Apple は,次世代 WWW に関する同社のビジョンを示す HTML 5 ショーケース を立ち上げた。ただしこのページへのアクセスには Safari ブラウザを使わなければならない。Web 標準を提唱していながら他のプラットフォームをサポートしない Apple に対して,批判的な意見が多数上がっている。
この ショーケース は,ビデオ,タイポグラフィ,トランジション,オーディオなどに関連するいくつかの HTML 5 の機能と仕様のデモンストレーションを行うものだ。さらに先頭ページには,同社の表明文が掲載されている。
標準とは Web のアドオンではありません。Web そのものです。今日からそれを使用できるのです。
提供されるサンプルの動作するのが Safari ブラウザのみであること,CSS 3D トランスフォームのデモに至っては Mac OS X Snow Leopard が必要 (PC版Safari や通常の Leopard では動作しない)であること,などの事実を考えれば,最後の文には不足がある。
この件に関して,コミュニティの著名人たちは否定的な反応を示している。
Tim Bray 氏: Safari 以外(Firefox,Chrome) で apple.com/html5 へ行ってデモをクリックしたら,http://tbray.org/tmp/sh5.jpg が表示されました。えっ?
Dion Almaer 氏: "私たちは標準に準拠しています。ただし,私たちのアプリケーションだけを使うなら。" errrr http://www.apple.com/html5/
Aza Raskin 氏: HTML 5 ショーケース で Safari 以外のブラウザをブロックするような Apple が,"Web 標準はオープンで信頼できる" なんて。http://bit.ly/9LH0Uh
ブラウザ依存のギャラリーを提供した Apple の決定に対して,WebMonkey は異論を唱えている。
アクセスしたユーザが HTML 5 を扱えるかどうか,ユーザエージェントが判別する方法が,まったくもって間違っています。それだけでなく,HTML 5 は Apple だけがサポートするのだ,と言っているようなものです。 Microsoft が先日,Internet Explorer 9 の近日リリースを喧伝するために 自身の HTML5 ショーケース を発表しましたが,そのデモページは HTML 5 を正しくサポートさえしていれば,IE 以外のブラウザでも見ることができます (そして動作します)。 Firefox の実験的ビルドを対象にした Mozilla の HTML5 デモページ でさえ,少なくとも他のブラウザをブロックするようなことはしていませんし,デモの大半は Chrome でも動作するのです。
Haavard 氏も Opera ブログでこの件を取り上げ,この “標準” デモが,実際には CSS3 のベンダ依存プレフィックス を使っている 点を指摘している。
Apple は HTML5 とオープン Web を推進すると主張しながら,そのページで他ブラウザをブロックするためのブラウザ識別コードや,独自の CSS3 関連のベンダプレフィックス (コードでは -webkit-border-radious を使っているので,他のブラウザが border-radious をサポートしていても動作しません),さらには特許で縛られた H.264 ビデオを使用しています。ページの内容で実際に HTML5 に関連しているのは,HTML5 <audio> と <video> タグだけです。
その一方で,同じような機能を実行する Safari Demo のいくつかは,Google Chrome ブラウザでも動作するようだ。このことから Joe Wilcox 氏など一部の人たちは,今回のデモは Apple が Safari を売り込むための営業的な宣伝工作に過ぎない,と考えている。
エラーメッセージを見れば,これが宣伝工作であることが分かります。Apple が,使われているブラウザを検出してデモをブロックするようにしたのは,Safari のダウンロードをユーザに勧めるため -- そして,他のブラウザが Safari より劣る,と感じさせるためなのでしょう。Safari の技術デモページを直接参照すれば,Chrome でも正常に動作するのがその証拠です。