Caroline Kirkhope氏によれば、自己組織化するチームは効率的でより幸せだ。全ての人が自己組織化するチームに馴染む訳ではない。言われたことをやり、自分で働くことに慣れている。自己組織化するチームを実現するには意図を元にしたリーダーシップ、ソシオクラシー、ホロクラシーのようなモダンなリーダーシップのアプローチが必要だ。
Caroline Kirkhope氏はソフトウェア開発者でありテックリードだ。氏はLean Agile Scotland 2017で自己組織化について話した。InfoQはこのカンファレンスをインタビューや記事で取り上げている。
InfoQは氏にインタビューし、自己組織化についての実験から学んだことについて話を聞いた。
InfoQ: 自己組織化はなぜ重要なのでしょうか。
Caroline Kirkhope: 知識労働者は自分たちの仕事に発言権があればより健康的でより幸せになります。自分たちの意思決定をして、自分たちの仕事をより良くすることに貢献できるようになります。チームが自己組織化されていなければ、1人が全てを考え、残りの人たちが言われたことををやる、というようなチームになります。意思決定者やリーダーがどれほど賢くても、モチベーションがあり、積極的に動き、良く考える人が集まっているチームには敵いません。プロダクトがなぜどこに向かっているのかを知るということは、アイディアと既存の制約が計画に盛り込まれるようになるということです。
また、自己組織化したチームは効率的です。指示待ちする必要がないからです。障害が現れたら、他のチームと協力して問題をならべかえることができます。
InfoQ: 自己組織化を妨げるものはなんですか。
Kirkhope: たくさんあります。私の経験からは以下が主なものです。
何をするべきか指示しようとするリーダー。チームが何を達成しようとしているかを説明し、行動のための最高のコースを通るように促さない。
怖れと非難。ミスをすることを怖れる人。質問に対する怖れ。意思決定に対する怖れ。怖れがあると革新的で積極的にはなりにくい。
明確なゴールと目標の不在。達成しようとしていることについて、ゴールや目的がない、または、そのゴールがなぜどのようにして作られたのか、なぜそのゴールなのか明確でない。また、自己組織化することを期待されているかどうかチームにはわからない。このような、チームが目的を理解していない状況では自己組織化は望めません。
InfoQ: バリケードにはどのように対処しますか。
Kirkhope: チームから怖れと非難を排除します。何かがおかしくなったら、振り返りを行い、なぜ問題が発生したのか、今後どのようにその問題を避けるのかを考えます。非難をしないということを明確にして、重視します。影響がないということがわかれば、完全に正直になります。そうなれば、素早く、簡単に、将来、同じ問題を起きないするようになります。質問や意見をするということを怖れる必要はない、ということを明確にします。私はチームに、愚かな質問は存在しない、といつも言っています。
オーナーシップを共有することは自己組織化したチームを作る上でとても重要だと思います。共通のゴールのために個人を責務を持ち、ゴールを達成するために協力する人が必要です。多くのことが助けになります。私は皆でプログラミングをしたり、チームが苦しんでいる時は仕事の流れに集中させることが好きです。
また、言葉や考え方の変化というような単純なことも対策になります。私が率いていたあるチームでは自己組織化に向けて努力していました。私は考え方を変え、チームリーダーとしての私の役割を冗長化しました。チームのメンバが私を見て意思決定するときは、私が彼らのために解決をするのではなく、常にたくさんの質問をして、彼らが解決にたどりつくように支援をします。
InfoQ: 自己組織化に向いていない状況はありますか。
Kirkhope: 私が在籍したチームにはありませんでしたが、そのような場合はあると思います。厳密な検証とテストの手続きに従わなければ達成できない仕事の場合はそうでしょう。発電所の原子炉の起動と停止を自己組織化したチームに任せたいとは思いません。その手続きが存在する理由をしっかり理解し、しっかり考えて先を見越しながら、その手続きを実行してほしいと思うはずです。
InfoQ: 自己組織化から何を学びましたか。
Kirkhope: 私が学んだことは以下の通りです。
自己組織化されたチームは効率的でしっかりと働き、幸せです。
自己組織化したチームを率いるのは楽しいです。私はコーチングの役割でリーダーたちを励まし、啓発し、私がいなくなってもチームが機能することがわかるのが好きです。
しかし、簡単に古いパターンに戻ってしまいます。リーダーとして命令をしたり制御したり、非難や判断が生まれたりすると、古いパターンに戻ってしまいます。
また、文化もとても大事です。学校や職場で言われたことをやるのに慣れてしまっています。私はこのことを経験しています。特に新規学卒者がいるチームでは強く感じます。これは壊すべき大きな障壁です。大人として扱い、彼らを信頼するのがとても重要です。私たちは皆大人ですでに自分たちの人生を作っているのです。
InfoQ:マネージャはどのようにして自己組織化したチームを支援しますか。
Kirkhope: 障壁を理解することです。自分たちの習慣をレビューしチームとコミュニケーションします。自己組織化が欠けている、あるいは積極的でないように感じる場合は、彼らがどんなことをなぜしようとしているかを理解し、支援をしたり、阻止したりします。
マネジメントとリーダーシップの違いを理解してください。リーダーのリーダーシップ、意図を元にしたリーダーシップ、サーバントリーダーシップといったアイディアは多くのマネージャにとっては馴染みのないものだと思います。よく研究するといいでしょう。David Marquet氏のTurn the Ship AroundとLyssa Adkins氏のCoaching Agile Teamsがお薦めの書籍です。
彼らのために解決しようとするのではなく、彼らが自分の解決策にたどり着く支援をしましょう。
ゴールと境界を明確にします。チームがゴールを明確に理解し、守るべき境界と制約があればそれも明確に理解するようにします。特に自己組織化することに慣れていないチームには明確にする必要があります。
InfoQTurn the Ship Aroundの著者であるDavid Marquet氏にインタビューしアジャイルの意向に基づくリーダーシップについて話を聞きいた。
David Marquet: 許可を求めるのではなく、"...という意図があります。"という話し方をします。これは些細なことかもしれませんが、大きな影響があります。許可に基づく組織(つまりほとんど全ての組織が)では、アイディアや動きは誰かがNoと言えば生まれません。意向に基づく組織では、アイディアや動きはボスがNoと言っても生まれます。これによって、組織はアクションを起こすこと、皆が考えることに従事することになります。
InfoQ: 意向に基づくリーダーシップやソシオクラシー、ホロクラシーのようなモダンなリーダーシップアプローチは自己組織化とどのように関わりますか。
Kirkhope: とても大事なことです。私の考えでは、自己組織化するチームを作るにはモダンなリーダーシップの手法が必要です。従来の命令と制御でコントロールするタイプのリーダーシップはうまくいかないと思います。というのは、自分たちで考えて行動するよりもマネージャに従うようにするからです。例えば、ホロクラシーなら、役割や分散された権威、透明性は自己組織化に必要なことにとても合います。
Turn the Ship Aroundに書かれている、意向に基づくリーダーシップについてのDavid Marque氏の経験によれば、このリーダーシップのあり方はオーナーシップを変化させ、その結果、船長が常に回答をする男ではないということになります。船員は許可を求めるのではなくやろうとしていることについての意向を発言します。例えば、"船長、私はあの船を沈めようと思います。"これに対して、船長が"いいだろう。"と言います。"船長、あの船を沈める許可をください。"そして船長が"許可する。"というやりとりではありません。これは言葉の上では些細な違いです。しかし、とても強力な違いです。
私の考える自己組織化されたチームは、この種のリーダーシップにとって重要な構成要素です。自己組織化したチームによってモダンなリーダーシップはうまくいくのです。
InfoQ:自己組織化を進めたい企業にアドバイスをお願いします。
Kirkhope: 私の経験は企業ではなくチームに基づいています。しかし、企業については最近考えています。自己組織化の妨げになっているものを見つけるのをおすすめします。そして、それをひとつずつ排除します。他の会社のケースを見るのも良いでしょう。例えば、Etsyは非難なしの振り返りについて素晴らしい記事を書いています。企業レベルの場合は、個々人が自分の目的に向かって働くのではなく、企業のゴールを明確にしチームが同じ方向を目指して、より大きな企業のゴールを達成できるようにするのが重要です。
ホロクラシーやさまざまなリーダーシップのアプローチについて勉強してください。企業のリーダーにとって企業を変えようとするとき団結するのは重要です。自己組織化について説明している本を購入し業務時間内に読むようにすることで企業にメッセージが広まります。その後、話し合う機会を設け、何らかのアイディアを試してみるといいでしょう。
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