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技術チームにおけるピアフィードバックの試み

原文(投稿日:2016/12/29)へのリンク

フィードバックはチーム内に信頼を築き,個々のスキルの向上と製品の成長を支援する手段として利用できる。Emily Page,Doug Talbot両氏は,Spark the Change London 2016で行なった講演“Building Trust: Developing Peer-to-Peer Feedback in Tech Teams”の中で,Ocado Technologyでピアフィードバックを試行した自分たちの経験について公開した。

InfoQは,Ocado Technologyでオーガナイゼーショナルカタリスト(Organizational Catalyst)を努めるEmily Page氏とのインタビューで,フィードバックにおける価値観の意義,フィードバックにサーベイを使用した自らの経験,フィードバックに必要な信頼性向上のためにできること,フィードバックの熟達と技術,リッチなフィードバックを促進する文化の構築,といった話題について聞いた。

InfoQ: 技術的なチームにとって,フィードバックの重要性とは何でしょう?

Emily Page: まず第1に,信頼が構築できます。信頼の向上なくして,率直かつ建設的なフィードバックを得ることはできません。互いを信頼できるチームは,より効率的かつ建設的であり,問題をよりよい方法で解決することができる,と私たちは信じています。この点に関する私たちの考えは,Lencioni氏の“The Five Dysfunction of a Team (チームの5つの機能障害)”から影響を受けています。第2に私たちは,個人のスキルを伸ばして製品の質を向上させる上で,ピアフィードバック(peer feedback)は最も優れた方法だと考えています。これが素晴らしいのは,自らの役割においてより効率的であるからだけではありません。それよりも重要なのは,習熟度の増加感に伴うモチベーションの向上であり,自身の向上を実感することの素晴らしさであり,さらには信頼の置ける人たちと共に働くことの嬉しさなのです。

InfoQ: Ocado Technologyにおける価値観とは何でしょう,フィードバックを進める上で,それはどのように影響するのでしょう?

Page: 当社が重視しているのは – コラボレーション,クラフトマンシップ,信頼,自律性,そしてリーンファーストです。より優れた,より情報の多いフィードバックを探求する上で,これらはすべて何らかの形で反映されます。 例えば信頼は,私たちが同じ目標に向かって行動していることと,その中で互いを支援できることを確信するために必要なものです。これは具体的には,生じ始めた摩擦に対する開発チームとステークホルダとの率直な会話かも知れませんし,あるいは最近になってサポート問題が増えた事をありのままに捉えるレトロスペクティブかも知れません。(何らかの)フィードバックは,多くの場合において,クラフトマンシップやコラボレーションなど,当社のすべての価値観を改善する鍵なのです。

InfoQ: Spark the Changeの講演では,社員相互のフィードバックと評価を査定に使用したことに関するサーベイが話題になっていましたが,その結果について詳しく説明して頂けますか?

Page: 正直に言うと,結果は今ひとつでした。フィードバックプロセスを開始するにあたっては,公平を期するため,当社の価値観に関する調査(それが発展して,現在使用中の360度フィードバック用ツールになっています)を実施して,査定対象者の同僚たちからデータを収集しました。しかし残念ながら,プロセスの変更に関するコミュニケーションが十分ではなく,参加者の意識を完全に把握することはできませんでした。例えば,純粋に技術的な能力に基づいた特定領域で実績をアピールしてきた人の中には,評価を得る上で関係があると彼らが認識していなかったような行動や価値観について,最後の段階になって我々が彼らの同僚に質問したことを,非常に不公平だと感じた人もいました。その結果として信頼を損ねたり,状況を悪化させた部分もありましたが,それもまた私たちにとって有用なフィードバックだったのです!

InfoQ: フィードバックシステムは人為的に操作される可能性もありますが,それをどのように見つけて,どう対処すればよいと思いますか?

Page: 私たちが学んだのは,まず第1に,操作をしたくなるような外部システムからフィードバックを分離する必要がある,ということです。当社の現行モデルである360度フィードバックが,個人的に有用なフィードバックの提供以外の,給与評定や昇格などにリンクしていないのはこのような理由からです。フィードバックを受ける人(および本人が希望した人)以外は,フィードバックを見ることはできません。不正な操作をする人がいなくなって,率直に互いの成長を支援することに価値を見出せるようになれば,と願っています。

InfoQ: フィードバックには信頼が必要ですが,信頼を高めるためにどのようなことを行なったか,例をあげて頂くことは可能ですか?

Page: 信頼を高めるためにいくつかの試みをしました – 他にもできることがたくさんあったかも知れません!最初に行なったのは,価値とその説明に対するチームのフィードバックを聞き,それに対してアクションすることでした。当社の価値観を皆が同意できるような文章で説明することによって,価値を共同所有するという感覚を構築すべく,多くの努力を払いました。これを行なうため,私たちは,価値に関するワークショップをチームとともに実施しました。これには2つのことが期待できます – “あなたの意見は重要だ。私たちにはすべて発言権があり,これはあなたに課されているものではない”,というメッセージを伝えること。そして,この変革が価値をこれまでよりもずっと身近で,純粋に同意できて,皆がそれに基づいて作業できるようなものになることです。第2には,フィードバックの相互提供は先の長い旅になるため,不安を覚えないような(フォームのチェックボックスをいくつかクリックするような!)小さなことから始めて,(チェックボックスをクリックした理由について語るような)段階的な信頼向上を図るのも悪くはない,という点について強調しました。それに加えて,違う階層レベルとフィードバックのやり取りを行なうこと,“支配者と被支配者”的発想を止めること,マネージャがフィードバックを提供しないで一方的にフィードバックを受け取ったり,あるいはその逆を行なわないこと,なども提案しました。

InfoQ: フィードバックにおける成熟度レベルの違いとは,どのようなものでしょう?

Page: 私たちが経験したことを説明するために,次のようなレベルを定義しました。

  1. フィードバックなし
  2. レトロスペクティブなどを経由したフィードバックの提供
  3. ピアフィードバックや実質的マンツーマンなどの方法による,行動に関するプロフェッショナルなフィードバック
  4. 十分な信頼と社会的つながりを持ち,ピアコーチング – リッチで有用,かつタイムリなフィードバックを提供する,双方向議論の世界

InfoQ: 企業としてのフィードバック能力を向上するには,どのようなことをすればよいのでしょう?

Page: 小さなことから始めてください。奨励し,安心を提供し,何よりも重要なのは実践することです。自らが実践することで,他の人たちの不安が可能な限り少なくなる方法を作り上げてください。

InfoQ: Ocado Technologyでは現在,どのようなフィードバックのテクニックを使っていますか?また,今後についてはどうでしょう?

Page: 社内ではさまざまな方法でフィードバックが利用されていますが,代表的な方法は360度サーベイとマンツーマンの2つです。サーベイは個人の安心感を向上させるように設計されていて,チェックボックスをクリックしたり,コメントを残したりする方法の他,入力フォームを前にして価値に関する議論をする場合もあります。私たちが見る限りでは,このような進行に従って,よりリッチなフィードバックの有用性を認識できているようです。

InfoQ: フィードバックを適用する過程で分かったことは何ですか?

Page: 主として3つのことを学びました。

  1. 長い道程であること
  2. 人は思っている以上にオープンであること
  3. 他のもの(昇格や昇級,レビューなど)との関連性という“ノイズ”を取り払うこと

InfoQ: リッチなフィードバックを促進する文化を構築するために,企業には何ができるのでしょう?

Page: 人々が成長して成功し,フィードバックを声高く賞賛することを実際に確認した上で,彼らの旅立ちに必要なサポートやツールを提供してください。

 
 

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