Vision Mobileは「Mobile Developer Economics 2010 and Beyond」というレポートを発行した。このレポートには、最も重要な8つのプラットフォームで仕事をしている400人を超えるデベロッパの調査結果が含まれている。調査では、デベロッパがどのプラットフォームを好んでいるか、各プラットフォームにどれくらいのインストールベースとアプリ数があるのか、プラットフォームの学習とデバッグに要する時間などを明らかにしている。
調査の目的は、主要な8つのモバイルプラットフォーム(Android, iOS (iPhone), BlackBerry, Symbian, Windows Phone, Flash/Flash Lite, Java ME, モバイルWeb (WAP/XHTML/CSS/JavaScript))に関するデベロッパの意識を知ることと、4つのプラットフォーム(iOS/iPhone, Symbian, Android, Java ME)向けにアプリケーションを書いているデベロッパの体験を評価することにあった。
以下に調査結果のまとめを紹介する。
ターゲットとするプラットフォーム。 ほとんどのアプリデベロッパ(75%)は、プラットフォームの将来性、API、開発環境などでなく、市場普及率によりプラットフォームを選んでいる。
複数のプラットフォーム。 ほとんどのモバイルデベロッパは複数のプラットフォーム向けにアプリを書いている。デベロッパ当たり平均2.8プラットフォームだ。回答者のうち20%が同じアプリをiPhoneとAndroidの両方をターゲットにして開発している。
マインドシェアの移り変わり。 Symbian, Windows, Java MEといったプラットフォームからはかなり離れている。Symbianデベロッパの20-25%はアプリをApple App StoreやAndroid Marketでも販売している。Windows Phone MVPの50%がiPhoneを所有しており、今後、Windows Phoneに投資するのを渋っている。Java MEデベロッパの大多数がもはや「一度書けばどこでも動く(“write once run everywhere”)」を信じていない。
マインドシェア。 Androidが最高のマインドシェアである。デベロッパの60%が現在Android向けにアプリを書いており、その後に、iPhone、Java ME、Symbianが続く。
インストールベースとアプリ数。 モバイルプラットフォームのインストールベースとそのアプリ数にはかなり違いがある。Java MEは最大のインストールベース(30億台)をもつが、それに比べてアプリ数は少ない(4万5千個)。一方、iPhoneは約6千万台のインストールベースしかないが、22万5千個ものアプリがある。
アプリストアの利用。 iPhoneとAndroidではアプリストアが大いに活用されているが、Java MEとWindows Phoneにおけるアプリストア経由のアプリ販売はそれぞれ5%、10%にすぎない。
認証審査。 認証審査コストはストア経由のアプリ販売における大きな不満になっている。
収益。 期待以上の収益を得ていると報告したのはデベロッパの5%しかいない。iPhoneデベロッパの60%は目標とする収益に達していない。
収益モデル。 主な収益モデルはアプリストアによるダウンロード販売(pay-per-download)である。広告は収益から見ると大きく遅れをとっている。サブスクリプションモデルが機能するのは、携帯オペレータやコンテンツアグリゲータポータル経由でアプリが販売されるときである。
オペレータ。 デベロッパの80%がオペレータは単なるデータプロバイダであるべきだと考えており、大多数が特定のオペレータをサポートすることに関心がない。デベロッパの70%はオペレータからのデベロッパサポートがないと考えている。
学習曲線。 プラットフォームによって学習曲線には違いがある。Androidが最短で6か月、Symbianが最長で16か月である。
デバッグ。 デバッグはAndroidが最速で、Symbianはその2倍以上の時間を要する。
サポート。 モバイルデベロッパの80%以上がコミュニティや非公式フォーラムのWebサポートを頼りにしている。
オープンソース。 調査結果によると、
平均して、仕事でオープンソースを使っている回答者の86%が、Eclipseのような開発ツールで使っています。例外はiPhoneおよびWindows Phoneデベロッパで、彼らはオープンソースの開発ツールをあまり使っていません。もうひとつオープンソースがよく利用されるのは、製品への搭載です(回答者のほぼ40%)。ただし、BlackBerryデベロッパはオープンソースを製品に搭載することにはあまり積極的ではないことを指摘していた方がよいでしょう。これは商用懐疑論を示しています。RIMはWebKitを手始めに、自身のデバイスにオープンソースを徐々に採用しながら、これを克服していく必要があるでしょう。
全体として、オープンソースにおけるデベロッパの関与の度合いは、そのバックグラウンドにかなり関連があります。AndroidとiPhoneのデベロッパはSymbianデベロッパと比べて3倍、オープンソースコミュニティをリードしているようです。ここから、2つのデベロッパコミュニティの由来が対照的であることがわかります。iPhoneとAndroidのデベロッパは、オープンソースが10年以上も存在してきたインターネットの世界からやってきました。それに対して、Symbianデベロッパは、オープンソースがまだ比較的新しいモバイルの世界からやってきたのです。
Vision Mobileのレポートには、使われた調査手法、モバイルプラットフォーム毎のデベロッパ分布、ベンチマーク手法とともに、モバイルプラットフォーム間の移動、商品化に要する時間、利用したマーケットチャンネル、プラットフォームを選択した技術的理由、モバイル開発、IDEなどの難しさなどの調査結果について、詳細な情報が含まれている。