CapgeminiとSogeti,HPが共同で支援したWorld Quality Report 2014-15第6版のベースとなっているのは,1,543人の上級IT管理者が参加して実施された,総合的な市場調査である。報告書では,最近のテストプラクティスの変化,アジャイルテスティングなどの新たな潮流,テスト環境管理,モビリティ,データ分析,クラウド,モノのインターネットといった分野に注目する。
World Quality Report第6版は,地域版と国別版がwww.worldqualityreport.comでオンライン公開されている。
今年の版に含まれているのは,
- アウトソーシング,テクノロジ,ツール,方法論に関する品質とトレンドの現状。
- 業界別分析(自動車,ユーザ向製品,小売業と流通業,エネルギとユーティリティ,ハイテク,金融サービス,公的セクタと電信電話,メディアとエンターティメント)。
- 地域別分析(ベネルクス,フランス,ドイツ,北米,北欧,英国)。これらは個別にダウンロード可能である。
Capgemini & SogetiでRifhtshoreのテストリーダを担当する上級副社長のMakarand Teje氏と,同社グローバルサービスラインのテストを担当するMark Buenen氏は,報告書のテーマとして,"デジタル転換(Digital Transformation)","テストの予算配分","機能テストと非機能テストの分散化と集中化"の3つについてビデオで言及している。氏らは報告書のメリットにも言及して,組織のテストプラクティスと業界標準との比較,テスト方法やテストデータ,テスト環境の改善のための推奨事項,デジタル転換プログラムの課題への対応方法などを挙げている。
Capgeminiの先日の記事にあったように,新たに現れたトレンドによって,品質とテストの重要性は増している。
モノのインターネットの成長とともに,今日では,情報へのシームレスな接続性と瞬時のアクセスが求められると同時に,デジタルチャネル間の一貫性のないエクスペリエンスへの許容度が低くなっています。そのため企業では,高品質で高信頼性のエクスペリエンス提供に対して,これまで以上に注意を払うようになっています。これらを含む技術動向が,QA(Quality Assurance, 品質保証)とテストに重要な影響を与えているのです。
今年の報告書では,次のような重要な見解が見られた。
- SMAC(ソーシャル,モバイル,アナリティクス,クラウド)などを含む,新規開発プロジェクトのテスト予算のシェアが,2012年の41%に対して2014年は52%と,2012年以降で始めてメンテナンスプロジェクトを越えた。
- IT予算に占めるテストの割合が2012年の18%から,2014年には26%へと上昇を続ける一方で,企業の35%が,テストに割り当てられた予算額に満足できていないと回答している。
- パフォーマンスやセキュリティ,使いやすさといった非機能要件は,特にモバイルテストにおいて重要性を増している。
- アジャイル開発手法を採用する企業は,2013年の87%に対して約93%に増加している。似たような課題に直面する企業が大部分を占める中で,最大なのは適切なテストアプローチの不在である。
- セキュリティ(59%)とパフォーマンス(57%)が,クラウドへのアプリケーション移行をテストする上での重要課題である。セキュリティはまた,モバイルテスティングの重要領域としても挙げられている。
調査結果に基づいて,報告書ではテスティングプラクティスを改善するために,いくつかの提言も述べられている。推奨されているのは,次のようなことだ。
- デジタル転換によって要求される新しいテクノロジに対して,QAおよびテストのモデルを適用する。
- エンド・ツー・エンドのユーザエクスペリエンスを検証するため,全チャネルのエクスペリエンスのテストを重視する。
- アジャイルプロジェクトのテスト部分は,迅速に行う必要がある。そのためには,リスクベースの解析技術とテスト駆動開発を組み合わるとよい。
- 専門家やプロセス標準化,向上した自動化レベルの効果的活用は,より高いコスト効率を実現するための大きな要素である。
- テスト環境のための,クラウドと視覚的ソリューションの利用拡大。
- 非機能テスト,特にセキュリティとパフォーマンスのテストを今以上に重視する。
報告書によると,市場提供までの所要時間に関する圧力や,全チャネルのエクスペリエンスをユーザに提供する必要性により,QAおよびテストに関する予算は,ハイテク,エネルギ,公益事業,輸送など,ほとんどの産業において増加している。調査データからは,QAおよびテスト予算の半分以上(52%)が新たな開発プロジェクトで使用されていることが確認できる。その内訳は,クラウド対応(27%),ビッグデータと解析(それぞれ20%),モバイル関連(17%)となっている。
Capgemini & SogetiのSVPであるGovind Muthukrishnan氏が報告書に記したところでは,同社は今後12ヶ月間,これらの調査成果をカンファレンスで公開することに加えて,ユーザ向けのワークショップの開催も予定している。