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アジャイルを使って発展途上国の教育を改善する

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原文(投稿日:2014/11/07)へのリンク

ICTの教育アドバイザーを務めているJulian Harty氏Agile Puneカンファレンスで基調講演を行う予定だ。氏は発展途上国での教育の改善にアジャイルの手法を使ったことについて話す。InfoQは氏の活動と"If not now, when? If not you, who?"と題した基調講演についてインタビューした。

InfoQ:どのような問題に取り組んでいるのですか。'すべて'が定義されるのを待たずに行動を起こすアジャイルの手法はどのように活用しているのですか。

解決しなければならない難点はたくさんありますが、主要な問題は次の通りです。

発展途上国や貧しい人を‘助ける’ための多くのプロジェクトが失敗しています。例えば、私が2012年にケニアに初めて行ったとき、使われていないコンピュータ、スクリーンを見ました。コンピュータに電源を供給するはずの発電機ですら、6ヶ月も使われていませんでした。今年の6月に同じ学校へ行きましたが、その発電機はまだ使われていませんでした。設置されて2年もたっているのに、です。設備投資はおそらく2,000ドルくらいでしょう。しかし、生み出した価値はゼロ、またはマイナスです。2年間も使われていないのですから。
教育、特に公教育は硬直し、ひん死の状態です。教育を改善するというプロジェクトには数百万ドルというお金が使われています。しかし、‘デジタルカリキュラム’という中身のないものが生み出され、形のある結果が生まれていません。
知らないことがたくさんありました(知らないことを知る)。実際にやってみないと理解することができないのです。権力、信頼、満足、学校や先生が設備を使いたいと思っているかどうか、などなど、すべてに答えが必要です。唯一の方法はやってみてその過程から学ぶということです。
私は一人で活動していました。自己資金で動いていたので、目的を達成することができなかったとしても、学んだことや見つけたことを実践することはできる、ということに気づきました。

InfoQ: 田舎の学校で、資金が限られているなかで、どのようにして学習インフラを構築しているのですか。

Raspberry Pi’sは比較的安く簡単に手に入るデバイスで、世界中に熱心なファンがいて、試行錯誤をして知識を共有し、簡単に再利用できるようにしています。また、Raspberry Piは最小限の電力しか使いません。3ワット(例えば小さなソーラーパネルで供給される)程度でも動きます。小さなウェブサーバとしても活用でき、10人程度であれば、同時に動画を見ることもできます。教材はすべてオンラインから入手できます。しかし、田舎の学校では自力でオンラインから教材を見つけ、活用するのは現実的ではありません。RACHELKahn Academy Liteというようなプロジェクトが必要です。また、KiwixはWikipediaのウェブサイトを含むWikimedia Foundationのコンテンツをオフラインでアクセスできるようにしてくれます。

私が構築しているインフラは小さなレベルのものです。ひとつかふたつのRaspberry PiをWiFiのホットスポットとして走らせています。UPSとして、外部電池を使っているので、万が一の場合でも継続して動作します。学校にはさまざまなコンピュータがあり、教材へのアクセスに使われています。古いディスクトップ、ラップトップ、Androidタブレットもあります。すべてのデバイスのウェブブラウザはRACHELとKahn Academy Liteで利用できます。学校はある程度インターネットに接続できるので、Raspberry Pi上のソフトウエアや教材を使うことができますし、Androidタブレットをアップデートすることもできます。しかし、メモリスティックや外付けハードディスクも使っています。大容量のコンテンツを田舎からオンラインでダウンロードするより、現実的ですから。

InfoQ: あなたはアジャイルの手法を使って“教えること、学ぶこと、教育を改善する”ということについて話していますね。例を教えてください。

私は世界のハイテク企業で十分な経験を積み、アジャイルを使って仕事をしてきました。また、他のプロジェクトを見ているときも 、証拠を集めることで、迷いを断ち、同じようなことをしたいと思っている人に対して役に立つ情報を提示できました。

コラボレーションとコミュニケーションです。私はこの2年間、さまざまな人や組織と働いてきました。4つの大陸で、ソーラパネルやバッテリーのベンダ、政府の教育部門、オープンソースプロジェクトのチーム、大企業、友人やボランティア、さまざまなNGOと仕事をしました。協力して互いに学び合う方法を探ろうとしてきました。手書きからVCとの議論、オープンソースプロジェクトへの貢献、ブログへの投稿などさまざまなコミュニケーションの方法があります。それぞれのパイロットプロジェクトで、‘私が聞きたいことを話してくれ’という態度ではなく、誠実さとオープンなフィードバック(アフリカやインドの多くの人にとっては文化的に難しい)を求めています。データを収集するために手書きのフィードバック用に簡単なテンプレートも使っています。

プロジェクトのメンバは、学習し、オーナシップと責任を持ち、意思決定し、貢献し、プロジェクト内外と協力することを推奨しています。

リーンの原則では、まずは最小の設備と予算から始めます。そして、最初のリソースが適切に使われたという根拠を獲得したから、スコープを広げます。どの程度の追加リソースがプロジェクトの進行に必要なのかを明らかにするのです。

InfoQ: インドやケニア、チリで学校を支援する中で得られた重要な知見について教えてください。

学校、あるいは学校を支援する人の中に少なくともひとりは優秀な人が必要です。プロジェクトを公にし、設備が‘割り当て直され’たり‘なくなったり’した場合に支援してもらえるようにすることも重要です。

プロジェクトに関わる人にはサポートと激励が必要です。給料はありません。時間とエネルギーをプロジェクトを持続させるために投資してもらう必要があります。さらに責任とコミットメントも持ってもらわなければなりません。

チリでは、すべての要素、コンピュータや技術者が揃っていましたが、必要なのは、プロジェクトを通じて達成できることを実現することでした。カンファレンスのテーマの通り、行動することで物事が明らかになるのです。

また、技術者は相対的に小さな労力で大きな価値を生み出すことができます。

InfoQ: 個人はこのような変化を起こすことに対してどのように貢献ができますか。

技術者はさまざまな方法で貢献ができます。ITやハードウエアの知識があるので、パイロットプロジェクトを他の学校にも展開できます。また、委託学校の支援もできるでしょう。例えば、学校の既存のコンピュータにRACHELソフトウエアをインストールしたり、児童や教師がソフトウエアや教材を自信を持って使えるようになるよう手助けできます。

メールを使ったことがあったり、英語やその他の言語を使える人はユーザインターフェイスの翻訳を手伝うことができます。教材を他の言語へ翻訳することも支援できるでしょう。インドでは、カンナダ語とヒンディー語の翻訳をしている人がいます。これからの数週間で、タミル語、テルグ語の翻訳も支援が始まるでしょう。最近の活動はここで見ることができます。

プログラマは翻訳やさまざまなオープンソースプロジェクトを支援できます。KiwixKhan Academy LiteRACHELというようなプロジェクトです。

Agile Pune 2014 カンファレンスはインドのプネーで2014年11月21日から22日に開催される予定。

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