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DADフレームワークを用いたアジャイルのスケールアップ

原文(投稿日:2015/01/22)へのリンク

ディシプリンド・アジャイル・デリバリ(Disciplined Agile Delivery/DAD)フレームワークは,ソリューションを提供するためのエンドツーエンドな戦略を備えた,プロセス定義のフレームワークだ。DADが提供するアジャイルのスケールアップ基盤は,小規模から中規模,大規模に至るまで,どのようなチームでも使用可能なものだ,とMark Lines氏は言う。

先日のScaling Agile for the Enterprise 2015会議で氏は,DADフレームワークを用いたアジャイルのスケールアップについてのプレゼンテーションを行った。Agile Consortium BelgiumとUNICOMが共催したこのイベントでは,アジャイルフレームワークと,その展開の体験を紹介するプレゼンテーションが取り上げられた。その内容についてはInfoQでも,Q&Aやニュース記事,アーティクルなどで報告している。

InfoQは氏にインタビューして,DADフレームワークの展開と継続的デリバリ,DevOpsのサポート状況,スケールド・アジャイル・フレームワーク(SAFe)などについて聞いた。

InfoQ: DADフレームワークについて簡単に説明して頂けますか? 企業にはどのようなメリットがあるのでしょう?

Mark: 定義としては次のようなものです – “DADとは,アジャイルソリューションのデリバリを実践する上で,一貫性と実用性を備えたエンドツーエンドな戦略を提供するための,プロセス決定のフレームワークである”。 ITソリューションを提供するための,人優先(people first)で学習指向の,ハイブリッドなアジャイルアプローチがDADなのです。リスク-バリューライフサイクルを備え,目標主導型で,スケーラブルであり,企業での活用を意識しています。

基本的にDADは,スクラムのように単純化されたメソッドを,形式も規模も異なる企業やプロジェクトの持つ,さまざまなコンテキストに対応して展開するための,基本的なガイダンスを提供するものです。そのようなコンテキストに有効な特効薬(銀の弾丸)は存在しないということを,DADは認識しています。このようにDADは,あなたが選択したアプローチを,あなた自身の置かれた状況に適用可能にする“実践的なアジャイル”である,と理解することができます。これを実現するのが,目標主導型の戦略などを通じて提供される,個々の状況を考慮した,ライトウェイトなアドバイスです。

DADは無償である上に,学習や適用も比較的容易です。チームの置かれた状況はそれぞれ違います。ですからDADのライフサイクルには,スクラムをベースとした基本的なアジャイルライフサイクルから,高度なリーンライフサイクル,継続的デリバリのライフサイクル,さらには予備調査的な“リーンスタートアップ”に至るまで,さまざまな選択肢が用意されています。現在すでにスクラムを使用しているのであれば,DADアジャイルライフサイクルとしてはサブセットですが,既にDADを使用していることになります。

InfoQ: 今の説明の中で,フレームワークの重要な特徴として“人優先”ということばがありましたが,フレームワークがこれをどのようにサポートしているのか,説明して頂けますか?

Mark: “人優先”というフレーズは,個々のスキルとモチベーションを備えたチームメンバなくしては,どのようなプロセスも効率的ではあり得ない,ということを意識したものです。このようなDADの哲学は,個々の専門分野や公式な役割に関わらず,業務の遂行に全員が取り組むという,アジャイルの精神とも一致しています。人優先の原理にはさらに,チームが必要とするサポートを提供する,自己組織化を容認する,適切な形式の作業環境を提供する,ステークホルダに対する自らのコミットメントに集中できるようにする,といったコンセプトも含まれています。

スクラムやLeSS,SAFeといった型通りの方法論にありがちな課題を,DADフレームワークは目標主導によって克服します。アジャイルチームに対して,効果的な協力関係を可能にする戦略の採用を支援するためのガイダンスを提供するのです。人優先の目標は,初期チームの形成チームメンバの成長チームの使命達成,そしてチームのプロセスと環境の改善です。もちろんこれら以外にも,初期の適用範囲の検討や技術的戦略の特定,実施可能なソリューションの創出など,技術的な検討事項に対処する方法は多数存在します。目標や推奨される戦略については,私たちの書籍以外に,DADのブログでも詳細に説明しています。

InfoQ: 一般論として,企業がアジャイルをスケールアップするためには,このフレームワークをどのように展開すればよいのでしょう? いくつか例を挙げて頂けますか?

Mark: DADは一般的に思われているような,スケールアップのためだけのものではありません。実際には,小規模,中規模,大規模,どのようなチームにも当てはまるようにデザインされているのです。私たちは先日,DADブログで,DADを使ったスケールアップ戦略に関するガイダンスを多数公開しました。このガイダンスでは,チームのスケールアップをどのように編成するか,どのようなサポートが必要か,大規模な取り組みがこれらのチームの実施すべき活動にどのような影響を与えるか,といったトピックを取り上げています。さらには,地理的に分散したチームの効率化といった問題にも取り組んでいます。

スケールアップ環境でのロールアウトに関して言えば,プロセス決定のフレームワークとしてのDADは,チームが規範に捕われることなくプロセス決定を最適化できるような,適切なライフサイクルを選択する自由度を与えてくれます。ただし,インテグレーションやコミュニケーション戦略といったいくつかのプロセスについては,当然ながら,チーム間で一貫性のあるものにする必要があります。

InfoQ: 頻繁で迅速なデリバリを要するソフトウェア開発についてはどうでしょうか? 継続的デリバリやDevOpsといったコンセプトに対して,DADフレームワークはどのようなサポートができるのでしょう?

Mark: 継続的デリバリは,DADのライフサイクルのひとつです。最も一般的に使われているのは,基本的なアジャイル(スクラムベースの)ライフサイクルだと言えますが,私たちとしては,可能ならば,継続的デリバリのアプローチへと展開することを推奨しています。

DevOpsには,DADは当初から取り組んできました。DADでは“ステークホルダ”を単なるユーザではなく,製造とサポートを含む一次的な役割として認識しています。DADでは,これらステークホルダとの共同作業を,ライフサイクル全体において必要なものだと説明しています。それによって,ステークホルダへのソリューションの移行と,実運用でのメンテナンスでの問題を最小限にできるからです。このような理由から,DADでは,重要なリリースにおいては,移行フェーズの設定が有効であると考えています。継続的デリバリをライフサイクルとして使用するチームでは,移行作業は完全に自動化されていることが多いので,移行フェーズの必要性が不明確になることも少なくありません。

InfoQ: DADフレームワークとSAFe(Scaled Agile Framework)の間には,どのような関係があるのでしょう?

Mark: よく聞かれる質問です。DADとSAFeは実際に違いますし,補完的な関係でさえあります。SAFeは,大規模なアジャイルの取り組みに挑戦するためのパターンだと考えられます。SAFeのパターンを使うためには,数多くのプロセスが定められていきます。それを規範的だと解釈する人もいるかも知れません。

それに対してDADは,スケールアップのための戦略を数多く提供します。極めて大規模な活動ならば,意思決定の一部を省略できるSAFeの方が,成功するチャンスを増やしてくれるかも知れません。しかしながら,私たちの経験からいえば,SAFeの推奨する本格的な構造的アプローチを必要とするほど,大規模な取り組みというのはめったにありません。

組織あるいはチームの状況を幅広く扱うためのフレキシビリティを理由に,SAFeではなくDADを選択したという企業の例を,私たちは数多く見ています。

InfoQ: この何年間で,DADフレームワークは発展してきたのでしょうか?最近の開発や今後の拡張の中で,読者に知っておいてほしいというものは何かありますか?

Mark: もちろんです。 ScotがIBMで最初に導入した時代から見れば,DADフレームワークは大きく成長しました。ただしIBMは,今はもうDADの改良には関わっていません。現在はDAC(Disciplined Agile Consortium)の管理下にあります。DACは,DADフレームワークの継続的な改良,対応するコースウェアの更新,DADの認証プログラムといった活動を行っています。

スケーリングをさらに詳細に取り上げたガイダンスを,新たに提供できたことについて,私たちはとても嬉しく思っています。素材のいくつかはすでにリリース済みで,DADブログを通じて提供されています。その中のいくつかについては,1月22日にブリュッセルで行った基調講演の中でも紹介しています。

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