先週水曜日、GoogleはOpen Usage Foundationを設立し、IstioやAngular、Gerritといったトレードマークの移行を早急に進めると発表した。発表の内容は次のようなものだ。
Open Usage Commonsは、トレードマーク管理や利用ガイドラインといったプログラムを通じて、プロジェクトによるアイデンティティの保護を支援します。私たちのこの活動は、オープンソースへの献身、オープンユースへの熱意、オープンソースプロジェクトを支援する組織としての取り組みに従ったものです。
驚いたのは、Apache FoundationやEclipse Foundation、そしてもちろん、Kubernetes、Prometheus、Envoyといった既存のクラウド関連プロジェクトを数多くホストするCloud Native Computing Foundation(CNCF)など、オープンソースを支援する多数の財団がすでに存在するにも関わらず、新たな財団の設立が必要であるとGoogleが考えたことだ。事実、GoogleとともにIstioを開発するIBMは、同プロジェクトの明確なホームがCNCFでなかったことに驚いている。
プロジェクトを開始した時、プロジェクトの完成時にはCNCFに寄贈する、という合意がありました。IBMは今後も、Istioのような重要なオープンソースプロジェクトを管理する最善の方法は、すべてのコントリビュータにとって平等な活動場所と評価される組織による後援、ライセンスとトレードマークのベンダニュートラルな管理を備えた真にオープンなガバナンスを持つことである、と考えます。Googlehは当初のコミットメントを再考して、IstioをCNCFに返すべきです。
問題の所在は、同財団がトレードマークの管理権を持ったとしても、オープンソースプロジェクト自体の拠点ではない、ということにある。プロジェクトは引き続きGoogleの指揮下にあり、ベンダニュートラルなアプローチによるプロジェクトホスト方式には従っていない。既存のオープンソース財団に移行する上での要件のひとつは、能力主義(meritocracy)をプロジェクトの基盤とすることなのだ。
このような動きが望ましいものであると、すべての人々が確信している訳ではない。CNCFのボードメンバであるArun Gupta氏は、次のようにツイートしている。
新しい日、新しい財団、新たなドラマ ... @IstioMesh、@angular、@GerritReviewはOpen Usage Commonsに寄贈されます。
役員を務めるのはGoogler(Google社員)、Xoogler(元Google社員)、Academia(学術関係者)です。他の業界コラボレーションはないのでしょうか?
Open Usage Commonsの役員構成は次のようになっている(本記事執筆時点)。
- Allison Randal — Open Source Initiativeの元代表で、Software Freedom Conservancy、Open Stack foundation、Perl Foundationの役員
- Charles Isbell — ジョージア工科大学コンピューティングカレッジ教授
- Cliffe Lampe — サバティカルから復帰した(自身のブログによる)研究者
- Chris DiBonaM — Googleのエンジニアリングおよびオープンソース担当ディレクタ (本記事冒頭のGoogleによる発表の執筆者)
- Jen Phillips — Googleのシニア・エンジニアリング・プログラミング・マネージャ
- Miles Ward — SADAチーフテクノロジオフィサ、元Google
IBMは、オープンガバナンスポリシの重要性に、以前から注目している。
事実として、すべてのオープンソースが真にオープンなのではありません。オープンソースプロジェクトの多くは個人が運営しているか、あるいはひとつのベンダによって管理されており、ガバナンスにおいて極めて閉鎖的です。外部のコントリビューションを歓迎するプロジェクトはありますが、技術的な戦略や方向性を設定するリーダシップの役割を外部のコントリビュータが担うという点については、オープンではないのです。個人やひとつの組織によってコントロールされるプロジェクトには大きなリスクがあり、コラボレーションやイノベーションの機会が少ない、というのが実情です。
Open Usage Common Foundationについて書かれているが、この記事は今年3月に執筆されたものだ。
"オープン"という名称を使ってはいるが、トレードマークがこの財団によって扱われるのであって、プロジェクト自体は依然としてGoogleの管理下に残っている。そのトレードマーク名称自体も、実はトレードマークではない可能性があるのだ — Googleはトレードマークとして登録申請したが、USPTOによって否認されている。Linux FoundationとCNCFのVPを務めるChris Aniszczyk氏が事情を説明する。
100を超えるオープンソース財団の存在を考えた時、Googleは"トレードマーク問題"という、実際には存在しない問題の解決を主張して、詳細な説明のない組織を設立したのです ... トレードマーク(Istio)の使用は、2019年にUSPTOによって否決されています ... 正気の沙汰ではなく、新たなものもありません。
Apacheライセンスで利用可能なIstioやGerrit、MITライセンスで利用可能なAngularなどのオープンソースプロジェクトが影響を受けることはなさそうだが、Open Trademark Foundationの設立は、コミュニティにおけるGoogleの立場に対してプラスにはなりそうもない。フォークが発生する可能性は低いものの、Googleが今後もこれらのプロジェクトにおいて主導的な位置に立ちたいと考えていることは確かで、実力主義を基本とするオープンソース財団へのコード寄贈には関心がないようだ。