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協力を妨げる認知バイアスに対処する方法

原文(投稿日:2016/11/03)へのリンク

人間は生来、誰を信頼するかを即時に判断する。また、小さなグループで協力関係を築く。認知バイアスは協力の邪魔をするが、バイアスがどのように動作するかを理解し、どのアジャイルの実践がバイアス回避に役に立つかを理解することで、より良い人間関係を構築し優れた製品を作ることができるようになる。このように主張するのはLinda Rising氏だ。

Linda Rising氏は世界的に知られている講演者であり著者だ。氏はGOTO Berlin 2016で開会の基調講演で登壇した。InfoQはこのカンファレンスをインタビューや記事でカバーする予定だ。

デイリースタンドアップや振り返りのようなアジャイルの実践は人々の協力を促進する。"アジャイルのマインドセット"を持つことでバイアスとステレオタイプを克服することができる。氏によれば、アジャイルの本質は一緒に学ぶことであり、それは本当の意味での協力だ。

InfoQはLinda Rising氏にインタビューをして、人間は生来、どのようにして誰が信頼でき誰ができないのかを決めているのか、認知バイアスがどのようにしてアジャイルチームの協力を妨げるのか、アジャイルがどのようにしてステレオタイプやほかのバイアスを対処するのかについて話を聞いた。

InfoQ: GOTO Berlinでは、あなたは、人間が生来、相手を信頼できるかどうかをどのように判断するかについて話しました。この判断の仕組みはどのようなものでしょうか。

Linda Rising: 数千年間、人間は生死を分ける素早い決断に依存していました。これは食べるべきか。あれは蛇か木の棒か。あれは動物か。あの人は敵か味方か。このような重要な意思決定で成功した古代の人間から私たちは生まれました。従って、この素早い意思決定という能力は私たちも引き継いでいます。この能力は無意識です。ますます複雑になっていく環境の中で多くの労力をかけることなく指針を示してくれるという点でこの能力は正しいです。問題はときどきこの意思決定が間違っていることがあるということです。どうしてその意思決定に至ったのかに無自覚なため、取り消すのが難しいのです。実際、私たちは意思決定のときにこのような無意識の根拠を強化するという生来の能力が備わっています。意思決定のための根拠しか見ないという傾向があるのです。無意識の強化は確証バイアスと呼ばれます。

InfoQ: 認知バイアスはどのようにしてアジャイルチームの協力を妨げるのでしょうか。

Rising: 誰かに会ったとき、私たちの無意識はこの新しい人物が好ましいか、知的か、信頼できるかということを瞬時に判断します。自己紹介の最初の数秒ですべての属性が割り当てられるのです。先に述べたように、私たちが一度"考えを決める"とこれを変えるのは本当に難しいです。とりわけ、マネージャや雇用、解雇、昇進の権限を持つ人にとっては容易ではありません。研究によれば、マネージャの意思決定は本当のパフォーマンスがかなり現れる前に決まっています。ある新入社員をダメな人物と判断したら、その後はその判断を指示する証拠だけを見てしまいます。自分の考えを覆すものはみないのです。これは間違いなく協力関係の邪魔になります。

InfoQ: これらのバイアスに対処するためにはどうしたらよいでしょうか。

Rising: 数年前、私は"アジャイルマインドセット"について講演をしました。この講演の基調にはCarol Dweck氏の研究がありました。氏によれば、能力や知性、才能は変わらない(人が持つ生まれながらの特質には何もすることができない)と考えている人のほうが、判断が早く、その判断を強固に維持します。しかし、生まれながらの才能や能力はもちろんありますが、それがどうであれ、努力をすれば私たちは常に改善することができるのです。この"成長"つまり"アジャイルマインドセット"は私たちの素早い意思決定において、大きな違いを生み出します。"アジャイルマインドセット"を持っていれば、他人を判断するときに少しゆっくりになり、判断の維持は少し弱まります。ステレオタイプな見方を弱め、バイアスを減らすための方法としては、これが、私の知っている最高の方法です。

InfoQ: ステレオタイプやバイアスに対処するためにアジャイルはどのように役に立ちますか。

Rising: "アジャイルマインドセット"を持つのはバイアスとステレオタイプを克服する第一歩です。また、私が基調講演で話したように全員参加が必要な小さなチームでプロジェクトに取り組むのも効果があります。ステレオタイプと素早い判断は私たちの生来の特徴ですが、小さなグループで働くのも私たちの生来の特徴なのです。これは進化の観点からも合理的です。私たちは長い間、子供や老人を含む全員の貢献に依存した小さなグループで生活をしてきたということに価値があります。皆が仕事を持ち、それが重要なことだと認識されていました。この依存関係は成熟した尊敬と信頼を可能にします。私たちの行動が受け入れられ可能な範囲での成長が促される環境が究極的に安全な環境です。

アジャイルの実践は協力を促します。デイリースタンドアップは最低1日に1回集まって達成したことや必要なことを共有する機会を生み出します。振り返りは反省と学習を可能にし、成功を生み出しうまくいかなかったことを考慮できるようにします。私は最近、小さな実験という概念をフォーカスしています。振り返りのときに問題を取り上げるのではなく、次のイテレーションで行う小さな実験のアイディアを考えるようにチームを促しています。実験のマインドセットはアジャイルマインドセットと似ています。チームのメンバを学習と改善に導きます。利用者と顧客、テスターやビジネス部門の同僚と一緒に働くことは開発者にこれらの価値ある人たちがどのような貢献をしているのかを知る機会になります。貢献と顔と名前が一致するとき、製品に対して他の人が貢献したことに感謝できるようになります。アジャイルのチームは多様です。研究によれば多様性は創造性やイノベーションだけではなく協力と信頼をもたらします。アジャイルの本質は共に学ぶことです。これが真の協力なのです。

InfoQ: 認知バイアスへの対処の仕方を詳しく学びたい人へのお薦めのリソースを教えてください。

Rising: まずはDaniel KahnemanのThinking Fast and Slowです。次にDan Arielyの書いたものならなんでもよいでしょう。お二人とも書籍や記事だけでなくとても面白いTEDでの講演もしています。Behavioural Insights TeamでのRichard Thalerの仕事もお薦めです。また、私はたくさんのポッドキャストも聞いています。David McRaney(2冊の素晴らしい本を書いています)のYou are Not So SmartやScott Barry KaufmannのThe Psychology Podcastです。認知神経科学の領域への冒険を始めるのにとても役にたちます。

 
 

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