Terracottaの BigMemory 4.0 と In-Genius は,さまざまなビッグデータからの詳細情報をリアルタイムに提供するNoSQLデータベース製品だ。同社は先日,インメモリ・データプラットフォーム BigMemory の新バージョンと,ビックデータ用インメモリ・インテリジェンスプラットフォームの 新製品 In-Genius をリリースすると発表した。In-Geniusプラットフォームは,さまざまなデータソースのデータメッセージやイベントストリームを統合処理することによって,ストリームや複雑なイベントの収集,およびそれらに基づくレポート,解析,リアルタイム応答などの処理を実現する。サポートされるビッグデータのソースにはリアルタイムデータも含まれているが,従来のデスクトップやラップトップとのデータ交換だけではなく,スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスやPoS端末からのリアルタイムデータも処理対象である。
BigMemory 4.0:
インメモリ・データプラットフォームの新バージョンであるBigMemory 4.0を導入して組織データをオンメモリ管理に移行することにより,コストを要する複雑なデータ管理アプローチの必要なく,データの処理速度とスケール性の向上を実現できる。今回のバージョンではHadoopとのインテグレーションもサポートされている。リアルタイムなエンタープライズインテリジェンスのために,インメモリデータと管理情報をBigMemoryとHadoop間で移動することが可能になった。その他にも,インメモリデータセット検索の高速化やJava 7のサポートなどの点が改善されている。
In-Genius:
2013年の第3四半期の一般提供が予定されているIn-Geniusインメモリ・インテリジェンスプラットフォームは,インメモリデータ管理とイベントストリーム処理とメッセージングを組み合わせてリアルタイムな情報提供を行うプロダクトだ。イベントトランザクションやパターン識別,ふるまい予測に基づくアクション生成などの機能を備え,Oracle,SAP,Hana,Hadoopなどの環境で動作が保証される。
BigMemory4とIn-Geniusの組み合わせがリアルタイム解析処理に付加価値をもたらすと期待されるのは,次のような業界のユーケースだ。
- 金融サービス: In-Geniusの備える高度なパターン認識を活用することで,金融アプリケーション内の不正なトランザクションを,実行後ではなく承認以前に検出,阻止することが可能になる。これによって,コスト削減の実現面で組織を支援する。
- ロジスティックス企業: パッケージのロケーションに加えて,履歴情報やトラフィックセンサ,天候,カレンダ上のイベント,さらにはデータに現れるパターンにも基づいて,リアルタイム供給管理のルーティングを支援する。
- リテールストア: リアルタイム情報によってパーソナライズされたWeb販売のリコメンデーション表示,全店舗を対象とする販売時点情報の取得などによる収益性の向上,消費者のショッピングエクスペリエンスのパーソナライズによるブランドロイヤリティ向上などを支援する。
InfoQではTerracottaでプロダクトマーケティング部門のシニアディレクタを務めるAndy Raskin氏から,BigMemoryプラットフォームの最新バージョンと新製品のIn^Geniusについて話を聞いた。
InfoQ: 従来のキャッシュソリューションとインメモリ・データグリッドの違いは何でしょうか?
Andy: それを理解するには,まずデータの存在場所で発生している根本的な違いについて理解しなければなりません。従来のキャッシュソリューションは大抵の場合,データがディスクに格納される時点で実施されるものでした。大量のデータをメモリに格納するのはあまりにも高価ですが,ある程度のメモリを確保できればパフォーマンスの向上は得られます。それがキャッシュです。ただしキャッシュで本当に重要なのは,データを迅速に提供することであり,そのために保持するデータについてある程度スマートであることが必要です。
今日ではRAM価格の急落のおかげで,ほとんどの – 場合によってはすべての – データをメモリに保持することも現実的になりました。巨大なキャッシュとして使いたいかも知れません。しかし,それとは根本的に違うものが確実に存在しています。特に高可用性,フォールトトレランス,データ管理やモニタリングといった,ディスク基盤のデータベースで実現されていたすべてのもの – それらが今,インメモリストアで求められています。
ですからBigMemory 4.0は,企業アプリ開発者に対して,本当に高速で予測可能なデータアクセスを実現するだけでなく,企業が普段使っているすべての機能を提供するのです。
InfoQ:2つの新製品,BigMemory 4とIn-Geniusによってビッグデータを処理する新しいアーキテクチャでは,モニタリングに関してどのようなサポートがあるのでしょうか?
Andy: BigData 4.0では,分散インメモリデータセットの高度なモニタリングと管理を行うためにTMC(Terracotta Management Console)を導入しています。これはWebベースのダッシュボードで,管理者や開発者にインメモリデータの動作状態に関する豊富なリアルタイム情報と,動作設定を行うツールを提供します。In-GeniusもBigMemory上で動作していますから,TMCはどちらのプラットフォームでも利用できます。
InfoQ: BigMemoryの今後のロードマップについて教えてください。
Andy: あまり詳しくは話せませんが ... BigMemory 4.0に関して言えば,パフォーマンスやスケーラビリティの向上,高可用性のための機能拡張,他のデンタープライズデータソース (Hadoopなど) との親和性向上などを考えています。 BigMemoryの将来のバージョンでは,これらの各領域においてより多くのものを提供するとともに,データのインメモリプラットフォーム移行によるメリットを企業がより簡単に獲得できるようにしたいと思っています。
InfoQ: In-Geniusについてはどうでしょう?
Andy: In-Geniusのロードマップはとても楽しみです。特に今回,ローンチ発表に対する反応がとてもよいものでしたから。さまざまな業種の – 金融サービスやリテール,行政機関,メディア,物流,これらはごく一部ですが – 多くの企業から,即時性と収益性の高い活動とビッグデータ・インテリジェンスをリンクするために使用する,という計画を聞いています。In-Geniusについては,今年後半になれば詳しく発表できるでしょう。
BigMemory 4.0とIn-Geniusに関するより詳細な情報は,TerracottaのWebサイトで見ることができる。
Srini Penchikala氏はソフトウェア製品管理に17年の経験を持ち,現在はセキュリティアーキテクトとして活動している。