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アジャイル適用に関する政府機関のガイドライン

原文(投稿日:2012/07/31)へのリンク

 

米国と英国の政府会計監督機関は先日,政府の出資する開発プロジェクトへのアジャイルプラクティス適用に関する報告書とガイドラインを公表した。米国政府説明責任局 (GAO / Government Accountability Office) と英国監査局 (NAO / National Audit Office) はいずれも,政府部門でソフトウェアシステムを構築するための最善の方法としてアジャイルの採用を推奨すると同時に,その適用とガバナンスに関するガイドラインを提供する。
NAO の報告書 によると,

政府はプロジェクトの失敗によるリスク軽減のため,情報および通信技術 (ICT) の調達と提供にアジャイル手法を採用します。2011年5月に実施された公会計委員会 (Committee of Public Accounts) の公聴会で政府は,アジャイルを単独ではソフトウェア開発の改善方法とは考えず,ICT に対応するビジネス変革を成功させるためのテクニックと捉えていることを明らかにしました。当時の内閣府事務次官によれば,"IT プロジェクトというものは存在しません。あるのは IT を利用するビジネスプロジェクトのみです"。 さらには,"1日でシステムを全国的に変更しようという試み – いわゆる 'ビッグバン' インプリメンテーション– は,ほとんどすべての状況において失敗する運命にあります"。

テーマを同じくする GAO の報告書 では,

連邦政府の各機関は,自らのミッションのサポートを IT に依存しています。2011年度には,少なくとも 760 億ドルの費用が IT に費やされました。議会もそれらには以前から関心を寄せています。しかしながら,長年に及ぶそれらの関心は,コスト超過やスケジュール遅延を生じた長期プロジェクトの実例の特定には貢献しているものの,ミッションに関する成果の獲得にはほとんど貢献できていません。こうした問題のリスク軽減のため行政予算管理局 (OMB / Office of Management and Budget) では,アジャイルと呼ばれるソフトウェアを小さな単位で短期間に生産するアプローチに従って,モジュール形式でソフトウェアを提供することを推奨しています。

2011年3月,英国の政府研究所 (Institute for Government) は,従来的な方法による既存の "ベストプラクティス" プロセスではシステム的な欠陥に対処できない ことを理由に,政府関係の ICT プロジェクトへのアジャイルメソッド適用を提唱した。

NOA の報告書は,アジャイルプロジェクトのための効果的なガバナンスのパターンとアプローチの明確化を目的とした上で,さらにガバナンスの4原則についても言及している。

  • ガバナンスにアジャイルメソッドの哲学を反映すること – ビジネス的に価値があり,遅延を発生しない場合にのみ,タスクを実行すべきである。
  • アジャイルデリバリを実施するチームは,自分たちが使用し,監視する経験的パフォーマンスの指標に基づいた決定を行うこと。
  • 上級管理職,外部評価者,ビジネスユーザ,ICT チームは,品質面でのパートナでなければならない。これらの協調的アプローチは,本質的な発想の転換である。
  • アジャイルデリバリの外部評価やレビューでは,プロセスや資料だけでなく,チームの行動に対しても注目すべきである。

GAO の報告書には,連邦政府のプロジェクトにおいて成果の確認されたプラクティスとアプローチが示されている。

  • 開始はアジャイルガイダンスとアジャイル採用戦略に従うこと。
  • ユーザストーリ (要件の伝達に使用される) などアジャイルの用語,あるいはユーザストーリ記述方法デモなどアジャイルの実例を使って,アジャイルの概念への移行を強調せよ。
  • プロジェクロレベル,組織レベルの両面で,アジャイルの採用を継続的に向上させよ。
  • 組織およびプロジェクトレベルで障害を特定し,対処せよ。
  • 利害関係者/顧客からのフィードバックを頻繁に取得せよ。
  • 小規模な機能横断型チームを尊重せよ。
  • 未完了作業のキュー (バックログ) に,セキュリティと進捗監視に関する要件を追加せよ。
  • 各イタレーションの最後に成果を示すことによって,信頼を獲得せよ。
  • ツールと指標を使用した進捗管理を実施せよ。
  • 毎日,目に見える形で進捗を監視せよ。
     

さらには,連邦関連においてアジャイルの適用と適応を図るための,共通的な課題についても示している。

  • チーム間の密接な協力関係が困難である。
  • 調達という慣行が,アジャイルプロジェクトには不向きな可能性がある。
  • チームの自己主導的作業への移行が困難である。
  • 反復型ソリューションが顧客の信頼を得られなかった。
  • スタッフに対して,よりタイムリーかつ頻繁なインプットを求めることが難しい。
  • 反復作業による要件定義の管理が難しい。
  • 政府機関のスタッフ獲得に問題があった。
  • イタレーションの時間フレーム内で,コンプライアンスの再検討は困難である。
  • 新たなツールのタイムリな投入が難しかった。
  • 連邦政府の報告慣行がアジャイルに適していない。
  • 技術的環境の達成と維持が難しかった。
  • 従来形式の成果物レビューがアジャイルに即していない。
  • アジャイルガイダンスが不明確。
  • 従来形式の状態監視がアジャイルに即していない。
     

読者は行政関連のプロジェクトで,どのようなアジャイル経験をお持ちだろうか?

 

Shane Hastie 氏はアジャイルコーチ,トレーナ,コンサルタンとして,オーストラリアおよびニュージーランドのソフトウェア教育に携わっている。

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