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Buutzorgの新次元組織を目指すアジャイルの旅

オランダの全国的看護師組織であるBuurtzorgでは、すべてが自己管理(self-managing)のプラクティスで運営されている。完全に自己組織化されたチームと、これら独立したチームをサポートするバックオフィス、という文化が組織全体に浸透しているのだ。ITシステムはアジャイル手法で開発され、チームによる患者への看護提供を支援している。

BuurtzorgのアジャイルコーチであるArd Leferink氏はAgile Consortium Belgium 2017で、Buurtzorgにおけるアジャイルの旅(Agile Journey)について講演を行なった。このカンファレンスに関してはInfoQのQ&Aやサマリ、記事などを通じて、これまでにもお伝えしている。

オランダには、訓練を受けた看護師による医療を自宅で受けられるシステムがある。患者に必要なケアは、一般開業医(GP)と病院の専門家が指示する。このサービスは、看護師が雇用されている地方組織を通じて提供される。

Buurtzorgは2006年、Jos de Blok氏によって始められた。看護師として働いていた氏は、ルールが多過ぎること、看護師の業務内容や方法にマネージャが多くの指示を出し過ぎていることが、看護師が効果的な業務を実践することを妨げている、と感じていた。さらに氏は、医療費が高額である原因もここにあると考えていた。 看護師がよりよい方法でホームケアを実行するにはどうすればよいのか。氏にはビジョンがあった。看護師が自己組織型チームで作業する方法だ。

Buurtzorgは当初、1つのチームからスタートした。チーム内にはさまざまなスキルと役割を持つ人々がいた。そのようなメンバが集まることで、患者が必要とするケアを提供することができる。 Leferink氏はBuurtzorgにコンサルタントとして参画し、チームの立ち上げを支援した。

Buurtzorgのチームは完全に自己組織化されている。患者にケアを提供するための作業を自ら計画し、調査し、実行に移す。チーム独自の教育予算もある。

チームにはそれぞれ携帯電話が用意されている。コールセンタや代表電話といったものはBuurtzorgには存在しない、とLeferink氏は言う。新しいチームが患者のいる地域に基づいてGPを訪問し、何か助けられることがあればチームに電話するように患者に伝えるのだ。これはチームがGPとの関係を構築するための第一歩になる。

増員して12人以上になったチームは分割される。他のチームメンバとの共同作業に慣れてくると、これが難しくなる場合もある、とLeferink氏は述べている。それでも最終的には対処可能だ。

Buurtzorgは現在、900のチームに9,000人の従業員を擁している。彼らには従業員50人のバックオフィスがあり、チームを支える20人のコーチがいる。

独立したチームをバックオフィスがサポートする、という文化を持つことは重要だ。そういった文化をただ作り上げるだけではなく、維持することがさらに重要であり、必ずしも容易ではないのだ、とLeferink氏は述べている。

Buurtzorgが立ち上がった頃、彼らのニーズに合うITは存在しなかった。そのため彼らは、看護師が自分たちの仕事を整理し、患者のために行なった仕事に報いることのできるクラウドアプリケーションを開発することを決定した。

最初のBuurtzorg看護師チームがひとりのソフトウェアエンジニアと協力して、シス=テムを開発した。そのエンジニアはスクラム的な方法で作業をしたが、Leferink氏によると、1・週間のスプリントではなく、1週間に6回のスプリントを行なっていた。エンジニアはチームに耳を傾け、必要なものを実装した。システムがまだ持っていないものが必要になると、看護師がエンジニアを呼ぶ。エンジニアはそれを開発した上で、それがニーズを満たしているか看護師と共に確認する、という手順だ。

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発足当初、ビジネスは非常に速く拡大した。成長を促進するためにBuurtorgでは、アジャイルIT開発とアジャイルビジネス管理からなる2重のアジャイルループを構成していた。ITはチームの作業をサポートしなければならない。Leferink氏はBuurtzorgのITシステムについて、“Buurtzorgのチームがそれを気に入らなければ、それは十分ではないのです”、と述べている。

InfoQは以前、 Frederic Laloux氏に“組織の刷新(Reinventing Organizations)”に関してインタビューしたことがある。その中で氏は、進化的な目的を持った新次元(Teal)組織としてのBuurtzorgが、どのように運営されているのかを説明した。

Buurtzorgは、完全に自己管理的な方法による運営で大きな成功を収めた、オランダの在宅ケア組織です。(...) 明確な目的意識を持っていますが、戦略資料や3年計画や1年計画といったものはありません。ちょうど生きたシステムのように、さまざまな場所でイノベーションが発生し続けます。それが成功を収めたと認められれば、システム全体に拡散するのです。

戦略会議など組織的な会議は必要ないので、そのような会議は開催されていない、とLeferink氏は言う。看護師とバックオフィスの従業員は、組織内で起きていることを24時間いつでも確認できる。 またBuurtzorgでは当初から、ソーシャルコミュニケーションを仕事の手段として取り入れており、看護師が質問し、お互いに学ぶことができるような、クローズドなオンラインコミュニティを確立していた。

コンサルタントとして他の組織とも仕事をしているLeferink氏は、適切な人材がいないために、自分たちの組織では自己組織化はうまく行かない、という声をしばしば耳にする。このような場合、氏は、イノベータとアーリーアダプタによって自己組織化を始めることを提案している。氏の経験から、他の人たちはそれに続くはずだが、最終的に問題になるかも知れないのは、続こうとしない人たちだ。

マネージャは時として、自己組織化した組織を管理可能だと考えることがある。だがそれは無理だ、とLeferink氏は言う。可能なのは奉仕すること、指導すること、複雑性を取り除くことだけだ。命令するマネージャは委譲を求めるチームとは相容れない。組織の文化がソーシャルでないならば努力が必要だ、とLeferink氏は述べている。文化の変革をスケジュールすることはできない。さらに、最も難しい部分であるバックオフィスを再構築することも不可能だ。必要最小限のバックオフィスから始めるべきだ、と氏はアドバイスしている。

自己組織化は無統制ではない、機能させるにはフレームワークが必要だ。論より証拠。やってみて自分たちに合っているかを確かめよう、というのがLeferink氏の提案である。

 
 

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