調査によると、DevOpsチームの採用率は上昇する傾向にある。しかし業界では、DevOpsチームが存在すべきかどうかという点でも、いまだ意見が分かれている。サイロがさらに増えることへの懸念の声もあれば、DevOpsはすべての組織が取り入れるべき方法論だという意見もある。さらには、新たな作業方法に移行する効率的な方法としてDevOpsを支持するものもある、というのが現状だ。
6年目を数えるState of DevOps Reportが6月に公開され、27,000の調査回答から得た経験的データが報告された。報告書には次のようにある。
DevOpsの進展と普及に伴って、DevOpsチームに従事する人々の割合が年々増加していることが分かりました。2014年には回答者の16パーセントがDevOpsチームで働いていましたが、3年後の今年は、回答者の27パーセントがそのようなチームに従事しています。
State of DevOps Reportでは、DevOpsチームの定義については述べていない。しかしながら、Matthew Skelton、Manuel Pais両氏はそれについて、devopstopologies.comで論じている。DevOpsの運用を可能にするチームのトポロジとしては、次のようなものが確認されている。
- DevとOpsのコラボレーション(“約束された土地(promised land)”)
- Ops責任の完全な共有
- インフラストラクチャ・アズ・ア・サービスとしてのOps
- 外部サービスとしてのDevOps
- 期間限定のDevOpsチーム
- DevOpsエバンジェリストチーム
- SREチーム(Googleモデル)
- コンテナ駆動コラボレーション
- DevとDBAのコラボレーション
これに対してFinkitのエンジニア長であるAnouska Streets氏は、先日の記事でDevOpsチームの設立に反対している。
ひとつのチームをDevOps専任にした、あるいはツールを採用した、というだけでは、適切に実施していることにはなりません。CEO以下すべての人たちが参加してこそ、真にDevOpsを行なっていると言えるのです。
“DevOpsは個人の仕事ではなく、全員の仕事である”というこの概念は、業界内に広く浸透すると同時に、DevOpsがひとつの職務なのか、あるいは職務に含まれるものなのかという議論にも密接に結び付いている – Threat Stackで運用サポートを担当するディレクタのPete Cheslock氏は、自身の記事’DevOps in Your Job Title is Doing You Harm’の中で、次のように述べている。
現実のDevOpsとは、組織のあらゆる面で受け入れられるべき文化です。すべての人たちがDevOps文化の変革を受け入れるべきです。ひとりのオーナがいるということはあり得ません。
しかし一部にはまだ、DevOps、特にDevOpsエンジニアという職種の存在を主張する声もある。Google出身でSpikeLabの創設者であり、スタンフォード大学のTechnology Entrepreneurship MOOCで助手を務めるSpike Morelli氏は、次のように述べている。
DevOpsが職種なのではなく、DevOpsエンジニアです。この意味で言えば、DevOpsは修飾語なのです。
JumpCloud IncのCEOであるRajat Bhargava氏はこれに同意せず、自身の立場をいくつかの点で主張している。
DevOpsは方法論であって、仕事の説明ではありません – 開発者は開発者であって、アジャイル技術者とは呼ばないのと同じです。彼らはたまたまアジャイル方法論に従っていますが、アジャイルを実践するのが彼らの仕事なのではありません。優れた製品を開発することなのです。
DevOpsは組織に浸透しなくてはなりません – DevOpsグループの類いは、DevOpsの重要な点を見逃しています。DevOpsは開発プロセスの付属品ではなく、企業にくまなく組み込まれる必要があります。そうでなければ、どうしてDevOpsを実践できるでしょう?
つまり、DevOps市場には矛盾が存在する – DevOpsチームを立ち上げている組織数が増えているという事実と、DevOpsチームは望ましくないという意見とは相反しているのだ。State of DevOps Reportの筆者たちは、DevOpsチームの興隆に対して、次のような考察を行なっている。
この増加が表しているのは、DevOpsが有効であるという認識と、組織全体が古い作業形態からDevOpsに移行するための戦略がDevOpsチームであるという事実です。
このようなDevOpsチームに対する反感は新しいものではなく、Jez Humble氏(同じくState of DevOps Reportsの著者のひとりであり、“Continuous Delivery”、“Lean Enterprise”、“The DevOps Handbook”などの著書を持つ)は2012年、‘There's No Such Thing as DevOps Teams’として、次のように主張している。
... DevOpsのムーブメントは、機能的サイロの集合体と化した組織の機能不全に対処するものです。従って、DevとOpsの間にもうひとつの機能的サイロを設けるというのは、これらの問題を解決する方法として明らかに不適切(であり、矛盾)です。そうではなく、DevOpsとは、機能的なサイロ間によりよいコラボレーションを生み出す、あるいは機能的サイロをすべて取り去ってクロスファンクショナルなチームを作り上げる、といった戦略(あるいはこのようなアプローチの組み合わせ)を提案するものです。
InfoQはHnumble氏に、2017年の現在も氏が同じ見解であることを確認した。 氏はStreets氏の主張に強く同意する一方で、DevOpsチームについて議論すべき場面もあると考えている。
開発するシステムに責任を負う開発者には、水平拡張する信頼性の低いプラットフォームに継続的デプロイの可能な、信頼できるソフトウェア構築の方法を理解する上で、運用側のサポートが必要になります。セルフサービス可能な環境とデプロイメントの実現が必要なのです。テストや保守の可能なコードを書く術を理解しなくてはなりません。パッケージングやデプロイメント、デプロイメント後のサポートに関する知識が必要です。誰かが開発者をサポートしなくてはなりません。それを行なう人たちを“DevOps”と呼びたいのであれば、それはそれでOKだと思います。
PuppetのプロダクトマーケティングディレクタであるAlanna Brown氏は、次のような意見だ。
専任のDevOpsチームは、バージョン管理やインフラストラクチャ・アズ・コードの作成、継続的デリバリといったスキルを組み合わせた、経験豊富な運用担当者で構成されるのが一般的です。このようなチームは通常、デプロイメントの自動化のような最も大きな問題から取り組みを始めます。それが成功すれば、組織の他部分への共有サービスの提供に進むことが可能になります。
また、DevOpsチームはアンチパターンであるという一般的な見解に対して、同記事では、DevOpsチームとIT組織のパフォーマンスとの間にある正の相関関係についても指摘している。
2014 State of DevOps Reportで意外だったのは、回答者の16パーセントが、自分たちが実際にDevOps部門に従事していると考えていることと、それらDevOpsチームメンバの90パーセントが高度ないし中程度のパフォーマンスを持つIT組織に属していることです。
PivotalのMichael Cot&eqcute;氏は、アジャイルおよびDevOpsチームという役割と責務を通じて業務に取り組んでいる(ちなみにCot&eqcute;氏は、“DevOps”は“アジャイル”に含まれると考えている)。
一般的には2種類のチームがあります。問題になっているソフトウェアやサービス(いわゆる“アプリケーション”)を実際に開発する“ビジネス機能チーム”と、“アジャイルオペレーションチーム”です ...
Cot&eqcute;氏はアジャイルオペレーションチームの具体的な仕事について述べていないが、氏の示した図には、プラットフォームエンジニアリングやサイトの信頼性、PAASサービス用のインフラストラクチャに関連する業務が示唆されている。
DevOpsチームは増加しているが、それが組織におけるDevOps機能を進展させるための正しいアプローチであると業界が認めているかどうかは別の問題である。このトレンドは今後も続くのだろうか、さらに重要なのは、そうなるべきなのだろうか?
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