アジャイル開発実践会議が今月の6日から11日までラスベガスで開催された。Caesar's Palace Conference Centerで開催されたこの会議は優れたセッションやスピーカーやコンテンツが紹介された。テストについてのいくつかの優れたセッション、 Johanna Rothman氏による人や文化についてのキーノート、スクラムやカンバンについての優れたプレゼンテーションがこの優れた会議を生み出した。ラスベガスで開催されたことに害はなかった。
MicrosoftのAbby Fitchner氏と("Hacker Chick Blog")友人のNate Oster氏が10日の水曜日に行ったのは並列テストについてのセッションであり、このセッションは聴衆に興味を与えた。テストは短期的にはある種の苦痛を伴う施策だが、その報いとして素晴らしい投資効果が見込める。この素晴らしい投資効果を得るには長期的な展望を持っていることが重要だ。
Abby Fitchner氏その他は並列テストの技術を披露してみせた。この技術は開発イテレーションを通じてプログラマとテスト担当者が対立せずに互いに協力しながら作業することで急激に品質を向上させる方法だ。このセッションではゲーム形式で、まったく機能しないシステムがどのようにして開発者やテスト担当者の最大限の努力に抵抗するのか、そしてアジャイルの技法がチームを低品質とデリバリー遅延のサイクルからどのようにして救うのかについてデモを見せた。
RALLYのJean Tabaka氏は11日の火曜日に"スクラム対カンバンの戦い"と題したセッションを行った。このセッションの内容は興味深かったが、それよりもセッションの形式自体が面白かった。セッションの出席者がツイッターでつぶやくと、そのつぶやきがリアルタイムで表示され、部分的にセッションに参加できるようになっていた。この金魚鉢セッション(4つの椅子が前にあって人々が入れ替わりながら椅子に座って話をするパネル形式のセッション)ではスクラムとカンバンについての簡潔な議論が展開された。始めはスクラムについて、次にカンバンについて、そして最後に"スクラムとカンバンの対比"がそれぞれ議論された。
Jean Tabaka氏によれば、
...[カンバンとスクラムの]原則と実践が完全に違っているというわけではありません。...例えば両方ともプロジェクトの可視性を向上させますし、伝統的な開発と比べてより小さな開発を繰り返すことで開発を行います。なおかつ、両方ともその実践や基準をチームや組織に案内するような影響を与える原則を強調しています。
この形式と内容のセッションはとても面白いということがわかった。Ellen Gottesdiener氏を含むアジャイルの世界の著名人が多く、この活発なセッションに参加するため部屋に集まった。
EBG ConsultingのEllen Gottesdiener氏とMary Gorman氏は11日の火曜日に"プロダクトバックログの依存性を極める"と題したプレゼンを行った。これはチームが取り組んできる重要なトピックについての優れたセッションだった。プロダクトバックログをどのようにして解きほぐすか、どのようにして依存性を最小かするか、そしてどのようにしてこのような作業をひとつ以上のチームで実施できるようするかについての優れたセッションだ。両氏は事前と事後の状態を通してストーリーの依存性を特定する方法や、インタラクションのマトリックスを用いてデータの依存関係を検知する方法、デリバリーと開発のシナリオをMinimal Marketable Features(MMF)を使って依存性のグラフを可視化する方法を示した。
最近のアジャイル界隈で面白いトレンドと言えば、文化的文脈がすべてだ、という認識だ。つまり、アジャイルチームを承認することに文化的な反抗がある場合は、最良の意思を持ってしてもアジャイルを根付かせることができないということだ。Rothman ConsultingのJohanna Rothman氏は10日火曜日のキーノートで"それは人々、いつも人々"と題した発表を行った。氏は"組織の中で何が議論できて何ができないのか"ということを観察すること、また、その組織ではどんなことに見返りがあり、どのようにして人々が互いに関わりあっているのかを観察することを推奨している。チームについてのInfoQの記事やチームの構成に関するInfoQの別の記事が証明するように、"人的要因"について認識することは2010年のテーマになる。氏のキーノートはこのテーマを強調するものだ。
最後に大事なことを付け加えると、Pillar TechnologyのMike Cottmeyer氏は9日の水曜日に"アジャイルを拡大して企業の間に適用する"と題した発表を行った。内容はアジャイルの発想を企業を跨いでうまく広めていく方法についての、氏の現在のアイディアだ。スクラムは企業にとっては"受け入れるのが困難な提案"であり、企業にアジャイルを広めるため別の方法、もっと抵抗が少なく牽引力のある方法が存在すると考えるのが氏の立場だ。
ほとんどパンデミックレベルに広まった"Scrum-but"は氏の考えを裏付けているのかもしれない。氏は数年に渡って企業におけるアジャイルについてコツコツと取り組んできた。現在の氏の一押しの考えではコミットメントが少なく抵抗もすくないが、企業レベルの本物のアジャイルを広め、良い影響を与える方法はカンバン(スクラムではなく)だ、というものだ。この考えが正しいかどうかは時の経過が教えてくれるだろう。
今年のアジャイル開発実践会議は優れたコンテンツを提供した。アジャイルコミュニティは今も成熟中で、2010年は転換の年になりそうだ。アジャイル開発実践会議は興味深くまた現在現れつつあるアジャイルのテーマのための議論の場を提供したと言えるだろう。