Agile 2016カンファレンスでMike Cottmeyer氏は,大規模なアジャイル移行の進め方に注目したプレゼンテーションを行なった。その中で氏が特に論じたのは,アジャイル移行を幹部に対してどのように説明するか,移行をどのように評価するのか,幹部が反応するような考え方をいかに確立するか,といった点だ。
氏はまず,現在の企業幹部の考え方について,氏の見解を発表した。氏が言うには,5年前のアジャイル移行は,幹部の関心を得るためのものだった。現在の目標は違う - アジャイル移行とそのアクティビティを現実のビジネス成果にいかに結び付けるか,その方法が求められているのだ。
移行開始の共通アプローチとして,氏は次の3つを掲げている。
- システム主導型: 組織の作業と価値ストリームの構造を変える。価値とフローファーストを重視したクロスファンクショナルなチームを編成することで,プラクティスと文化がそれに続く。
- 文化主導型: まずハートとマインドをまず変えて,システムとプラクティスがそれに続く。
- プラクティス主導型: 方法論,ツールセット,あるいはフレームワークを変えて,システムと文化がそれに続く。
3つはいずれも重要だが,氏が勧めるのはシステム主導型の方法だ。
優秀なシステムとは,氏によれば,まずは価値を中心とした,意図の明確なバックログだ。ほとんどの失敗は管理の不十分なバックログに関連している,と氏は指摘する。システムに関する第2部では,価値を構成する要素やフェーズに代わる,価値の提供によるチーム構成が紹介された。第3部分では,ゼロないし最小の欠陥と技術的負債で提供されるソフトウェアの開発が中心的に取り上げられた。
大規模な移行で重要なのは,チームの編成方法を指導することだ。相互依存性を最小限に抑えつつ,確かな価値をより多く創造し,ビジネス上のリーダに提供することが求められる。
移行の障害となるものはたくさんある。氏はチームのマトリックス化,テーマの専門家に対するアクセスの制限,チーム間での要件の共有,過大なプロセス作業,そして技術的負債をあげた。
文化主導型のアプローチとして氏が説明したのは,まずハートとマインドを変えることであり,システムがそれに続く。可能だが,管理体系を変えるのは非常に難しい。
プラクティス主導型では方法論が必要だ,と氏は説明する。ツールセットやフレームワークにシステムや文化を変える効果はなく,結果として成果をあげることはできない。
大規模なアジャイル移行を進める方法として,氏は10の手順を打ち出した。
- 組織横断的で権限を持った移行チームの構築
- 完了時点におけるビジョンの定義
- ビジネス上の成果(“この部署はこの時点で,この成果をあげる”という定義)を含んだ移行ロードマップの設定
- 90日間計画の継続的な設定
- 30日ごとにチェックポイントを実施して90日計画を評価,必要ならば更新する
- 活動と成果,実現を目指す変化を常に結び付ける(“最終目標はこれらxチームがxyzを実施し,サイクルタイムを全体でx削減することによる,機能のより早い市場提供の実現である”)
- ビジネス上の目標と経済的動機に成果を結び付ける
- フィードバックの組み込み
- コミュニケーションの管理
- 関係者全員の安全性の確保 – WIIFM(What’s In It For Me / 自分にとって何のメリットがあるのか?),チームのメンバが成長し,失敗し,脆弱であることの安全性を保証
結論として氏は,アジャイルを採用するということは,特に大規模な組織ではシステム的な問題だ,とする。そのシステムがチーム形成のあり方や,作業の方法を決定する。ここでの価値はチームの活動であり,開発されるソフトウェアだ。変化もまた計画し,測定し,コントロールすることができるが,ビジネスリーダに重要なものに基づいて測定する必要がある。
ゲストエディタのAngela Wick氏はアジャイルコーチでトレーナであり,BA-Squared LLCの創業者でCEOを務める。同社はアジャイルのトレーニングとコンサルティングを通じて,企業の要求プラクティスの現代化を支援している。氏は従来型,アジャイル,およびハイブリッドなチームを対象に,意図した価値を組織に提供できる,適切なソリューションを構築する上で必要なスキル開発を支援している。
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