Versatile Video Codingは、H.266、MPEG-I Part 3、Future Video Coding(FVC)などの名でも知られる、H.265の後継標準である。従来と同じレベルの表示品質を維持しながら、データ要件の50パーセント削減を可能にする。
従来の標準であるH.265/HEVCでは、90分のUHDビデオの送信に約10ギガバイトのデータが必要です。この新たなテクノロジならば、わずか5ギガバイトのデータで同じ品質を達成することができます。
AppleやEricsson、Intel、Huawei、Microsoft、Qualcomm、Sonyといったパートナとともに、数年にわたって新標準の開発を続けてきたFraunhofer HHIによると、H.266は特に4Kや8Kのビデオのストリーミングでメリットがあるという。その一方で、新標準は、SDから8K、ダイナミックレンジビデオや全方向性の360°ビデオに至るまで、あらゆる種類のビデオに理想的なものだ、とFraunhofer HHIは述べている。
新標準で懸念されるのは、ライセンスモデルの選択に関わる部分だ。従来の標準であるHigh Efficiency Video Coding、いわゆるH.265は、2013年にリリースされたが、特許関係の懸念のため、広く普及したのはこの2年程のことだった。このような事態になったのは、ロイヤリティに関して不明確な部分があったためだ。2倍のパフォーマンスを実現していたにも関わらず、プロバイダたちは従前の標準であるH.264に固執したのだった。こうしたリスクを軽減する試みとして、H.266は、Media Coding Industry Forumという新たなグループを通じて運用されることになった。しかしながら、特許問題に関する限り、この取り組みが潜在的な実装者による採用促進に成功するかどうかは、いまだ未知数である。さらに、MC-IFは標準化プロセスのコントロールは実施しないため、これがH.266の採用プロセスのさらなる妨げになる可能性もある。
ビデオ圧縮に関する進歩のペースは極めて早いようで、現在の標準であるH.265への移行がまだ完了していないにも関わらず、すでに新標準が登場しようとしている。Hacker Newsの何人かの読者が指摘するように、これは再生ハードウェアの進化とも無縁ではない。
H.265のアドバンテージの一部は、デコード済フレームを大量に保持するのに十分なRAMをプレーヤが持ったことに依存しています。これによって、後で圧縮されたデータからの参照が可能になっているのです。
新たなエンコーディングスキームの道を開いたもうひとつのファクタは、ビデオ解像度の変化である。簡単に言うと、エンコーディングスキームはそれぞれ、codecがリリースされた時点で一般的な解像度セットに対して最適化されている。これは同時に、それより高解像度で使用した場合には効率が落ちる、という意味でもある。特に、設計選択のひとつであるマクロブロック — 圧縮対象となる最も粗いブロックのサイズは、特定の解像度におけるcodecの効率性に大きく影響する。そのため、H.264のマクロブロックのサイズはH.265よりも小さく、4Kビデオには効率がよくないのだ。
こうしたファクタとアルゴリズム上の改善が相まって、全体としての効率改善を決定付けている。
興味のあるグループのために、Fraunhofer HHはこの秋、自身のエンコーディング/デコーディングソフトウェア実装を公開する予定である。チップメーカによるハードウェアのサポートについてはまだ発表がなく、もう少し時間が掛かりそうだ。