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アジャイルのプロジェクト憲章には何を書くべきか?

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原文(投稿日:2010/05/30)へのリンク

 “十分な” プロジェクト憲章 (project charter) とは,どのようなものだろうか? アジャイルプロジェクトが資料によるコミュニケーションよりも,人々の行為や会話を重視するのとは対称的に,公式化された方法論の多くは資金調達と作業承認を受ける手段として,大量のプロジェクト初期資料の作成を要求している。
この潜在的な矛盾を前提とするアジャイルのプロジェクト憲章には,何を記述すればよいのだろう – 重要な問いに答えるために “不足のない” 資料とはどの程度の量なのか,その情報をどのように表現すればよいのか?

これらの問題に対して,数多くのコメンテータが回答を試みている。
Michael Lant 氏は “プロジェクトを台無しにしないために (How to make your project not suck)” と題されたブログポストで,成功に関する明確な定義を持たないまま開始されるプロジェクトが非常に多い,と書いている。”どんな産業も,大小どれほどの規模の組織も,官庁や非営利団体も,起業直後の会社も巨大な多国籍企業も,この失敗に対しては免疫を持っていないように思われます。すべてのプロジェクトがそうであるとは言いませんが,ほとんどがそうなのです。“
ここでの明確な定義とは,よく検討されたプロジェクト憲章のことである –

これについては,大規模なプロジェクトほどうまくいっているようです – おそらくは,プロジェクト管理に比較的多くのリソースを割り当てられるからでしょう。しかし規模の小さいプロジェクトでは,プロジェクト憲章は見落とされるか,あるいは作成してもほとんど (あるいはまったく) 参照されない傾向があります。様々な理由から,特に小規模プロジェクトでは近道を選択することが多く,プロジェクト憲章がその最初の省略対象になることがよくあるのです。

そして氏は,プロジェクト憲章の作成に関していくつかのアドバイスをする。

法律に関するあれこれや,憲章に付きものの雑多な情報は,別に分けてしまいましょう。これらもプロジェクトの成功にとっては重要ですが,普通は誰も読みませんから,別資料にしておきます。そうしておいて,プロジェクトにとっての成功が何であるかを明確かつ簡潔に定義した,1ページだけのプロジェクト憲章を作るのです。
プロジェクト憲章はプロジェクトの中で最も重要な資料ですから,作成にはすべての利害関係者の参加が不可欠です。要望間のバランスを取り,依頼者と受託者の利害関係を調整した上で,成功状態を定義し,関係者の同意を獲得します。たとえ1ページの憲章であっても,実効性のある資料を作成することは難しい作業です。作成には最低2時間は必要です。たとえ小さなプロジェクトでも,場合によっては1日仕事になります。しかもその内容は,利害関係者の間で合意に達したものでなければなりません。それでも後々,プロジェクトの立て直しで,終わりのない日々を改訂に費やすことを考えれば,ここで時間をかける価値は十分にあります。

プロジェクト憲章が有用であるためには,3つの重要な要素がある。
1. ビジョン (Vision/構想): プロジェクトの “なぜ”,すなわち高いレベルでのプロジェクトの存在目的ないし存在理由を定義する。
2. ミッション (Mission/目標): プロジェクトの "何を",目的達成のためプロジェクトとして実施する行動内容を記述する。
3. 成功領域 (Success Criteria): ソリューション自体の外部への影響を記述した管理テストである。

さらに氏は憲章のサンプルと,それを用いてプロジェクトの方向性を決定し維持するためのアドバイスを提供している。

また Martin Proulx 氏は Analytical Mind ブログで,アジャイルプロジェクト憲章の実例を示している。

 
プロジェクト憲章に関してよく利用されるツールとしてはもうひとつ,サクセススライダ(Success Slider)がある。このツールに関して Debbie Schatz 氏が雑誌 Mortgage Banking に記事を寄せている。現在は CCPace Web サイト で読むことができる。


スライダはプロジェクトの様々な “寸法(dimension)” の相対的重要度を示すように設定されて,潜在的に矛盾する決定を行う必要が生じた場合の判断指標として用いられるものだ。Rob Thomsett 氏が 著書 Radical Project Management で,このツールについて詳細に説明している。

Ryan Martens 氏は,1ページの A3レポート の利用価値について論じている。A3 レポート (用紙のサイズから命名された。およそフールスキャップ紙2ページを並べた大きさ)は Toyota で用いられている技法で,問題の要点を抽出して1枚の紙に収められるようにするものだ。氏は John Shook 氏の MIT Sloan Management Review の記事を引用している。

1. “特定の問題に関するビジネス上のコンテキストと重要性を確立する
2. 問題の現状を説明する
3. 望まれる結果を明確にする
4. 状況を分析し,因果関係を確定する
5. 対策を立案する
6. 対策を実施するためのアクションプランを策定する
7. フォローアッププロセスを計画する”

Allan Kelly 氏が A3 レポート のテンプレートを提供している。

Shook 氏が紹介する A3 レポートには,プロジェクト憲章のすべての要素が含まれているわけではない。しかしそのテクニックは,解決すべき問題と提供すべき解決策の明確な定義にチーム全体が集中するための,シンプルなツールを提供するものだ。


あなたの環境での優れたアジャイルプロジェクト憲章はどのようなものだろう,その例を InfoQ コミュニティで共有することができるだろうか?

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