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クラウドリーダたちによるクラウドコンピューティングの現状分析と将来予測

| 作者: Abel Avram フォローする 11 人のフォロワー , 翻訳者 吉田 英人 フォローする 0 人のフォロワー 投稿日 2011年7月1日. 推定読書時間: 8 分 |

原文(投稿日:2011/06/23)へのリンク

Amazon の Werner Vogels と Microsoft の Satya Nadella 両氏がクラウドコンピューティングの現状について,そして Cisco のLew Tucker 氏と HP の Jon Weinman 氏はその将来の予測に関して,GigaOM Structure Event で講演を行った。

Amazon の CTO である Werner Vogels 氏の State of the AWS Cloud (AWS クラウドの現状) と題された講演では,AWS に関する昨年中の出来事について,リリースされた機能を並べ上げるのではなく,一般ユーザがもっとも興味を持ちそうな重要な開発が説明された。

氏によると,AWS の新機能の大部分はユーザから提案されたものだという。それらはイベントなどの発表機会を待たずに,実装が完了すると直ちにリリースされている。

さらに AWS について,Amazon の提供するサービスのみを指すのではなく,大量のデータをそこに構築しているパートナー企業が提供するサービスを含んだエコシステム全体である,と付け加えた。新たなシナリオでそれらのサービスを組み合わせれば,新しいアプリケーションを生み出すことができるのだ。

東京とシンガポールが加わったことで,AWS には現在5つのリージョンがある。昨年には 500 億という急激なオブジェクト増加があったため,保存されるオブジェクトの総数は 3590 億に達している。"それでもまだホッケースティックの曲がり角にも達していないのです"。今後予想される AWS の成長について,Vogels 氏はこのように語る。同社が現在 AWS に日々追加しているコンピューティング能力は,Amazon.com の web サイトが 2000 年時点で必要としていた全体量と同規模だ。

クラウドコンピューティングの主要なメリットのひとつは,それが新しいシナリオを用いた,あらゆる種類のアプリケーションに開発のチャンスを与えてくれることだ。Vogels 氏は AWS を活用した企業の例をいくつか紹介した。Netflix は,Chaos Monkey を使って高可用性ソフトウェアコンポーネントを開発している。social.com は AWS の複数のアベイラビリティゾーンと DB フェイルオーバ,ロードバランサを使用して,信頼性の高い web サイトを構築した。さらに Oracle と SAP は,ユーザが自社製品を Amazon のクラウド上でスムーズに実行可能なように,AWS 用ソフトウェアの検証を行っている。

さらに Vogels 氏は,ユーザが EC2 インスタンスに入札可能な Spot Pricing (スポット価格) という機能を紹介した。アーキテクトがコンピュータリソースの使用料を考慮するようになり,デザインにそれを反映させるようになると,この機能がソフトウェアの構築方法にも影響を与えることになる。Spot を利用可能なアーキテクチャ形式として氏は,マップリデュース,データグリッドソフトウェア,キュー,チェックポイントリストアソフトウェアの4つをあげた。これらはすべて,EC2 リソースの価格の上昇した時には処理を停止し,価格が元に戻れば再起動する,という運用に対応可能なものだ。この機能の主要なユーザは,金融あるいはビデオ処理に関連する企業である。彼らはコンピュータ処理コストを低減するため,"華麗なる入札テクニック" を駆使するのだ。また,この Spot Pricing に合わせた Elastic Map-Reduce (EMR) の提供開始も発表されている。

Microsoft and the Cloud: What's Next? (Microsoft とクラウドの今後) では,Forbes サンフランシスコ支局長の Eric Savitz 氏が,Microsoft のサーバおよびツールビジネスの責任者である Satya Nadella 氏にインタビューを行った。クラウドの一般概要から始まったインタビューで氏は,私たちがこれまでのクライアント – サーバプログラミングモデルから,接続されたデバイスと継続的サービスの世界への大きな変化の中にいるということを指摘している。250,000 台,1,000,000 コアものデータセンタを維持するためには,OS の存在性から再定義しなければならないのだ。

Nadella 氏は,クラウドへの移行を考えるユーザのおもな関心事は信頼性,セキュリティ,可用性であり,パブリッククラウドのセキュリティはプライベートデータセンタに対する場合ほどの問題ではない,という事実を強調している。"ハードシェル(hard shell,外の殻)" は違ってもよい,問題はその "ソフトコア(soft core,柔らかな中身)" だ。内部への侵入を一度許してしまえば,パブリッククラウドであろうとプライベートインフラであろうと,セキュリティ上の問題は同じなのだ。 "大企業が導入しているようなコンプライアンスにすべて帰結するのです。" さらには,"複雑な暗号化技術の導入によって","暗号キーの管理が危機回避の上で重要な問題になっています。",と指摘する氏の結論は,"この業界においてセキュリティはいまだ大きな問題ですが,それはクラウドに限ったことではなく,ネットワークすべてに共通することなのです。"

また具体的な数は示さなかったが,多くの企業が Web サイトを Windows Azure に移行する一方で,認証やデータ参照に自社のプライベートサーバを参照したり,アプリケーションをスクラッチから構築している企業も存在する,とも語った。

Windows Azure の状況に関する話題の中で Nadella 氏は,SaaS ソリューションの適用が増えていると述べた。中でも Office 365 については,"これまで私たちの製品を使ってきた fortune 2,000 企業の 50% が,現在はオンライン版を使用しています" とした上で,他にも仮想化に関心を持ち,コストメリットを考えてクラウド内にインスタンスを生成しているユーザがあること,何万人ものユーザが Azure を採用していること,その中には開発とテストに使用しているユーザ以外に,Microsoft のクラウドソリューションと Azure アプライアンスを使用してプライベートクラウドを構築しているユーザもあること,などにも言及した。

氏はクラウドコンピューティングが Microsoft にとって脅威である,という考え方を否定して,新しい革新的なソリューションを適用し習得することで主導的地位に立たなければならない時,歴史上に数多く現れる変曲点のひとつである,と付け加えている。クラウドコンピューティングはコスト削減を目的としたものであって,それは Microsoft のビジネスにも影響するが,より多くのコンピューティングリソースを使用する今日のトレンドがクラウドモデルを後押しする限り,最終的には財務面から Microsoft を潤すことになるのだ。

Azure に関連するものとして Microsoft は,7月1日からピーク時およびオフピーク時のいずれにおいても,すべてのインバウンドトラフィックを無償にすると 発表している。Azure へのデータ移行をより低価格にして敷居を低くすることで,Microsoft はより多くのユーザを呼び込む考えのようだ。

New Directions for the Cloud (クラウドの新たな方向性) のパネルでは,Cisco のクラウドコンピューティング担当 VP 兼 CTO の Lew Tucker (以下 LT),世界的リーダである HP の Jon Weinman (以下 JW) の両氏が,今後10年間のクラウドコンピューティングのトレンドについて議論した。

Tucker 氏は "アプリケーションとクラウドスタックから利用できるように,ネットワークの下位属性を仮想抽象化を通じて公開する" ネットワークコンポーネント開発の必要性を指摘している。

LT: "アプリケーションは,それが利用するリソースの面から自身を意識するようになるでしょう。" さらに氏は,柔軟性には2つの面,すなわちスケールアップとリソースがもはや不要となった場合のスケールダウンが存在する,と説明した。アプリケーション管理ソフトウェアは,コストや利用可能なリソースを正確に知るために,これらのリソースを考慮する必要がある。

JW "ほとんどの環境下でベストな選択はハイブリッドです。"

LT: "プライベートクラウドとパブリッククラウドを巡る議論は間もなく消滅するでしょう。クラウドコンピューティングとは,柔軟性のあるモデルでアクセス可能なリソースプールを作ることなのですから。" 内部データをクラウドモデルへの移行が成功する条件は,"それを内部サービスプロバイダとして実行するように管理することです。"

JW: "クラウドリソースとエンタープライズリソースを組み合わせて考えるならば,遠隔地のデータセンタとして以外にも可能なモデルがあります。" "マルチオファー型のホスティングないしクラウドプロバイダを所持しているなら,物理的に同じ施設にあるオンデマンドのリソースを兼ねた,コロケーションとしてのメリットもあります。"もうひとつ,Weinman 氏が今後 10 年間に普及するのではないか,と考えているアーキテクチャである "クラウドにネットワーク接続された企業リソース" は,"ワンチップに積載されたバスなのです。"氏はこのような方向性が,準同型暗号 (homomorphic encryption) やクラウドセキュリティに関して必要になるという考えを持っている。

Tucker 氏と Weinman 氏はともに,プライベートクラウドとパブリッククラウドの境界は徐々に薄れて,最終的にはハイブリッドクラウドに収束すると考えている。それこそが,内外部において可能な量のリソースで動作するアプリケーション,というクラウドの本質だからだ。

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