IronPython 2.7 がリリースされた。Visual Studio への組み込み改良,LINQ および拡張メソッドとの相互運用性の向上,ドキュメントの充実などに加え,Python 2.7 相当の機能がすべて実装されている。
リリースノートによれば,次のような改良点がある。
今回のリリースでは組み込み _io モジュールが新たに実装され,ディクショナリとセットの包含表記,with 文における複数のコンテキストマネージャのサポート,itertools メソッドへの新機能追加,自動インデックス機能を備えた新しい文字列フォーマット処理,などが追加されました。順序付きディクショナリや新しい arqparse モジュールなど,標準ライブラリにも多くの更新が実施されています。
バグフィックスもある。
このリリースでは cPickle の大幅なパフォーマンス向上,sum 組み込み関数などの他,.NET 例外機構を使用しない高速な例外サポートが追加されています。IronPython AST (Abstruct Syntax Tree / 抽象構文木) にも改良が加えられて,メモリ使用量が大きく削減されました。このような数々の改良の結果のひとつとして,IronPython 2.6.1 に比較して起動時間がおよそ 10% 短縮されています。
今回のリリースでは,IronPython インストーラに "Visual Studio 用 IronPython ツール" をインストールするオプションも用意されている。このツールは VS 2010 上で動作して,XAML と WPF および Python クラスへの動的バインディングをサポートする。
今回のリリースは,コミュニティのみによる初めてのリリースであり,IronPython にとって大きなマイルストンである – Microsoft からの出資がなくても,この言語を引き続き改善したいと望む,活発なコミュニティが存在することを証明したのだ。Visual Studio との緊密な統合が Microsoft ユーザにはごく当然の要求機能であり,さらに IronPython MVP で同プロジェクトのコーディネータの一員でもある Jeff Hardy 氏がかつて,IronPython に Visual Studio サポートを追加することの困難さ を語っていたことを考えると,今回のリリースはさらに感慨深いものになる。
しかし IronPython を既定の組み込みツールとすることに関しては,Microsoft の発表した Python tools for Visual Studio プロジェクトとの間に,すでにある種の混乱が生じている。同プロジェクトは現在,ベータ版の段階にある。
IronPython は .Net フレームワークと Mono を対象とする,Python プログラミング言語の実装である。Microsoft によってプロジェクトが開始され,2006 年に最初のバージョンを公開した。2007 年には,動的言語間の互換性を実現する Dynamic Language Runtime が発表 されている。その後3年近い開発期間を経て Microsoft は先日,今後の IronPython 開発をコミュニティに移管した。