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Agile 2016: Steve Denning氏が大規模組織におけるアジャイルとアジャイルのリーダシップを語る

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原文(投稿日:2016/08/15)へのリンク

先日のAgile 2016カンファレンスで,リーダシップの専門家で著作者のSteve Denning氏がリーダ対象のセッションを行なった。大規模組織におけるアジャイルとのリーダシップに関する話題を中心に,フィッシュボール(fishbowl/金魚鉢)スタイルで行なわれたそのディスカッションの中で氏は,“リーダの参画 — マネジメントにおけるアジャイルのマインドシフト”,“アジャイル導入時の課題”,“グローバル経済におけるアジャイル”という3つのトピックを取り上げた。

このフィッシュボールスタイルでは,部屋の中央に配置された小さな壇を囲んで,座席が円形に配置された。Denning氏がステージ上の席に着き,他に5つの座席が用意された。参加者は自由に自席を離れて,ステージに上って質問することができた。質問が終わって回答を受けると,自分の席に戻った。

75分間にわたるセッションの中でDenning氏は,3つのテーマを中心とした18のトピックと質問について議論した。

1) リーダの参画 — マネジメントにおけるアジャイルのマインドシフト

このテーマでは,株主価値と顧客価値を高めていく上でリーダはどのような行動を取るべきか,という点について議論された。2つの価値に対して,異なる考え方,異なる行動で対応することが課題だ。

考え方を変えること — 株主よりも顧客に対してより多くの価値を提供する,という考え方にシフトすることだ,と氏は説明する。株主満足が短期的な視野であるのに対して,顧客満足は長期的な視野なのだ。さらにリーダは,チームに対する作業指示という考え方から,会話と継続的改善の考え方に移行することも必要だ。

この概念を即座に理解できるリーダから理解できないリーダまで,さまざまなタイプのリーダがいる,と氏は言う。最も効果的な方法は,理解できないリーダとできるリーダとを結び付けることだ。

氏が提案するもうひとつの方法は,ストーリテリング(storytelling)というテクニックである。適切なストーリと立場を用いたストーリテリングはデータやグラフよりも雄弁だ,と氏は提案する。ストーリはアジャイルに関するものでなくてもよいが,聞き手が自分自身の話として想像できるもの,苦痛や成功が聞き手の共感を得られるものであることが必要だ。ストーリはハッピーエンドでなければならないが,注意を引くためにネガティブな部分があってもよい,と氏は説明する。ストーリを通じて変革の機運を高めるとともに,聞き手が自身のビジョンを埋められるように,詳細な部分は少なくしておくとよい。ストーリを語ることで,“ああ,私にもできるかも知れない!”と思わせるのだ。そうすれば彼らは,自ら行動計画を立ててくれるだろう。

2) アジャイル導入時の課題

氏はLearning Consortiumでの活動成果に基づいて,アジャイルの考え方を持たない組織が苦労する部分について言及した。アジャイル移行によるメリットには劇的なものがある。どのようなツールを使うかは問題ではない。アジャイルは選択肢ではなく,必然なのだ。

合併時のアジャイル採用

合併時にいずれかがアジャイルである場合は,組織全体がアジャイルになるか,組織がアジャイルを押しつぶすかのどちらかだ,とDenning氏は説明する。これ以外の結末はあり得ない。組織にアジャイルを普及させる方向に進みたいのであれば,連携関係の構築とストーリの伝承,この2つに注力することだ。

アジャイル採用をめぐる政略

次にDenning氏は,アジャイルに対する社内政治的な抵抗要因について説明した。アジャイルはある面において,マネジメントに対する脅威となる。その一方で,市場のアジャイル化はもはや選択肢ではなく,必然なのだ。

端的に言って従来的なマネジメントでは,この市場の変化という新世界に対応できないのだ,と主張する氏は,その根拠として,リーダにその必要性の理解を求めたハーバード・ビジネスレビューの最近の記事を引用している。“この戦いに勝たなくてはなりません - 市場がそれを求めています。敗北する場面もあるでしょうが,戦いには勝つのです。”

3) アジャイルとグローバル経済

アジャイルマニフェストを作り上げた17人が想定していたのは小規模なソフトウェア開発チームだった,とDenning氏は説明する。これは昔の話だ。我々はこの15年間にアジャイルについて学んできた事実と,それが意味するものを受け入れなくてはならない。そのコンセンサスの多くは2001年以降に生まれたものだ,と氏は指摘する。

我々は真のパラダイムシフトを経験した。2001年当時の我々は,転換がどのようなものになるか,この17人に問うことはできなかった。その後15年間を経ることによって,それは明らかになったのだ。受け入れられたアイデアもあり,受け入れられなかったアイデアもある。

アジャイルが思想として,より広く受け入れられることを氏は願っている。それにはアジャイルマニフェストの第1項が非常に重要だ。アジャイルは岐路にある。個人や対話よりもプロセスやツールを重視するようであれば,この活動は失敗に終わるだろう。それは高い目標を持って開始されたすべての活動が,ツールやプロセスに屈するということだ,と氏は指摘する。

トップダウンマネジメントは現在でも幅を利かせているが,新たなパターンが現れていることを氏は指摘した。組織の運営方針が,これまでとは違う方法に向かっているのだ。Wall Streetに目を転じると,四半期決算を提供している企業の中で,Amazonのように四半期決算を発表せず,配当の予定も持たない企業がいくつもある。これは企業経営が,20世紀のトップダウンスタイルとは根本的に異なる管理の観点を指向していることを示すものだ。

今日の教育システムを論じるとき,氏は,現在ある仕事の大部分が10年後には存在しないだろう,と指摘する。現行の教育システムは相変わらず,仕事を目的として学生を訓練しているが,彼らが卒業する頃,その仕事は存在しないだろう。“学習の方法”と業務スキル,“質問の方法”と暗記の対比を,我々はもっと重視する必要がある。それは教育の根本的転換でもあるのだ。

 

ゲストエディタのAngela Wick氏はアジャイルコーチでトレーナであり,BA-Squared LLCの創業者でCEOを務める。同社はアジャイルのトレーニングとコンサルティングを通じて,企業の要求プラクティスの現代化を支援している。氏は従来型,アジャイル,およびハイブリッドなチームを対象に,意図した価値を組織に提供できる,適切なソリューションを構築する上で必要なスキル開発を支援している。

 
 

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