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アジャイルのニアショアあるいはオフショアサプライヤを評価する

原文(投稿日:2012/12/04)へのリンク

 

ニアショア(Nearshoring)はオフショア(Offshoring)に比べて地理的,文化的に近いことから,アジャイルソフトウェア開発プロジェクトでは競争力の点で勝っている。これは2012年11月19日付のComputerWeeklyでKarl Flinders氏が示した最近の意見だ。その記事を読むと,次のようなポイントが確認できる。

  • アジャイルが成功するには,チームと顧客の間に強固で継続的なコミュニケーションが必要となる。
  • 地理的に接近していれば,チームが同じまたは近接したタイムゾーンにいることになるので,コミュニケーションに有利である。
  • 文化的背景の共有が誤解の数を減らすと同時に,アジャイルに必要なコミュニケーションをさらに拡大する。
記事には興味深い仮説が提示されているが,その一方で根拠の提示が極めて少なく,筆者の個人的な逸話や,あるいは東欧のニアショアサプライヤに関する潜在的に偏った意見があるのみだ。アジャイルメソッドではコロケーションとコミュニケーションが重視される。中でも重要とされるのは,開発チームとユーザが同室で作業することだ。その意味から言えば,アジャイルにとってオフショアやニアショアはそもそも観念的に似合わないのだ。
 
しかし実践経験がプラグマティズムと適応を推し進めた結果として,オフショアやニアショアのサプライヤと共同作業するアジャイルチームも多数存在する。ならばそれらのアジャイルチームにとっては,ニアショアがより適した方法なのだろうか? それを議論する前に,ニアショアとは何かを定義しておこう。Wikipediaによると,
ニアショアとは"ビジネスあるいはITプロセスを近隣国家,多くの場合は自国と国境を共有する国の企業へ移転する行為"[1]を言う。両社が期待するのは,隣接しているという事実から来るメリット – 地理的,時間的(タイムゾーン),文化的,言語学的,経済学的,潜在的ないし歴史的な結びつき[2]である。アウトソースされるサービス作業は,一般的にはビジネスプロセスやソフトウェア開発などである。
しかしニアショアの考えられる状況でも,Flinders氏の意見に合致しないケースもあるだろう。例えば日本とロシアは地理的には非常に近いが,文化的に近接しているとはとても言えない状況だ。ウラジオストクの企業にアジャイルソフトウェア開発をニアショアしたいという日本企業でも,そのニアショアを機会に交流を深めたいとは思わないだろう。
 
これとは逆に,地理的には離れていても文化的距離が非常に近い国もある。米国とオーストラリアとイギリスは非常によく似た文化的背景,政治および法律機構,伝統を有する国々だが,それぞれの地理的な隔たりの大きさは世界地図を見れば一目瞭然だ。
 
文化的および地理的な距離の近さが,ニアショアアジャイルサプライヤの競争力を高める唯一の条件ではないとすれば,では何が条件なのだろう? ここでCIO Magazineの記事 "7Tips To Offshore Agile Development" と ComputerWorld の "Is Your Outsource Agile Enough" の内容をとりまとめた,いくつかの見解を紹介しよう。
 
  • アジャイルの成果を実質的に共有するためのコミュニケーション手段と標準手法が,受け入れられ,体得されていること。
  • 定期的にこちらに来て,あなたのビジネスや関係者を"詳細に知って理解"したいと考えているパートナの存在。
  • アジャイルソフトウェア開発手法を真に認め,受け入れる企業。
  • 毎日のミーティングの調整を容易にするために,パートナーとはビジネス時間が重複している必要がある。
  • アジャイルのオフショア開発は自己管理型やオーガニックではできない。プロセスに分離が生じた場合には介入することを厭わない,アクティブなマネージャが必要だ。
 
アジャイルチームがサプライヤを選択したなら,コミュニティがこれまでオフショアアジャイル開発から学び,積み上げてきた教訓についての十分な検討時間を確保しておく必要がある。ここで読者に尋ねたいのだが,他にはどのようなオフショアあるいはニアショアサプライヤの選択基準があるだろうか。読者自身のオフショアあるいはニアショア経験から学んだ教訓があれば,ぜひ教えて頂きたいと思う。

 

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