W3Cは先日、新たなW3C勧告(recommendation)を発表した。IoTプラットフォームとアプリケーションに関わるWebインテグレーションを対象とした、Web of Things (WoT) ArchitectureとWeb of Things (WoT) Thing Description (TD)の2つである。
2つの勧告のおもな目的は、W3Cの記者発表によれば、IoTにおける相互運用性の拡張とフラグメンテーション阻止にある。
プロトコルやデータモデルといったIoT(Internet of Things、モノのインターネット)で使用されるテクノロジの多様性は、IoTプロジェクトにおけるインテグレーションコストとメンテナンスコストの上昇をもたらすと同時に、陳腐化したソフトウェアへの固着やイノベーションへの立ち遅れを招きがちな分離的サイロ化の回避を情報技術ユーザに迫っています。W3C Web of Thingsは、既存のプラットフォームやデバイス、ゲートウェイ、サービスを対象としたWebベースの抽象化レイヤを定義することによって、IoTのフラグメンテーション回避という公約を守るものです。既存の標準を補完して相互運用性を強化することにより、投資家やユーザのリスクを低減するとともに、デバイスやサービスのオープンマーケットの早期拡大も可能にします。
WoTを活用したSiemensのDesigo CC Building Management StationやMozillaのWebThings、OpenJS FoundationのNode-REDプロジェクトなど、これらの標準を活用したソリューションはすでにいくつか存在する。
WoT Architecture勧告では、コンセプトをいくつかのキー領域に分割している。
- アプリケーションドメイン: コンシューマ向けスマートホーム、石油とガス、スマートシティ、ビルディング、自動車など
- パターン: コントローラ、アクセスなどのコネクティビティモデル
- 要件(requirement): ネットワーク、デプロイメントなど
- アーキテクチャ: Web Thing、インタラクションモデル、ハイパーメディアコントロール、プロトコルバインディング、その他のコミュニケーション形式
Web ArchitectureにはThing、バインディングテンプレート、ECMAScriptベースのAPI、セキュリティ及びプライバシのガイドラインなど、いくつかのビルディングブロックがある。WoT Architectureそれ自体はAPIのセットではなく、アーキテクチャ原則の集合体である。
WoT Thing Description勧告は、コア機能のためのTD情報モデル、データスキーマ、セキュリティ、ハイパーリンクを提供する。例えばLink APIは、HTMLアンカーエレメントに極めて近い。
WoT DescriptionにはJSONベースの表現形式、他の形式からのデータのシリアライズに関する情報、その他さまざまな機能も含まれている。
全体的なアプローチには他のWeb APIとの一貫性が感じられ、IoTアプローチやWebエコシステムとのギャップを埋めることが期待される。
SiemensのチーフテクノロジオフィサであるHelmut Macht氏は、WoT標準化プロセスに参加した動機について、次のように説明している。
新たなWoT標準は、さまざまなシステムやドメインから取得されたデータを、シンプルかつ有意義な方法で組み合わせて分析するための、より優れた手段をSiemensに提供してくれます。当社は例えば、デバイスやサブシステムを当社の代表的ビル管理ステーションであるDesigo CCに、さらにはクラウドへと統合するためにWoTを使用します。異種ないしプロプライエタリなOTおよびIoTソリューションのため、これまでは、例えばビルディング内のさまざまなソースからのデータを水平的に解析したいような場合には、エンジニアリングやメンテナンスに多大な労力を必要としてきました。WoTを使用することで、さまざまなデバイスからのデータをデータプールに統合して、分析やエンジニアリング、評価、エネルギ最適化といったさらなる価値創造に使用することが、簡単にできるようになります。
WoT ArchitectureとWoT Thing Description以降についても、W3C WoT Working Groupでは、他のいくつかの領域で将来的なWoT勧告を検討している。
- 最小限の労力によるオンボーディングの確約
- 相互運用プロファイル
- 新たなプロトコルや標準メタデータの追加に対するボキャブラリのサポート
- セキュリティ機構の進化をサポートするセキュリティスキーマ
- リンク関係型(links relation type)仕様
- ディスカバリ機構の標準化
- Thing Description Templateの改善