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Chris Matts氏、学習機械としてのアジャイルコミュニティを語る

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原文(投稿日:2010/05/06)へのリンク

Chris Matts氏はアジャイルコミュニティの中のとても興味深い人物であり、イギリスで活動している。

氏はアジャイルでのリアルオプション分析の提唱者だ。リアル・オプション分析は不確実な状況下で意思決定をするための定量的な方法だ。アジャイルの実践にこの方法を適用しようとする氏の考えはInfoQの記事で紹介されている。一番最初の記事はアジャイルの実践の基礎にあるリアルオプション、次の記事はリーン + リアルオプション = [複雑さの低減]と題されている。

また、氏はアジャイルコミュニティに属するすべての人と知り合いのようだ。

そして、なにより氏は本当に熱心にInfoQの記事を読み、刺激的でよく考えられたコメントを残してくれている。

氏のリアルオプションやアジャイルマニュフェストなどに対する考えは、ブログで読むことができる。

注: 氏はOlav Maassen氏とともにリアルオプションに関する包括的な情報を作成している。これらの成果はwww.decision-coach.comで見られる。

さてChris、あなたがアジャイルコミュニティに知っておいてもらいたいことひとつ教えてください。それも具体的かつ詳しく。

知っておいてほしいのはコミュニティとは学習機械であるということです。そしてこの機械は壊れています。壊れたまま直さないでそのままにしておけば、数年の内に粉々になって他の何かに取って代わられてしまいます。

私は最近ブログで、アジャイルマニフェストは武器を要求していると書きました。ソフトウエアについて学ぶコミュニティを構築するための武器です。しかしこれはアジャイルに対する最近の見方ではなく、マニュフェストに対する最近の反省を表しています。

世界規模のアジャイルコミュニティが"学習機械"として始まったのですか。

ええ、最初にソルトレイクシティで開催されたふたつのアジャイル開発会議に参加できたことはとても幸運でした。本当に素晴らしいことを学べたからです。多くのことを学びました。初めてリアルオプションについて議論したのもこの会議のオープンスペースでした。小さなグループで議論したのですが、その中にはSteve Freeman氏、Eric Evans氏、そしてRebecca Wirfs-Brock氏がいました。まだ半分くらいしか固まっていない自分の考えを優れた知性の持ち主と共に議論することは本当に素晴らしいことで、私もとても考えさせられました。

まるで子供たちが集まって野球カードを交換しているような感じです。実際にはカードではなくアイディアを交換しているのですが。参加者はみな自分の能力に自身がありますので、他人のアイディアを取り込んで試してみて、ブログやレポートを書くことでフィードバックしていました。

2005年のデンバーには行きましたか。

デンバーには行きませんでしたが、翌年のミネアポリスには行きました。そしてとても幻滅しました。Bil Kleb氏がオープンスペースで"認識、学習、そして科学的方法"と題して議論をしていました。私はここでお気に入りのふたつのモデル、コルブの学習モデルと意識的有能モデルを発表しました。そしてアジャイルコミュニティにこのモデルを適用してみました。するとHelen Sharp氏が"そうか、アジャイルは学習機械なのか。"というようなことを言いました。しかし、ミネアポリスで見たいくつかの光景は私にとって心配なものでした。

それはどんな光景ですか。

2004年のソルトレイクシティから変化が起きていました。APLNが支離滅裂な宣言(Tom Lister氏がAPLNサミットで皮肉ったのは有名です)を作成したからです。それは"聞く"という言葉が抜け落ちたリーダシップに関するマニュフェストだったのです。これによってアジャイルコミュニティは商業的に成功するようになりました...

..そして?

...そしてソルトレイクシティでわき起こった素晴らしい議論の数々が生まれなくなったのです。

商業的な側面というのはコミュニティの"古参者"がビジネスを生み出すことに一生懸命に注力しているという意味です。商売が忙しく対話が成り立たなくなったのです。バーで議論が成り立ちましたが、カンファレンスのオープンスペースは死につつありました。コミュニティの人々はさまざまな分野で"ソート・リーダーシップ"を主張し始めましたが、残念なことにあまり聞き入れられていません。だって、他人の話を聞かない人がどうやってリーダーになるのでしょうか。

どのようなインパクトがあったのでしょうか。

経験豊富な実践者がカンファレンスから遠ざかり始めました。現状では、商業的な理由で参加しなければならない場合を除いて、彼らはちょっと様子を見に来たりこなかったりという感じで、勉強をしにきた人も一度か二度参加するとその後は参加しなくなっています。経験豊富な実践者が足を運ばなくなっているのです。"面白いことがなにもおきない"という理由でわざわざ参加することをやめた多くの人を私は知っています。新しいアイディアを試す自信のある人は参加しなくなったのです。

つまり、学ぶことがゆっくりになったのです。そして、今後は学習が止まってしまうでしょう。それとも新しいところへ落ち着くのかもしれません。というのは、私は自分のAgile200xカンファレンスに参加する理由が友人と会うためだということがわかりました。トレーニングのためというより休暇を過ごすためという感じです。このことに気付いたので、Agile2010に出席する予定だった一週間を家族や友人とどこかのビーチで過ごすことにしました。

あなただけでなく、すべての人にとってアジャイルアライアンスカンファレンスがあまり重要ではなくなったということですか。

Agile200xカンファレンスで新しい人と出会うこととても楽しいことです。しかしアジャイルアライアンスにはこれからやらなければならない単純な作業がひとつあると思います。それはアジャイルコミュニティの商業的な側面だけではなく、ソフトウエアについての学習機械としてのコミュウニティを継続的に支援するようなカンファレンスを構築することです。"Agile"という言葉に"O"はありません。"A"はあります。"OR"ではなく"AND"の発想でカンファレンスを開催するべきです。それにはアジャイルの原則を適用することが役に立つかもしれません。


"学習機械"についてなぜあなたはこんなに一生懸命なのですか。

ソフトウエア開発は21世紀のもっとも重要な産業のひとつです。しかし今まで、この産業は私たちを袋小路から袋小路へと追いつめるアカデミックな知識人の理論や意見に苦しめられてきました。

アジャイル学習機械は実際に役に立つ実践的な活動を促進するための選択肢として始まりました。残念なことにをこれまで私たちが見てきたのは、"ソートリーダー"と呼ばれる人が自分がまだ最先端にいることを示すために新しいアイディアを思いつく度に、理論や検証されていないアイディアが主流になることでした。

私はソフトウエア開発で生計を立てています。より生活しやすくするためにアジャイルのツールを使っています。これらのツールは私の生活をとても便利にしてくれます。これからも多くのアイディアに触れてみたいと思っています。アジャイルは目的地ではありません。目的地に向かうための旅路なのです。"アジャイルは変化を生み出すための個人的なコミットメントであり、変化を生み出すための組織的なコミットメントだ。"とAgile2008で誰かが言っていました(私もこの発言に帰依したいと思います)。

あなたが作ったリアルオプションについての漫画について聞かせてください。

The Agile 2009でのリアルオプションはプロジェクトマネジメントの本でもなければビジネス分析の本ではありません。グループ学習機械、つまり私が言うところの"分散認識システム"を構築するためのマニュアルです。


もしこの世界でひとつ何かが実現できるとしたら、どんなことを実現しますか。それはなぜですか。

私たちは素晴らしい時代の前夜にいるということを世界中に知らしめたいです。地球上のすべての人々が食料と情報にアクセスできる時代がやってきます。資本が制約にならない世界、むしろ私たちの想像力が限界を確定する世界がやってきます。

そしてそれは、すべての人が本当の選択肢を持っている世界です。

Chris Matts氏へのインタビューのパート2に乞うご期待。パート2では"早期のコミットメント"、選択肢、グループレベル意思決定、なぜ氏がInfoQの記事へたくさんコメントするのかなどについて話を聞いた。

 

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