Sandy Mamoli氏は2年間にわたって、ニュージーランドの旅券発行会社Snapperのホラクラシ(holacracy)導入をサポートしてきた。先日のAgile Wellyミーティングセッションで氏は、ホラクラシについて説明し、これまでの経緯やそこで得たメリットを語るとともに、ホラクラシを検討中の人たち向けたアドバイスを提供した。
当時、Snapperのリーダ層が直面していたのは、いかにして官僚主義(bureaucracy)に陥ることなく成長するか、という課題だった — 60人からなる同社は、世界中から新たな顧客を呼び込むことで急速な成長を図っていた。リーダシップチームは、同社の持つ革新的な特質を維持しつつ、この極めて急速な成長をサポートすることの可能なシステムを構築したいと考えていた。氏はZapposのTony Hsieh氏の言を引用して、次のように述べている。
都市の規模が倍増するたびに、イノベーションと生産性は15パーセント増加します。しかし企業が大きくなると、イノベーションと生産性は低下するのです。
ホラクラシとは自己組織化組織を構築する方法である、と氏は言う。それはすなわち、
自律的な自己組織型チーム群全体に権限と意思決定が分散された、分散管理と組織的ガバナンスの手段です。
holarcracy.orgのWebサイトによれば、
Holacracy®(ホラクラシ)とは、目的主導型のレスポンシブな企業を運営するための、自己管理プラクティスです。有意義な決定を下し、変化を推進する権限を人々に与えることによって、Holacracyのプラクティスは、世界中の企業がその目的を追求するための、秘められた力を解き放つのです。
彼らがホラクラシのアイデアを提案した時、Snapperのリーダチームは懐疑的であったが、好奇心を持って試行の準備に入った。ほとんどカルトのようだった、とCEOのMiki Szikszai氏は言う — サイエントロジ(scientology)しかり、アジャイルしかり、パリオ(palio)やクロスフィットしかり。それでも彼らは、Zapposの実例にも励まされて、うまくいくかどうか試してみよう、と考えたのだ。
ホラクラシの基本的なユニットはサークルである。これは完全に自己組織化したチームを表す言葉だ。サークル内のサークルというカスケード構造があり、人ではなく、その目的によって階層化されている。それぞれのサークルは、定義されたミッションの達成に、そのミッションによって特定された制約内での全責任を負う。情報フローをサポートするため、各サークルには、上位サークルのニーズを代表するメンバが配置される。この役には、上位サークルが行なう決定に対する完全な議決権が与えられており、上位レベルでの活動が下位レベルのニーズをサポートすることを保証する。真の自律性を可能にし、サークルの方向性を維持する上で、このフィードバック構造は非常に重要な意味を持っている。
役割は、職務の説明ではなく、組織において達成する必要のある全作業の微視的な記述によって、極めて詳細に定義されている作業の内容を極めて詳細に定義することにより、それぞれのメンバは最も適した役割に協力的に割り当てられ、ミッション達成に必要なものをサークルに提供することが可能になる。今回の移行において、役割を定義することは最も面倒な作業のひとつだったが、成功のためには絶対に必要なものだ、と氏は述べている。役割は公開されており、メンバはその時々に必要とされ、かつ自身の興味に一致する役割を動的に受け入れる。
サークル内には、プロセスをサポートする厳密なプロトコルがいくつか存在する。導入当初はこれらが奇妙に感じられ、ミーティングに関するルールのいくつかは、Snapperの文化に合わないものだった。そこで、まず最初はそれらに厳密に従い、プロセスに対して自身が持てるようになった後に、組織の文化に合うようにルールの一部を調整することにした。
意思決定プロセスで重要なのは、コンセンサスよりも、むしろ同意(consent)の概念だ。完全な同意に対する抵抗から、コンセンサスは無関心につながる場合が少なくないのに対して、同意を基本としたアプローチはより行動に向かう傾向がある。
Snapperの2年間はホラクラシによって満足のいくものになった。今や組織全体がサークルの集合体であり、人々は以前よりも積極的で協力的になった。ホラクラシの採用は組織文化を根本的に変えるものではない、と氏は強調する — すでにあるものを強化するのだ。Snapperのケースで言えば、同社はすでにアジャイル組織であって、多機能チームや協力と信頼の文化を備えていた — ホラクラシはこの文化を補強し、そのような組織に適していたのだ。
同社のような文化が基盤としてなければ、ホラクラシが組織にとって有害である可能性が高いことは明白である。まずは文化を改めることだ。
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