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ITILとDevOps - その観点の違い

原文(投稿日:2015/06/25)へのリンク

ITILとDevOpsを比較した議論は珍しいものではない。このテーマにはさまざまな見地がある。ITILとDevOpsは考え方が異なるというものがあれば,適合性があるというものもある。この2つは異なるものだが,IT分野においてそれぞれの役割を持っている,という意見もあるのだ。Open Group IT4IT Forumでアジャイルワークチームのリーダを務めるCharles Betz氏は,“ITビジネスを管理する,ベンダニュートラルなリファレンスアーキテクチャ”の提供を目的とした先日の記事で,この2つには基本的な原則の対立がある,と論じている。フェーズ分割されたワークフローから抜けられていないITILに対して,DevOpsは仕掛管理や管理キュー,小バッチ管理といったリーン製品管理の教義を採用しているというのだ。

Betz氏と,同じくITILに懐疑的なJeff Sussna氏は,ともにITILがITコミュニティに対して,“サービス中心,アウトサイド・イン,顧客中心思考の促進”を通じて多大な功績をした点は認めている。しかし彼らは,ITプロセスをビジネスニーズに継続的に整合させようという,“継続的サービス改善”を巡る議論が,ITIL V3で起きたにも関わらず,ITILは相変わらずフェーズステップ的思考に留まっている,と強く主張する。Betz氏は言う。

“反復”あるいは“フィードバック”に関する言及ひとつに対して,“計画”ないし“立案”ということばが10回使われているのです。特に注目するべきなのは,サービス戦略の中での数回を除けば,“試み(experiment)”ということばが,他の場所ではまったく現れないという点です。

Sussna氏はITIL V3について,

V3ではサービス戦略や設計,移行,運用で構成されるフェーズセットの最後に継続的サービス改善を配置しています。このようなウォーターフォール的アプローチを見て,私は少々ショックを受けました。

Betz氏はITILを,“戦略,開発,運用の間で綿密に計画された作業の大規模バッチ”というITパイプラインについて述べたものだ,と評している。また,ITILは基本的に,主要な問題解決メカニズムとしてのプロセスと,計画と資料作成を通じたリスク緩和を信奉しているのだ,とも述べている。これらの基本的概念の説明として,ITILの大部分は10年以上前に書かれたものである点を氏は指摘する。従ってITILは時代遅れである,と言うのだ。

ITILは,実行とフィードバック,フローを中心とした社会技術的システムとして,ITデリバリの基本モデルの改善を求めているのです。

それに対してGene Kim氏は,ITIL/ITSMとDevOpsは極めて親和性が高い,と述べている

ITILとITSMは依然として,IT運用を支えるビジネスプロセスとしては最高の体系です。実際にそれらは,IT運用がDevOpsスタイルのワークストリームをサポートする上で必要な機能の多くを取り上げています。

そして,

さらに重要なことは,ITSM実践者たちがDevOpsの取り組みを支援し,ビジネス価値を創造する能力を独自に備えている,という点です。

そしてKim氏は,ITIL/ITSMの実践者がビジネスバリューを提供している例をいくつか紹介する。インフラストラクチャ自動化プロジェクトでは,既存の“リリース管理準備チェックリスト,セキュリティ強化チェックリストなど”への,自動ビルドプロセスの統合を実現している。また,ITILで頻繁に使われる用語の“標準的変更(Standard Changes)”は,頻繁で文書化された,リスクの低い,事前承認された変更を表している。ITSMを実践することで,この“標準的変更”を,実運用システムへの自動デプロイに組み込むことが可能なのだ。

Rob England氏はBetz, Sussna,Kim各氏とは意見を異にする。ITILとDevOpsは正反対ではあるが,どちらも同じIT組織の中で独自の位置を確保している,と氏は言う。氏は,バイモーダルモデルとペース層モデルによるマルチスピードITを提唱する,Gartner氏から受けたインスピレーションについて説明している。

  • 保守型(Conservative): 従来型すなわちウォーターフォール型の変更管理と運用。
  • 敏捷型(Nimble): DevOpsあるいはその亜種

ビジネスはいずれかのアプローチを選択しなければならない,と England氏は言う。一部のビジネスニーズやそれをサポートするアプリケーションには,イノベーションや変革のスピードを必要とするものがある。それらには敏捷型アプローチが必要だ。別のビジネスニーズは安定性が必要で,リスクは極めて低い。それらには保守型アプローチが適当だろう。

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