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組織におけるソーシャルキャピタルの可能性

原文(投稿日:2015/03/11)へのリンク

“組織構築の100年とHRM(Human Resource Management)の50年を経て,職業の未来は今,組織のソーシャルキャピタル(Social Capital)に対する関与と展開のあり方の習得に掛かっている。” – Antwerp Management Schoolの研究ディレクタであるBart Cambré氏のことばだ。No Pants Festival 2015で氏は,組織のソーシャルキャピタルが持つ可能性の解放について,講演を行った。

InfoQはCambré氏に,ソーシャルキャピタルが組織にとってなぜ重要なのか,アジャイルチームのコラボレーションをどのように支援するのか,組織のアジリティ向上にどのように寄与するのかなどをインタビューした。

InfoQ: ソーシャルキャピタルとは何か,説明して頂けますか?

Cambré: “ソーシャルキャピタルとは,個人ないしグループに対して示す善意である。その根源は行為者の社会的関係の構造と内容にあり,行為者に対して与えられる情報や影響力,結束力からのフローに影響を及ぼす。”(Adler & Kwon, 2002)

ここで重要なのは,ソーシャルキャピタルが関係の特性であることを理解する点です。ネットワークを通じた可搬性のあるリソース,それがソーシャルキャピタルなのです。ここで言うリソースとは,財務的,文化的,あるいは知的な資本(キャピタル)へのアクセス,人々や知識,システムないしツールへのアクセスのことです。

InfoQ: 組織にとってソーシャルキャピタルが重要なのは,なぜだと思いますか? なぜそれに,時間や資金を投資しなければならないのでしょう?

Cambré: ソーシャルキャピタルは組織の成功に直結しています。品質,知識,イノベーション,柔軟性といったものは,もはやひとつの組織で実現できるものではありません。いずれも複数の組織に属するものなのです。従ってこれらの組織は,ネットワーク上でコラボレートすることによって,自分たちだけでは達成できない成果を上げる必要があります。今日では,リソースはグローバルな存在です。製品開発やサービス提供に必要なリソースを単一で保持している組織は存在しません。組織はコラボレートしなければならないのです。関係性(例:アライアンス)を作り出したり購入したりすることはできませんが,共同ソーシングの観点から,単独では為し得ないような目標に向けて共同作業を行うことは可能です。ユーザがさまざまな方法で製品を購入可能なツールを,ICT企業やサービスプロバイダとの協力を得ながら開発するSI企業などは,まさにこの例でしょう。

InfoQ: 成功は他者との関係に依存する社会的なものだ,という話がありましたが,その例を挙げて頂けますか?

Cambré: 成功とは個人的なものだというのは,現代社会に蔓延するフィクションです。調査結果によれば,仕事を見つける,昇進する,ベンチャキャピタルとの関係を強化する,マーケティングを行う,さらには健康や教育,才能の顕在化といったことでさえも,あなたのソーシャルキャピタルに直接結び付いているのです。そのような調査の例として,Granovetter(1973)を参照して頂きたいと思います。仕事を見つけるというのは,ソーシャルキャピタルを通じた作業であることを説明した,最初期の書籍のひとつです。Wayne Baker氏による面白くて読みやすい書籍 “Achieving success through social capital”にも,素晴らしいサンプルが掲載されています。

InfoQ: アジャイルソフトウェア開発では,チーム全体が集中して作業しますが,このようなコラボレーションに対して,ソーシャルキャピタルはどのようなサポートができると思いますか?

Cambré: 実現手段であり,障害でもあります。人と人との結び付きを容易にしてくれるのは明らかですが,ソーシャルキャピタルがこのようなコミュニケーションやコラボレーションを可能にすることによって,必ずしも望ましい結果を得られる訳ではありません。ソーシャルキャピタルのための“ハードワーク”が必要なのです。自分のネットワークを管理しなければなりません。人との関係を設定し,管理し,維持し,(必要ならば)終了することが必要です。つまりネットワークには,積極的な管理が必要なのです。

しかもコネクションは,数が多ければよいというものではありません。ソーシャルキャピタルは,ネットワーク内の人々/チームの数とはリンクしていないのです。(FacebookやLinked-inのように)数ではなく,問題なのはネットワークの質です。リソースの追加,新たな知識となるコネクションが重要です。人間である私たちに管理できるコネクションの数には限りがあります。

InfoQ: アジャイルチームがユーザやマネージャ,営業部門などのステークホルダと効果的な作業を行う上で,ソーシャルキャピタルをどのように活用することができるか,何か提案はありますか?

Cambré: すべての参画者が個々では達成することのできない,一緒に活動することで初めて達成可能なことに集中してください。そして,違いに注目してください。イノベーションは不均一性の成果であって,均質性からは決して生まれないからです。ただし,差別化には統合が必要であるということを忘れてはなりません。それによってネットワークを管理し,有効活用することができるのです。

InfoQ: ソーシャルキャピタルは,組織のアジリティを向上できるのでしょうか? できるとすれば,どのようにでしょう?

Cambré: はい,ソーシャルキャピタルによって非常に限定された活動に意識を集中できる一方で,柔軟で絶えず変化し,進化を続けるネットワークを通じて,適用範囲の拡大が可能になります。N=1で作業する,すなわち,すべてのニーズを満足する標準的なソリューションではなく,特定のニーズに対するソリューション提供が可能になることによって,アジリティを向上してくれるのです。

例えば - 私たちは犯罪防止を目的に,オランダの“安全の家”のネットワークを調査しました。同じ質問や状況(虐待を受けた女性による,など)はありません。このネットワークからはN=1,すなわち,すべてが特定のケースに対応するソリューションを見出すことが可能です。これは直感に反しています。いくつもの組織が共同作業を行う(ソーシャルサービス,警察,政府,医療などのように)のですから,アジャイル性は低いと思うかも知れませんが,実はその逆です。真の答は,状況毎に違うのです。

私たちは現在,これと同じ視点から,フラマンの医療を調査しています。各組織(wit-geel kruis,huisarts,専門家,ziekenhuis)はネットワークとして協力しておらず,そのため,患者のケアは次善の策に留まっています。これらの機関とネットワークを形成することでケアが改善され,結果として,より効果的なヘルスケアと患者の満足が得られるでしょう。

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