で行うと4週間かかります。2人なら2週間,4人でやれば1週間で終わりますよね。この場合,1人で行う,という選択肢は,パーティの4週間前に期限切れになります。同じように2人で行う作業は2週間前が期限です。4人でやるなら,1週間前まで大丈夫です。

決定を1週間前まで遅らせれば,それまでにパーティがキャンセルされた時にプール作りを中止することができます。ところが今度は,作業者のひとりが病気になってパーティに間に合わなくなる,というリスクが発生してしまいます。プールを作るための3つの選択肢には,それぞれに決断の期限があって,それぞれのリスクがあるのです。

"理由を知らないのなら,決断を急いではならない" というのは,例えばこの3つの選択肢から ... どれかが適切である,という理由が見つかるまではどれも選択するな,という意味なのです。例えば4人の作業者が今週,この件以外に大した仕事を持っていなかったとしましょう。今作業を始めれば,予定していた仕事は予定どおり完了します。これは取りも直さず,後々彼らの手が必要になった時のために,予定を空けておくことができる,という意味になります。

このことで言えるのは,すぐに始める,あるいはできるだけ早く始める,というのを既定の判断にしてはいけない,ということです。必要なのはそうではなく,いつ始めるべきかを知ることなのです。感情的な決断を下して,後からもっとよい選択肢が見つかってもそれに固執する人たちの例は,いくらだって見つかります。

決定プロセスから不確実性を取り除くのに十分な情報があるなら,早めに決断するのもいいでしょう。例えばあなたが,パーティとは関係なくプールを作ろうと決心していて,しかも建築業者たちの予定について,2週間先まで空いているけれどその先は忙しくなる,ということが分かっているならば,プールは早めに作るべきです。

'リアルオプション' についてたくさん話を伺いました ... 選択を実行するためには,選択の余地があることを知っていなければならないのですね。ところで,リアルオプション ("選択の余地") に関するあなたのメッセージは,アジャイルコミュニティで共感を得られるでしょうか? もしそうならば,あるいはそうでないならば,それはなぜでしょう?

リアルオプション的な考え方をする人は増えています。でもアジャイルコミュニティにおいては,まだまだ少数派です。私はいつも,IT 以外の場においてこの考え方を適用できた時に,その人がリアルオプションを "会得した" と判断しています。ある友人は,自身の結婚式にリアルオプションを適用しました。また別の友人は,息子の学校を選択するのに使用したそうです。このような話を聞くのは,この上なくうれしいことですね。

リアルオプションが本当に理解されない理由は,いくつもあると思います。

  1. 小難しい金融数学の話だと考えて,名前を聞いただけでうんざりするため。実際には,数学的要素はまったく入っていません。
  2. リアルオプションのセッションで失望する人がたくさんいます。しゃれた数学や素質のようなものを期待していたのでしょう。結果的に,リアルオプションは彼らに受け入れられません。
  3. リアルオプションはとても捉えにくいのです。いくつかのプラクティスもありますが,中心となるのは,状況に応じて適用される一連の原則です。私自身はみなさんに,原則全般について考えて欲しいと思っているので,プラクティスの話題はなるべく避けるようにしています。
  4. リアルオプションにおいて何よりも大きいのは心理学です。ものごとを決める方法というのは,パーソナリティの中核をなすもののひとつであって,その人の振る舞いにも大きく影響します。数時間のプレゼンテーションやひとつの記事を読んだ程度で,意思決定の方法を変えようというのは,無理な話なのです。
  5. 人は確実さを望み,不確実性を嫌います。リアルオプションはそんな彼らの嫌いなものを抱かせようとしているのです。
  6. これが一番重要なのですが,実は私は,リアルオプションを説明するのがものすごく苦手なのです。リアルオプションについて他の人たちと十分な議論ができるようになるまで2年間,それに関する作業をしてきました。そんな状況ですので,私の考えを説明するのはとても難しいのです。言い換えるなら,彼らの理解が不十分なのは私のせいなのです。



リアルオプションとグループレベルの意思決定は,どのように結びつくでしょうか? ソフトウェア開発の意思決定での選択は,単なる資本 – ここでは '開発者の注意と努力' ということになるでしょうか – の配分の問題ではないですよね ??

リアルオプションは情報をたくさん必要とする決定プロセスです。そしてグループは,個人よりも多くの情報を持っています。ですから,目標が個人的利益の最大化ではなく,グループにとって最高の決定を行うことに置かれている限りでは,個人よりもグループの方がよい決断を下すことができるはずです。

私はリアルオプションを,ビジネスの投資決定プロセスで使用しています。しかし IT プロジェクトにも決断を要することはたくさんあります。アーキテクチャや開発ツールの選定,開発者の選択などです。秘訣はチームのすべてのメンバが,適切な情報をタイミングよく持ち込むようにすることです。情報を公開あるいは保留するタイミングについての話は,ゲーム理論の領域になりますね。


もしも地球上の18才以上のすべての人類が,意思決定ツールとしてのリアルオプションを完璧に理解できたら,世界はどうなると思いますか?よくなるでしょうか,あるいは悪く -- その理由は何でしょう?

選択とは,多様性でもあります。そして偏見は,早期決断の原則に反するものです。私たちは選択する権利を尊重し,人々の間にある違いを尊重します。それは結果として,偏見と戦争を終結させることになるでしょう。私は世界が最終的に,Neal Stephenson 氏の "ダイヤモンド・エイジ" のようなものになると思っているのです。

社会はすでに,その方向に動いているのではないでしょうか。


あなたは InfoQ の記事に対して頻繁にコメントしていますが,そこから得るものは何でしょう? 早くコメントする,と決めたことには (InfoQ では,すべての記事にいつでもコメントできますから),何かしら理由があると思います。それを教えて頂ますか。

アーティクルにコメントすることで得るものは2つあります。ひとつは,テーマに関する議論を通じて,より多くの情報が得られることです。もうひとつは,アーティクルとは人々が考えるような結論ではなく議論の対象なのだ,と読者に伝えられることです。アーティクルの中には,その内容があたかも "ベストプラクティス" で,広く認知されているかのような印象を与えるものがあります。しかし実際には,アーティクルはひとつの意見に過ぎません。コメントはそれ以外の意見を示すためのよい手段なのです。

InfoQ のアーティクルの大部分は,公表された当日か翌日に読まれていると思います。アーティクルはずっと存在していても,注目されるのは最初の数日がほとんどなのです。ですから,アーティクルに関して議論をするための最高のチャンスが欲しければ,できるだけ早く議論に参加することです。そうでなければ,あなたのコメントは読まれないでしょう。

あなたのことは多くの人が知っていますし,あなた自身もカンファレンスなどで,いつも多くの人たちと知りあっているようです。そしてあなたは折にふれて,書籍や会話などで人々に異議を唱えています。そこでひとつ興味があるのは,あなたがリーダーたちに対して異議を唱えることで,彼らに対して与える影響にどのような興味を持っているのか,ということです。このような行動を選択する理由は何でしょうか?

アジャイルコミュニティのリーダたちは,学びの上では制約なのです。制約としての彼らを取り除くことで,より速やかにアジャイルを学ぶことができます。そしてアジャイルの本当のリーダとは,問題解決に苦闘しつつ毎日仕事に取り組んでいる人たちのことなのだと,やがて皆が気が付くことでしょう。そのリーダを近くで支持する人たちもまた,新しいアイデアのためならば必要なリスクもいとわない,意欲旺盛な学習者なのです。
 

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