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リーンスタートアップを使った難民のためのオンラインプラットフォーム開発

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原文(投稿日:2019/09/26)へのリンク

複雑な要件を持った新しいユーザグループにコンタクトして、その内容を早く知りたい場合、あなたならどうするだろう?Stephanie Gasche氏はAgile Business Day 2019で、リーンスタートアップメソッドを用いることにより、資金面でのサポートを受けることなく、難民と庇護希望者のためのオンラインプラットフォームを構築した、自身の経験について語った。

Gasche氏が2017年始めにプラットフォーム"I am Regugee"の開発に着手したのは、難民や庇護希望者が定着に向けて、総合的かつ非政治的な支援を受けるための、単一のコンタクトポイントがオーストリア内に存在しないことに気付いたからだった。

オーストリアに居住し、社会の一員として活動することを望む人たちはすべて — イスラム教徒でも、難民でも、外国人居住者でも、移民であっても — この国でよりよい生活をおくるための最初の機会として、Was Wie Warum in Österreich(以前の"I am Refugee")の提供するディジタルサービスを受けることができます。Webサイトに公開されている情報、アプリ、メディアによって、オーストリアに生まれたことで自動的にシステムの一員となった人と同じような、長期的に個人的成功を収めるためのチャンスが、すべての人々に与えられるようになりました。

2012年から2015年までのGasche氏は、アジャイル分野でマネジメントコンサルタントとして活動し、スクラムチームや管理層、アジャイルに向けた組織改革などを支援してきた。リーンスタートアップは、顧客志向、高速なフィードバック、継続的な学習と改善、視覚化、最小限の配信物、プル原則、学際的なチームスピリットといった側面から、複雑な環境には最適な手法である、と氏は言う。難民と庇護希望者の定着は極めて複雑なフィールドであるため、"I am Refugee"はそれを実現する唯一の手段だったのだ。

フィードバックサイクルやBuild-Measure-Learnといったリーン・スタートアップのメソッドの導入は、市場の反応を短期間で確認する上で理想的な方法だった、とGasche氏は述べている。利益追求型の組織と比較した場合、"I am Refugee"イニシアティブの大きな特徴と言えるのは、ディジタル分野での難民としてのユーザグループは全く新しいものであり、資金調達ができないという点である。

この分野に関する研究は、世界のどこにも例がない。結局のところ、単なる"難民(the refugee)"というものは存在しないのだ。さまざまな背景と文化を持ったあらゆる種類の人たちは、ニーズもそれぞれ違うが、それでも共通するものはある、とGasche氏は言う。

資金提供を受けなかったという点に関しては、定着の問題がオーストリア内ですでに現実問題となっている、という背景がある。"早く行動しなければなりません。ビジネスケースを書いて、政府の資金提供機関を相手にプレゼンを行って、協議して、修正して ... ということを待っている訳にはいかないのです。それでは資金提供を受けて、プロジェクトを立ち上げるのが1年後になってしまいます"、とGashe氏は言う。素早く行動し、本当にニーズに合っているのかをフィードバックとして獲得し、そこから開発しなければならないのだ。そのためには、アジャイルメソッドとリーンメソッドは理想的な方法だった。

ビジネス組織でのアジャイル使用と比較した時、非営利目的でアジャイルを適用することの大きな違いは、カスタマとユーザが分離していることだ。Gasche氏が説明する。

主要なステークホルダを、お金を払うカスタマと、実際にディジタルサービスを利用するユーザに区別するとすれば、非営利組織である私たちは、これら2つの利益が同じでない場合が多いことを意識しなければなりません。つまり、リーンスタートアップとフィードバックに注目して、市場やユーザに関する新たな情報を見つけた場合に方向転換しなければならないと考えるならば — もっと前に方向を変えるべきだったのです。

なぜか?政府や市議会、あるいは民間財団の資金調達 — そのような資金に依存している非営利団体はたくさんあります — は、さまざまな種類の定着プロジェクトに資金提供しています。彼らは、難民が仕事を見つけることを支援するイニシアティブをサポートしています。あるいはアパートを探す手伝いをしたり、ドイツ語を教えたりしています。いずれも非常に価値のあるプロジェクトやイニシアティブですが、すでに十分な取り組みが行われていることです。

本当に問題なのは、難民や庇護希望者たちが、これらの取り組みについて知らないことです。これは、提供者と要求者を結ぶための統合的な単一ソースが存在しない、という単純な理由によるものです。そしてこれこそが、"Was Wie Warum in Österreich — I am Refugee"で、私たちが埋めたギャップなのです。ですから、そのようなニーズで方向転換したくなかったので、一切の資金を受け取りませんでした。

この活動は完全にボランティアベースであるため、Dan Pinkが特定した本質的動機付けの3要素 — 目的、自律性、自助力 — はより真のものになる、とGasche氏は言う。さらに氏は、イテレーションを短縮化する上で、友人たちの支援があったことにも言及している。しかしながら、目的を信じてボランティア参加した人たちは、そこで新たなことを試して、何かを学ぶことができると考えていた(Facebookの広告のように) — こうした見知らぬ人たちが友人になって、組織に留まってくれているのだ、とGasche氏は言う。

InfoQはAgile Business Day 2019での講演を終えたStephanie Gasche氏に、"Was Wie Warum in Österreich — I am Refugee"イニシアティブについてインタビューした。

InfoQ: iamrefugee.at Webサイトの提供するソリューションが、主要な問題の解決策になるということが、どうして分かったのですか?

Stephanice Gasche: 2016年始め、オーストリアにたどり着いた多くの難民や庇護希望者たちの定着に関わるオーストリア政府の活動をサポートするため、職を変える決心をしました。それで私は、社会定着に必要な行政などの基本的知識を教える、オーストリアで最初のトレーナになりました。難民たちと毎日仕事をすることで、本当の問題がどこにあるのか、政府が対応していないオーストリア社会に必要なものは何なのか、ということが分かってきたのです — 彼らが定着するためには、多くの誤解や誤った情報を取り除くための、一元的なポイントが必要だと思いました。難民はオーストリア全土に拡散している — 遠くにいる人たちもいます — ので、最も理に適った方法がディジタルサービスだったのです。

InfoQ: "I am Refugee"は、何を提供するものなのでしょう?

Gasche: このプラットフォームでは、定着のための9つのステップをユーザに提供して、それが何であるのか、なぜ必要なのか、といったことを教えています。それによって、オーストリアに初めて来た人たちに対して、納得できないような定着のためのステップを押し付けるのではなく、自ら進んで定着プロセスを行うようにしています。

"難民"という多様なユーザグループにいる人たちを対象とするため、視覚化や教育用の短編ビデオを使用して、すべてのテキストをドイツ語から英語、アラビア語、ペルシア語に翻訳しています。2018年には、名称を"Was Wie Warum in Österreich"に変更しました。定着というトピックが、難民だけの問題ではないことを理解できるようにしたかったからです。

InfoQ: リーンスタートアップとアジャイルの原則を、どのように適用したのですか?

Gasche: プラットフォームの基盤となっている、ユーザ中心の考え方を尊重し、重視するアジャイル思想に加えて、チームとしての私たちを組織化するためにもアジャイルメソッドを活用しています。成果物の収集、可視化、優先度設定の他、作業進捗の確認にもTrelloを使っています。チームメンバはここから、自身の都合や関心に応じてタスクを引き取ることができます。以前は1ヶ月のイテレーションで、計画ミーティング、レビュー、レトロスペクティブを行っていたのですが、現在はWhatsAppとShow & Tellsを通じて、定常的に共同作業やコミュニケーションを行うようにしています。

InfoQ: リーンスタートアップを使うことで、どのようなメリットがあって、何を学びましたか?

Gasche: たくさんあります。母国であるオーストリアに関することを除けば、政治の裏側、スタートアップの背後にある資金の世界といったことや、オーストリアで実施されている難民定着のためのプロジェクトやイニシアティブの状況がとてもよく理解できました。さまざまな意図を持った文化のまったく違うチームや、さまざまな価値観の集まったチームと共同作業することを学びました。

目標(資金調達や翻訳準備など)が何であろうと、ひとつの目標に集中すれば、時間を掛けることで目標を達成することができます。それは私たちが、互いにサポートし合い、推し進め合っているからなのです。これが仕事の一番楽しい部分でもありました!分散チームで作業する場合は、なおさらです。

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