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カンバンを使ってアジャイルを始める

| 作者: Ben Linders フォローする 27 人のフォロワー , 翻訳者 徳武 聡 フォローする 0 人のフォロワー 投稿日 2014年10月14日. 推定読書時間: 12 分 |

原文(投稿日:2014/10/02)へのリンク

アジャイルの導入成功と組織変革の方法には関連がある。組織は、“命令”としてトップダウンでアジャイルを導入することもできるし、アジャイル導入の代替方法の記事で書いたアプローチでも導入する。カンバンはアジャイルをスタートするために使え、チームは持続的な新しい働き方を作る準備ができたと感じたときにアジャイルに参加できる。

Yuval Yeret氏Lean Kanban France 2014カンファレンスカンバンでアジャイルを始めるための良い方法、悪い方法について話す予定だ。このカンファレンスの模様はInfoQで取り上げる予定。

InfoQは氏にインタビューを行い、カンバンでアジャイルを始めることについて、アジャイル導入に対する懐疑への対処方法、カンバンと他の方法の比較について、話を聞いた。

InfoQ: なぜ、組織はアジャイル導入で苦しむのでしょうか。あなたの意見を聞かせてください。

Yuval: 典型的なシナリオでは、組織はなぜアジャイルを導入するのかについて考えずにアジャイルの導入を行います。アジャイルがファッショナブルであり、導入しないと取り残されていると感じる組織や、導入するべき良い理由があるものの、導入する段になって、意識が低かったり、動きに不満があったりするからです。

従来の"上からの大規模な展開"は特にうまくいきません。なぜアジャイルを実践するのかという問いを避けて、命令で"ユーザストーリー"に従うようにしても、コミュニケーションの中で迷子になってしまうのです。

不満や苦しみ、アジャイルを実践する理由について、効果的にコミュニケーションできる状態になったとして、次はアジャイルの実践や構造、役割を人々に飲み込ませるときに壁にぶつかります。意図は良くても、"公平なプロセス"が必要であり、作業内容や作業ペースについて協力しながら意思決定しなければなりません。そうしないと、自主性が失われ、変革を成功させる上での支援から健全な関係性が失われてしまいます。

InfoQ: アジャイルを始めるためのカンバンを使った方法とはどういうことなのでしょうか。

Yuval: 私たちは異なるテーマ/側面について話をします。まず、David J Anderson氏が開発したKanban Methodについてです。この方法は、まずシステムを理解し、不満な点を見つけます。そして、劇的な変革を行うのではなく、現時点で何が行われているのか、特に人や役割について、注意を払います。そして、作業の流れを視覚化して、流れを管理することに着目して、動きを改善します。

直接的に流れが変わることで改善が得られます。また、システムを"リーン/カンバンのゴーグル"を使って見ることで得られる情報や学習も有益です。改善活動の推進を助けてくれる異なる診断フレームを使うことができます。

Kanban Methodを使えば、"Start with Managers Kanban"アプローチを使えます。このアプローチは、可能な限り早い段階でマネージャを巻き込んで、カンバンを使ったときの価値の流れを、選択できます。可能な限り早い段階でマネージャが考え方や実践を理解してリードできるようになる、あるいは、組織にとって重要な方向に向かっていることを理解できる状態か単にアジャイル導入を要求する状態にできます。

この方法は典型的なアジャイルの展開と正反対です。典型的な方法ではまずチームに着目し、その後、 "プログラム"レベルにまでスケールするだけです。"プログラム"レベルでカンバンを始めるか、それとも、重要な価値の流れを選択し、マネジメントにしっかりと関わってもらいながら、ハンズオンでカンバンを実践するか、ということです。マネジメントを排除してしまうと、彼らはそのまま懐疑的になってしまいます。

SAFeの実装を見たことがあるなら、同じような考え方に基づいていることがわかるでしょう。チームを確立してからスケーリングするのではなく、リーダーのための"Leading SAFe"ワークショップとAgile Release Trainsを同時に実施するという方法は、リーダーシップを巻き込むという目標を実現する手だてとして有効です。少し話がそれましたが...

また、"プルベースの変更"もうまくいきます。小さなグループを内包する大きな組織では、組織をアジャイルを導入するための変革運動を広める市場に見立てるのです。市場ですので、製品/変革運動を市場の現在の状況に合わせるように進化させるために"キャズムを超える"というようなマーケティングの戦略を活用できます。例えば、イノベータと一緒に動いているときとアーリーアダプターと動いているときとでは、動き方を変える必要があります。また、アーリマジョリティ、レイトマジョリティにリーチする時は、変革のある側面について何らかの仕事が必要です。

しかし、企業の変革エージェント/マネジメントチームとして変化を押し付けるのではなく、変化を売るということが重要です。変化する準備ができているグループから変化を引き出すようにする必要があります。彼らがやってみようと思ったとき、理想的には彼らが"変革を構成"できるようにするべきです。彼らのしたいことを彼らのペースでやらせてみるべきです。私はこのやり方がうまくいくのを見ています。これはカンバンのコンセプトである"プル"となじみます。

InfoQ: アジャイルを実践するタイミングはチームが決めるべきだと提案していますね。どのように実現したらいいでしょうか。

Yuval: 確実な方法はありません。しかし、彼らが"プル"する機会を最大化するよう試すことはできます。これは、"Impact Mapping"の興味深い実践になります。私たちが持ちたい影響は"チームが正しいタイミングでアジャイルを実践し、先延ばしにしない"ということです。さまざまな利害関係者がおり、このような影響を持てるように支援してくれます。シニアリーダー、コーチ、同僚などです。支援にもさまざまなやり方があります。ストーリーの成功、人々がよりアジャイルな振る舞いへ駆り立てる結果を出した場合の評価や計測、意見や利益の表明、不満を強調することなどです。

実際、ひとつの難点でもあります。文脈に依存すると、アジャイルの実践を部分的に導入するのはとても難しくなります。このような状況で、カンバンは威力を発揮します。既に獲得している能力で始めることができるので、アジャイルを実践したいチームとゆっくり始めたいチームの間に急いでキャズムを作る必要がなくなります。

また、カンバンの包括性は、あるチームが他のチームよりも早く動いているような状況にもとても良く馴染みます。必ずしも役割や構造を変える必要はないという事実によって、少なくとも当初は、組織には大きな構造的変化に依存せずに、変化していく時間が生まれます。

InfoQ: チームがアジャイルへの準備ができていないという判断をした場合は、どんなことができるでしょうか。

Yuval: チームが独立しているのなら、つまり、価値の流れやデリバリのネットワークに組み込まれていないなら、彼らがしていることを引き続き、進めていくという選択肢がありえます。組織がアジャイルのガバナンスの視点を導入する場合、このチームが活躍するのは大変なことですし、アジャイルのある種の部分を導入することになるかもしれません。

これが"プルベースの変化"の大事な点です。プルするのはチームの選択の結果なのです。彼らは結果に責任を負います。従って、より良い結果をもたらすなら、チームはアジャイルを導入するべきです。そして、組織はこれを受け入れ、チームが独自のペースで変化するのを認める必要があります。

もしこのチームがデリバリネットワークの一部なら、チームがそのままでいるのはもっと難しくなります。特に、他のチームに価値を提供するのが仕事のチームは難しいでしょう。例えば、多くが依存しているサービスをメンテナンスするチームです。この状況では、デリバリネットワークがアジリティを改善したいと思ったときに、このチームは強烈な圧力にさらされます。

もし、この圧力があるにも関わらず、チームがアジリティを発揮するのに障害があると考えるなら、介入し、どのような障害があるのかを明らかにするという面白い状況になるでしょう。組織やデリバリネットワークはこの障害を取り除くのにエネルギーを費やす必要があります。この状況はすべてのチームがアジャイルに取り組むのとは全く違う状況です。上からの命令というよりも、ビジネス上の要請によって駆動されているのです。

InfoQ: アジャイルの導入に反対している人に対してはどのように対処したらいいでしょうか。

Yuval: "キャズム理論"を使って考えるなら、疑っている人たちはそのままにしておいて、アジャイルが証明され、デファクトの方法になった段階で、仲間になってもらえばいいと思います。疑っている人が変わろうと決心すると、目を引きます。チームへの対処の仕方は、反対の理由を理解することです。現在のやり方がやりやすすぎるからなのか。現実の問題を解決するのにアジャイルは間違った方法だと理解しているのか。正しい手法だが、真の課題があり、それは組織は対処するつもりと思い込んでいるのか。

私たち(AgileSparks)が新しいグループ/組織と一緒に働くとき、マネジメントワークショップを開催し、なぜ変わる必要があるのか、どのような選択肢があるのか、どんな障害があり得るのかについて議論します。疑いを持っている人はこの議論で重要な位置を占め、議論に現実を持ち込んでくれます。また、このような議論をすることで一部の人の疑いがはれることもあります。

今のままでいようとする人たちは、組織がなぜ変わろうとしているのかについて、そして、組織/グループが現実の役にたつと判断したアジャイルのある種の側面について定期的に思い出してもらう必要があります。これは、従来の変革のマネジメントと同様だと思います。

InfoQ: 組織がアジャイルを導入するときにカンバンを利用することの利点とは何なのでしょうか。

Yuval: カンバンの大きな利点である「プルベースの変革」と「マネージャからの開始」によって、楽に新しいアジャイルの世界に入ることができます。健全なやり方で出発でき、健全で持続可能なペースで人々から変革を引き出せます。

私はこれまで、カンバンによって深い変革を駆動する能力を育てた組織を多く見てきました。その中にはさらにカンバンの奥深くに進んだ組織もあるでしょうし、より破壊的な実践的/構造的変革を実施する組織もあるでしょう。例えば、機能横断的なチーム/組織構造へ移行したり、リリースのリズムを壊したり、継続的デリバリに移行するという変革です。

ある巨大企業のことが頭に浮かびます。プログラムレベルで彼らはカンバンをうまく使って、2年で600人を横断して、ウォーターフォールを打破し、サイクル時間を改善し、制約を特定し、現在の状況を押さえている"ガラスの天井"を明らかにして、この天井を突き破ることで、潜在的な改善が見込まれることを理解しました。彼らは今、さらに機能横断的なスクラムチームへ移行し、メトリクスを回転させて、スプリントを実施しています。

これをなぜ2年前から実践できなかったのかという疑問もあるかもしれません。もし、その質問をこの企業のバイスプレジデントにしたら、そのような変革を行うほどの仕組み/自身がなかったからだと答えるでしょう。不可能に思えるハイリスクな飛躍だっったということです。今でもガラスの天井を破ることはリスクを伴いますが、手の届くところまできています。リーンやアジャイルに対する考え/理解を共有し始め、障害を見定めています。マネジメントや懐疑論者を変えることに対する彼らの影響はとても大きいです。ここまで来たら、大きな組織であろうとたいした問題ではありません。

InfoQ: アジャイルを導入したい組織にとって、カンバンは他の方法と比べてどうなのでしょうか。

Yuval: 最近アジャイルを導入しようとしている大企業には他の選択肢もあり、検討するべきだと思います。つまり、スケールされたアジャイルフレームワーク(SAFe)という選択肢です。SAFeは最近最も人気の手法です。SAFeとカンバンに基づいたアジャイル/リーンの理論を探しているなら、同じような着想に行き着くでしょう。Donald Reinertsen氏のPrinciples of Product Development Flowも似ています。

SAFeにもカンバンにも、大規模なバッチやキューなどさまざまな形態の無駄が見つかるでしょう。両方とも無駄を最小限にし、フローを最大化しようとしますが、カンバンのほうがこの点を強調しているように思います。大きな違いは、変革のマネジメントに対するアプローチと提供するガイダンス/規範です。SAFeのほうがより規範的です。SAFeの良い点は、その構造が最近アジャイルを導入しようとしているメインストリームあるいはレイトマジョリティの企業に信頼と魅力を提供するという点です。しかし、この規範と構造は、SAFeの実践やパターンは典型的な大企業でも使えるように未成熟なアジリティを表現しているという事実と相まって、"閉鎖的"で"決定的"な印象を生み出します。

リーン/アジャイルコミュニティの多くは組織がSAFeを導入して、そこで止まってしまうことを心配しています。水で薄めたアジャイルのまま止まってしまうということです。これは危険なことです。組織は変化を受け入れ、安定させ、その状態を受け入れてしまうものです。私たちAgileSparksはこのような状態を"再充電"フェーズと呼んでいます。多くの場合このフェーズは長く、数ヶ月から数年になります。しかし。正直に言えば、カンバンでもこの問題はおきます。"再充電"は頻繁に起こり、"水で薄められた"アジリティの世界に組織が取り残されます。

思うに、多くの人々が自分たちにとって正しい方法を決めようとしています。少なくとも私が見る限り、明確な答えはありません。私は旅行者で喩えることがあります。ガイド付きのツアーが好きな人もいれば、本を読んで、コミュニティサイトを調べて旅行するのが好きな人、自分で考えて独自に旅行する人もいます。どれが一番優れているかを決めることはできません。

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