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Michael Ong氏に聞く - サイクリングとアジャイル、UXの価値

原文(投稿日:2017/06/16)へのリンク

Michael Ong氏はシンガポールに拠点を置く、製品およびユーザエクスペリエンスの専門家だ。氏はInfoQに、サイクリングとアジャイルに掛ける氏の情熱とその補完的な関係、ユーザエクスペリエンス設計における優れたリスニングスキルの重要性、シンガポールとインドネシアのハイテク産業の状況、Agile Indonesiaカンファレンスで実施予定の講演などについて話してくれた。

InfoQ: Michaelさん、簡単な自己紹介をお願いできますか?

Michael Ongといいます。Collab Folksでプロダクトチームのコーチをしています。7歳の時にプログラミングを初めて、レゴで仮想世界を作ったりしながら育ちました。コンピュータエンジニアリングの経歴を持っていて、自分自身については、常に学び、問題解決を楽しむタイプだと思っています。

さまざまな業界で仕事をしてきました。現在は、企業と協力しながら学習組織のデザインを支援しています。旅行の多い職業なので、訪問した国をあちこち見て回るようにしています。2018年の目標は、トランスアメリカ・トレイルを(東海岸から西海岸まで)走ることです。

InfoQ: サイクリングとアジャイルには何か関係があるのでしょうか?あなたはいつも、アジャイルの普及活動とサイクリングのどちらかをしているようですから、何かあるはずだと思うのですが。

私の場合、チームのアジリティをコーチする仕事を始めたほぼ同じ時期に、サイクリングを再開しました。理由をいろいろ考えて、それでもあまりよい答が思い浮かばなかったのですが、要するに自転車に乗っている間は、ディジタル生活のノイズから解放される時間を楽しめるからです。このことがいつも、日常の仕事を振り返る時間を与えてくれると同時に、それまで持っていたよりもよいアイデアを生み出してくれるのです!(最近読み終えたBen Irvine氏の“Einstein & the Art of Mindful Cycling — Achieving Balance in the Modern World”という本が、これを最もうまく説明していると思います。)

アジャイルとサイクリング(通常は同時には行ないませんが)について、それがうまく行く理由を説明するためのマッピングを示す必要があるならば、

アジャイルのアクティビティ(あるいはそのプラクティス)の実践は、サイクリングで言えば、レジャーやツーリング、マウンテンバイク、ロードバイクといったアクティビティにマップできます。特定のプラクティス/アクティビティに必要以上に執着する人がいることや、初歩の段階では楽しめないという点が共通しているからです。

アジャイルになる(考え方を身に付ける)行為は、天候や時間に関わらず、外に出てサイクリングに行く行為にマップできます。この場合には、自転車に乗っている限り、サイクリングのアクティビティを楽しむことが可能になります。

私は多くの会話を通じて、サイクリングと同じように、アジャイルという言葉そのものを多くの人たちが誤解しているのではないか、と思うようになりました。アジャイルとスピード、サイクリングとレースを同一視する考え方も一部にはありますが、もっと即時性のあるメリットについては、人々がそれを認めるまでは、認知されたり、あるいは十分に理解されることはありません。私がこれほどサイクリングを好きな理由について説明する場合には、技術的でない側面の活動から見るのがよさそうです。

infoQ: どうすればあなたのようなよいトレーナ、よいコーチになれるのでしょうか?

最初は聞き、チームのニーズを尊重して、学習エクスペリエンスのアプローチをそれに合わせるのです。活動を共にするチームが会話の価値を理解し、会話から生まれたものを理解できるようにすることは、機械的な学習や認証の不安を取り除く上で役に立ちます。多くのトレーナやコーチの仕事ぶりをつぶさに見ることのできた点も幸運でした。最高の習慣を、自分のプラクティスに取り入れることができたのです。

infoQ: 過去数年間で犯した最大の間違いは何でしたか、そこからどのようなことを学びましたか?

私は新しい考え方が好きで、概念設計から商品化ステージまで、新しいチームと協力してそれを探しています。時にはこれに没頭して、プロダクトオーナの役割である時にはチームファーストに集中する、という自分自身へのコーチングアドバイスを忘れることもあります!自分があまりにも先を走っていて、スローダウンすることを忘れたり、他のメンバが違う方向を走っていたりすることもあります。立ち止まって、できていること、できていないことを反映する時間がないのです。

InfoQ: あなた方のアジリティへのアプローチは、製品とUXに重点を置いていますが、アプローチのユニークな点と、なぜ製品とUXをトピックとして選択したのかを教えてください。

私はキャリアの最初の10年間をテクノロジから始めたのですが、開発に従事してすぐに気が付いたことがあります。それは、技術的な優秀さだけでは、ソフトウェア技術やエンジニアリングの原則に関する教育を受けていない多くの人たちと会話する上で、橋渡しとなるものがないということです。中小規模のビジネスオーナとMNC(多国籍企業)に所属する人たちとの会話に参加して、橋渡しをする人がしばしば見過ごされていること、このギャップを埋めるためのビジネスアナリストやプロダクトマネージャないしプロダクトオーナといった役割の重要性が高まっていることを認識しました。これは有用ではありますが、依然として作業を専門領域やサイロに持ち込むものであり、さらなるコミュニケーションやハンドオーバが必要になります。

私がユーザエクスペリエンスデザインの分野に足を踏み入れた時、自分がすでに違うラベルでこれを行なっていたことをすぐに理解しました。プロダクトオーナについても同じで、もっとビジネス寄りですが、根本的には私が最初の10年間に行なっていた仕事と同じタイプのものでした。開発作業に没頭するよりも、私たちの役割に対する共通の理解を人々に広めることが先決であり、チームのあり方において最も重要なのだ、とその時に気付いたのです。アジリティ自体は考え方です。それを自分自身の視点にマップできない人に対して、私にできることはほとんど何もありません。私はアプローチを教えるのではなく、それを見せた上で、プラクティスを通じてすべての価値や原則を実証するようにしています。

InfoQ: UXチームや製品チームを指導する時、どのような事を重点的に教えようとしていますか?

特に重視しているのはリスニングとファシリテーションのスキルです。特に多文化チームや新しいチームでは、問題の根源の多くはコミュニケーションに関するものです。私がデザインした初期活動のほとんどは、知識の獲得に向けたものです — 最適な共同作業の方法は?問題解決のためにチームに必要な(あるいは欠けている)スキルは何か?ユーザ(内部および外部の)について私たちは何を知らないのか?

InfoQ: 数ヶ月前にニューヨークで開催されたビジネスアジリティのカンファレンスに出席されていますが、“ビジネスアジリティ”についてはどう思いますか?ITとビジネスのアジリティには、どのような違いがあるのでしょう?カンファレンスではどのような成果がありましたか?

ニューヨークで開催された最初のBusiness Agilityカンファレンスはとても面白いものでした。 私はアジアでの開催に賛成票を投じたのですが、会話に対する意識は米国の方が高いようです。素晴らしいことに、世界中から多くの人たちが参加してくれました。私と同じような集団での開発に従事しているヨーロッパの人たちと会えたことも素晴らしかったです。

参加者の大半は、実際のビジネスサイドやユニットからではなく、コンサルティングやコーチングを行なっている人たちだったようです。これも悪くはありませんが、米国企業がトピックとしてのビジネスアジリティをどのように考えているかを詳しく知ることはできませんでした。

アジリティは組織が全体として目指すものであって、サイロに分けられるものではない、と私は考えています。今はそれが垣根を越えてIT以外の企業に広がろうとしている段階ですが、このようにビジネスユニット毎に異なることばを用いるのではなく、会話に根ざした価値や原則を共有しなければならない、という同じ課題が残されています。

この問題についてさらに深く掘り下げた講演で、私が興味を持ったものとしては、Steve Denning氏の“What is Business Agility”Stephen Parry氏の“Designing organisations that work for Lean and Agile thinking people”、Renee Troughtons氏の“Reality bites and stranger things”などがあります。

infoQ: インドネシアと比べて、シンガポールでのアジャイルの状況はどのように違いますか?

私は2010年後半にシンガポールのアジャイルコミュニティに参加して、ボランティア、参加者、講演者としてカンファレンスに出席しました。2011年からはジャカルタにも行って、インドネシアでのアジャイルに関する議論がこの3年間で花開き、指数関数的に拡大したものであることを知りました。

どちらのコミュニティも、Stanly(Agile SG)やIvan(Agile ID)などの情熱を持った人たちが牽引力となっています。日々の仕事に追われる人たちが活発なコミュニティに参加する手助けをしてくれる彼らには、心から感謝しています!

シンガポールでの活動は、当初は金融業界が中心となって進められてきましたが、現在では政府機関や中小企業なども参画しています。インドネシアでも同じように、現在は金融業界と一部の中小企業がリードしています。最初に経験するアジャイルの作業方法としてはスクラムが多く、どちらのコミュニティでも、ほとんどの人たちにとって唯一の手法になっています。しかしながらインドネシアには、Pivotalの主要チームなどで働いていた人たちが在籍するKMK Onlineのような明るい材料があって、スクラム以外にも多くのプラクティスのあることや、IT以外の組織に導入する方法などが示されています。市場が拡大して急成長する企業が現れれば、このVUCAな世界において、企業がアジャイル化することの意義がもっと注目されるようになるでしょう。

infoQ: Agile Indonesiaを訪れる人たちは、どのようなことを期待できるのでしょうか?

個人的なストーリとしてはエンジニアのためのアジャイルとUX、移行の方法、ユーザの声をもっと聞くこと、それから、コードの世界の素晴らしさについて話したいですね。ジャカルタとバンドンでは、今日のソフトウェアエンジニアが直面している課題について詳しく調査したり、将来的な仕事においてこれをどのように考えるかを話し合ったりしています。

 

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