世界は変わった。それゆえ、命令制御型の企業は変化し新しい組織モデルに適用しなければならない、とNiels Pflaeging氏はいう。氏が立ち上げたThe BetaCodex Networkは今の市場に合う組織の"ベータ"モデルの理解を促進するための研究とオープンイノベーションを応用する。企業のアジャイル導入を支援する、組織変革関連のフォーラムを開催し、研究論文や動画、書籍などを提供する。
InfoQは、氏にインタビューし、The BetaCodex Networkのミッションについて、新しい組織モデルの調査について、アジャイルに適合する組織的アプローチについて、話を聞いた。
InfoQ: The BetaCodex Networkについて簡単に教えてください。
Pflaeging: 2007年初頭に設立しました。ミッションは企業が優れた競争優位を維持するために組織モデルを変革することを支援します。命令制御型、つまり"アルファ"モデルから"ベータ"モデルと呼ばれる組織モデルにします。
オープンイノベーションや研究、対話を通じて、組織変革をアーカイブするための、そして、さらには、ベータモデル自体の理解を深めるための、もっとも重要なプラットフォームになりたいと思っています。
InfoQ: 以前は、Beyond Budgeting Transformation Networkという名前でしたね。なぜ変えたのですか。
Pflaeging:以前の名前は、のちに脱退することになるシンクタンクのことを考えてつけました。Beyond Budgeting Round Tableという団体です。この団体が脱予算の研究とオリジナルな動きを始めたのです。1998年から2002年の間、12の原則を使って脱予算モデルを開発することに注力し、このモデルの先進的な事例にケーススタディアプローチで研究しました。私は、2003年にこの団体のディレクターに就任しました。その時は、ディレクターの一部は、さらに進んで古いモデルから、その時私たちがかなり明確に明らかにしていた新しいモデルへの組織的な変革を研究、支援したいと考えていました。単に知識を構築するだけでなく、この新しいモデルを大きく広めたいと思っていたのです。しかし、既存のBBRTシンクタンクを続け、ファイナンスマネジメントコミュニティやCFOを支援したいというグループもいました。
2007年、私たちは、この知識時代に絶えず変わり続けている先進的な企業を表すメタファを探していました。そして、脱予算のパイオニアであるGoogleが使っていた"永遠のベータ"という概念がイメージにあうと考えました。私たちは、この概念と、組織化のアルファモデルとベータモデルはふたつの対極にあるガバナンス原則に根ざしているという知見を合成しました。このふたつの概念が生まれ、私たちは脱予算という言葉から離れるときが来たと考えました。
アルファとベータ
InfoQ: BetaCodex Networkが行った、または、現在行っている研究について詳しく教えてください。
Pflaeging: 私たちが取り組んでいることは他の研究者や動きとは違っています。これはあと知恵ですが、私たちは、単に、優れた組織的リーダーシップや優れた組織的モデルについて議論するのは避けています。また、単に変革の論理的根拠を説明するだけにならないようにしてきました。BBRTでさんざんやってきたことだからです。その代わり、最終的にはベータが標準的なモデルになるという信念から始めました。このモデルへの理解は未だに一般的ではないのですが。
BetaCodexのホワイトペーパーの中には、変革の方法、変革のケース、行動が結果を伴うようにする方法など、BBRTの用語や考え方に則ったものもあります。また、ホワイトペーパーと本で変革のケーススタディも紹介しています。そして、組織開発、組織構造の課題に何度も取り組み、Cell Structure Design、Double Helix Transformation Frameworkといったペーパーに成果を反映しています。また、リーダーシップについての研究は幅広く受容されてたいと考えました。その結果、Organize for ComplexityやHeroes of Leadershipといった人気のペーパーが生まれました。
すべての人、あらゆる場所に開かれた組織的イノベーションを促進したいと考えています。なので、知見と出版は直接的につながっています。裏も表もありません。すべての人が方法や研究に貢献できるようにしたいと考えています。いくつかのケースでこの考えはうまくいっています。私がSilke Hermann氏と考えたOrg Physicsという考えやGerhard Wohland氏と考えたDynamic-Robust Problem-Solvingなどはうまくいった例です。しかし、これももっと促進したいのです。異なる運動や知見、多様なメディアを統合したいと思っています。
InfoQ: 企業が"命令制御"型のマネジメントをするのを多く見てきたと思います。アジャイルを導入しようとしているソフトウエア企業でもご覧になっていると思います。このスタイルのマネジメントはどこがおかしいのでしょうか。
Pflaeging: 命令制御という考え自体が間違っているのです。そして、命令制御はマネジメントという社会技術と不可分です。つまり、マネジメントが命令制御なのです。企業の中核にはこの命令制御があり、変革を起こすためには克服しなければなりません。Frederick Taylor氏らが発案したものとしてのマネジメントは考える人と実行する人を明確に分離します。このやり方は産業時代にはうまくいきました。100年前は素晴らしいアイディアだったのです。しかし、世界は変わりました。組織化のアルファ的方法はゾンビ技術になったのです。簡単に言えば、マネジメントは歴史のゴミ箱に属しているのです。ほとんどの人はほとんどの組織が今日属している歴史的次元について理解しつつあります。BetaCodex Networkでは、いくつかのペーパーや公園でこの論理的根拠について詳しく説明しています。この点については、例えば、Stoos Networkでも取り上げられています。
BetaCodexが他と違うのは、組織変革の謎に対する答えはすでにある、と考えている点です。私たちは、古いモデルの誤った考えを知っています。そして、解決策も知っています。それが、"ベータ"モデルなのです。理論、そして、多くの世界中の先進的な企業の実践を知っています。また、組織開発から組織変化まで、変革がどのように作用するのかも理解しています。
命令制御型の企業はベータ型の組織に変革するべきか、変革は可能か、スタートアップはピラミッド型の組織になることを避けられるか。この3つの問いに対する答えを私たちは知っています。答えはyesです。今、私たちは知見や方法論を実践に移さなければなりません。一貫して新しいマインドセットと私たちがすでに知っている答えを適用することで世界をひっくり返す必要があります。
InfoQ:組織についての新しいアプローチの例を教えてください。アジャイルを導入したいと考えている組織に適しているのはなぜでしょうか。
Pflaeging: 私の兄弟にソフトウエアエンジニアがいます。数年前、彼はスクラムマスタのトレーニングを受けたとき、私に、"企業にとってのベータというのは、ソフトウエア開発にとってのスクラムやアジャイルと同じものだということがわかった"と言いました。これは正しいです。アジャイルはプロジェクトのためのものです。ベータは組織全体のためのものです。アジャイルを実践したいなら、BetaCodex全体を受け入れるといいでしょう。
BetaCodexを実践した素晴らしい企業はたくさんあります(下図を見てください)。彼らは皆同じ原則を共有しています。つまり、組織化の新しい方法は本当にひとつだけなのです。ほとんどのアプローチや方法、ツールはBetaCodexと結びついていません。単にアルファ、または、命令制御の拡張なのです。
先進的な企業
InfoQ: BetaCodex Networkは組織変革に注力しているとおっしゃっていましたね。変革はどのように作用するのでしょうか。
Pflaeging: 組織を変革する第一歩を踏み出すのは、それほど難しくありません。もっとも一般的な失敗は他の人に変革を"確信"させなければならないと考えることです。順番が逆なのです。彼らは自分で自分を説得します。そしてそれは、別の選択肢があるということを理解したとき、命令制御の欠点を"見た"とき、そして、代替の方法を信じれるようになったときなのです。もし、アルファの組織に属しているなら、組織モデルに対する反省を促す機会を作成することで、このような知見を得られるようにできます。他の人を説得しようとしないでください。変革への冒険に一緒に旅立つ仲間を探すだけでいいのです。振り返りの会議や最終的な変化を起こしてくれそうな仲間です。
変革の方法についてはたくさん書いてきました。さらに深く勉強したいなら、私たちのペーパーは良い入り口になるでしょう。
InfoQ: BetaCodex Networkには誰でも参加できるのでしょうか。
Pflaeging: もちろん。オープンイノベーションのムーブメントであり、誰にも開かれています。ベータが標準的な組織のモデルになることを望んでいるすべての人々のためのネットワークです。参加することが第一歩です。これはとても簡単です。betacodex.orgに登録すればいいのですから。これでネットワークの会員になれます。そして次の重要な一歩が活動することです。