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ソシオクラシ(Sociocracy)3.0を適用したアジャイルプラクティスの実践

| 作者: Ben Linders フォローする 20 人のフォロワー , 翻訳者 h_yoshida フォローする 1 人のフォロワー 投稿日 2017年2月6日. 推定読書時間: 9 分 |

原文(投稿日:2017/01/05)へのリンク

ソシオクラシ(Sociocracy)3.0はアジャイル組織におけるコラボレーションをサポートし,製品とサービスの継続的改善を支援するオープンなフレームワークである。作業のコーディネートや効率的なミーティング,ガバナンス,組織の構築など,さまざまなアクティビティのパターンを提供する。

ソシオクラシ3.0のパターンは次の7つの原則に基づいている。

  • 経験主義(empiricism)
  • 同意(consent)
  • 等価性(equivalence)
  • 有効性(effectiveness)
  • 説明責任(accountability)
  • 継続的改善(continuous improvement)
  • 透過性(transparency)

ソシオクラシ3.0運動では,ソシオクラシ3.0を学び,実践し,教えるためのリソースを提供している。彼らの目標は,組織がより効率的でレジリエント,かつアジャイルになるために,S3を利用できるようにすることにある。

InfoQはソシオクラシ3.0のJames Priest氏とBernhard Bockerpbrink氏にインタビューして,ソシオクラシ 3.0とは何か,アジャイルとどのような関係があるのか,アジャイルプラクティスを実践する上でソシオクラシ 3.0のパターンをどのように適用できるのか,ソシオクラシ 3.0パターンの次に来るものは何か,などを聞いた。

InfoQ: ソシオクラシ 3.0とは何なのでしょう?

James Priest & Bernhard Bockelbrink: ソシオクラシ 3.0(別名S3)とは,よりアジャイルな組織に成長するためのフレームワークです。このフレームワークは,原則に基づいたパターン定義やガイドライン,柔軟なプロセスのセレクションから構成されています。これらはすべて,共通の目標を達成する人々がコラボレーションする上で,その有効性が実証されています。

S3は,“Sociocratic Circle Organization Method” (SCM, 米国ではDynamic Governance),アジャイルソフトウェア開発,そしてリーン思考の主要な項目を利用するとともに,科学的手法や非暴力コミュニケーション,コアプロトコル,ホラクラシ(Holacracy,SCMのもうひとつの系譜),心理学,コーチング,ファシリテーション技術などからも着想を得ています。

各パターンはモジュール化されながらも互いに補強し合い,共創,作業編成,合意の形成と発展,効果的なミーティング,組織構築,自己開発,組織構造,組織的開発,連携,そして何よりもS3パターンの展開と発展という,組織の多くの面におけるアジャイルな(つまり経験的かつ仮説駆動型な)アプローチを補完します。各パターンは活動のガイドラインを示すと同時に,コラボレーションを奨励することにより,行動の支援と制約の両面の役割を果たします。

S3は目標,自律性,習得といった人間の自然な欲求と,関係性や帰属意識などの基本的欲求を肯定的に捉える,コラボレーションの文化を構築します。

人々に必要なのは,彼らがなぜ協力し合うのかという観点の下において,事実として何が起きているのか,それに対して何をする必要があるのか,という点に注力することです。可能性やあるべき姿を過度に理想化したり,何が起きるかを予測やコントロールしようとするのではなく,それに対応することに全力を注ぐべきなのです。

特に注目すべきなのは,提案の形成と意思決定に関するパターンです。ここで求められるのは,視点と意見に関する多様性の共有であり,その過程における決断と敬意の構築,相互信頼の影響を考慮することです。これらのパターンは新規性(新たなアイデア)の現出や継続性(十分な価値の維持),安全性の確認を促進することで,現時点で保持する知見の範囲において,決定結果を実行に移しても十分に安全であると(少なくとも)思われること,その実行を継続しても十分に安全であることを保証します。

優れた組織とは,創造した価値を必要な場所にフローすると同時に,その価値のフローを維持ないし改善する上で有効であることが示された場合には,容易に変化できる組織である,と私たちは考えています。S3はどちらかというと,堅牢なルールやポリシを備えたシステムの実現よりも,変化する状況に巧みに対応し,自己の責任を確立し,さまざまな事態に巧妙に対処し,効果的であるために必要な合意を目的とした規律のみを求め,必要なものを進展させる一方で不要なものはすべて排除する,そのような人々をサポートするものです。

S3が求めるのは再帰的なプラクティス,すなわち行動に対する行動の反映であり,何が起こり,何を発見し,何を学んだかに基づいた転換と発展と採用の開放性なのです。

InfoQ: ソシオクラシ3.0は,アジャイルとはどのように関連するのでしょう?

Priest & Bockelbrink: アジャイルのフレームワークやメソッドは,そのほとんどがソフトウェア開発やプロジェクト管理に焦点を当てています。管理やガバナンス,組織構造,組織改革といった問題には,まったくと言っていいほど応えてくれません。S3はこのアジャイル思考を,組織のあらゆる場所にもたらします。階層的な権力構造や従来的なプロジェクト管理思想(これらがアジャイルとは相容れないのは明らかです)の制限を受けない,優れた潜在能力を持つアジャイル文化を組織全体に構築するにはどうすればよいのか,アジャイル組織における人材の向上,組織が必要とするリソースの発掘と育成,組織の興隆に効果的に貢献するための理解とスキルとを同時に達成するにはどうすればよいのか – このような興味深い問題の解決を,S3は目標に置いているのです。

InfoQ: アジャイルプラクティスの実践において,ソシオクラシ3.0パターンをどのように適用することができますか?

Priest & Bockelbrink: S3はリーンスタートアップメソッドやスクラム,エクストリームプログラミング,ソフトウェアかんばん(チームレベルとエンタープライズかんばんの両方),SAFe,DAD,LeSS,OpenAgileなど,多くのアジャイルやリーンの方法論を補完するとともに,これらの方法論の適用や,組織の拡大に伴う展開のための手段を提供します。

優先度付バックログや作業の視覚化(通常はスクラムボードやかんばんボード上で),レトロスペクティブの実施など,S3に含まれるパターンのいくつかは,アジャイルを試みる組織には馴染みの深いものであるはずです。そのようなアジャイルチームが次のレベルに到達する上で,多くの場合に有効なのは,合意の形成と発展に関するS3のパターンです。かんばんを導入するチームにおける合意の形成,あるいはスクラムチームでの製品ないしアーキテクチャ決定に使用可能な,同意意思決定(Consent Decision Making)を例にしましょう。アジャイル開発をスケールアップする場合,アーキテクチャ機能や製品判断に関わるチームの開発方針を統一する目的で,デリゲートサークル(Delegate Circle)やサービスサークル(Service Circle)などの構造的パターンが使用されます。これは時として,これらのサークル内で誰がチームの代表者として適任かを決める,役割選択のパターンと組み合わせられることもあります。

Connect Agile Teams to Organizational Hierarchy: A Sociocratic Solution”と題した記事の中では,Pieter van der Meché氏とJutta Eckstein氏が,Sociocraticの2重リンクによって組織におけるボトムアップとトップダウンによる意思決定の一致性が改善される,という点を説明しています。

“通常の”組織階層では,ひとりの人物(マネージャと呼ばれることが多い)が,トップダウンの情報フローを管理する役割を果たしています。これはつまり,そのマネージャが,ひとつ上の管理レベルで行なわれた決定を,彼ないし彼女の率いる部署あるいはチームで実行する責務を負う,という意味でもあります。アジャイルチームならば,これはプロダクトオーナかも知れません (...)

ボトムアップによる情報では,チームが代表を選出します。チームの選任した人であれば,誰でも構いません(スクラムマスタかも知れませんが,そうである必要はありません)。ソシオクラシで違うのは, この代表が自身の正規チームのメンバであるだけでなく,(すべての意思決定の権限を持った)もう1レベル上のグループの正規メンバでもある点です。

これが2重リンクと呼ばれる理由です – 上のレベルにいるのは,常にその下のチームを代表する2人,マネージャと代表者なのです。別の言い方をすれば,すべての階層レベルに,ひとつ下のレベルに対して(いわゆるマネージャとして)任命された人と,ひとつ上のレベルに対して(代表として)任命された人がいる,ということです。

InfoQ: ソシオクラシ3.0が提供するパターンの背景にある考え方は,どのようなものなのでしょう?

Priest & Bockelbrink: パターンは特定の状況や課題に対応するためのテンプレートで,必要に応じてコンテキストに適応させることが可能です(それを行なうための特別なパターンもあります)。S3に現在ある65以上のパターンはすべて,経験主義,同意,等価性,有効性,説明責任,継続的改善,透過性という,7つの原則によって導き出されたものです。

7つの原則と並んで,“Chosen Value”のパターンもあります。これは組織に対して,意思決定や行動において道徳的限度を定義する上で,(本質的あるいは目標として)最も重要な価値の選択を求めるものであり,延いては組織文化の発展を実現させるものです。

S3のパターンベースのアプローチは,良好に機能しているものは継続し,必要ならば変更するという,アジャイル(というより,常識的な)アプローチによる組織的変革を可能にします。難題や好機に直面している人たちにとって,S3からひとつないしいくつかのパターンを取り入れることが,それらに対応する手段となる可能性があるのです。組織の有機的な成長と自身のペースでの変革を可能にするこの方法は,オール・オア・ナッシングな革新的変化を強いるスクラムやホラクラシのような,組織に対して巨大なリスクを負わせる一方で,コンサルタントにとっては偉大なビジネスモデルを実現するようなアプローチとは,まさに対極をなすものなのです!

InfoQ: ソシオクラシ3.0パターンの次に来るものは何でしょうか?

Priest & Bockelbrink: 個々の組織がS3の試みを続ける結果として,必然的により多くのパターンが含まれるようになります。それと同時に,既存パターンもより洗練され,実効性の証明されたさまざまな亜種が生まれるでしょう。その一例が,Gojko Adzic氏のImpact Mappingに着想を得たDriver Mappingパターンです。このパターンは,比較的大規模なプロジェクトやスタートアップに対応するために,プロジェクトの運用およびガバナンスのバックログの識別,配布,優先度設定にS3のパターンを使用していた人々のグループが発見し,進化させたものです。

 
 

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