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ハイパフォーマンスチームにおける信頼と安全 - QCon London Q&Aより

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原文(投稿日:2020/07/02)へのリンク

チームに所属したい、安心して学び、貢献し、現状に挑戦したい、と人々は願う。そのために我々が最初にすることは、チームメンバそれぞれとのパートナシップがあるという認識を持つことだ。すべての関係性がそうであるように、つながりを強め、効果的な共同作業を行うためには、相応の注意と配慮が必要となる。

Jaycee Cheong氏は、信頼の大切さと、それに対処し、高めるための方法について、QCon London 2020で講演した。

前提としての信頼は、自分自身で始められるマントラであり、価値観である — 信頼を前提にすることは、過度の社会的リスク管理行為による精神的エネルギから解放されるという意味において、非常に便利なツールとなり得るのだ。

組織内において、チームがより一般的な存在になるにつれ、信頼を獲得する方法も変化する。ピアスポンサーシップ(peer sponsorship)は、自身のアイデアに対してチームメンバのサポートがあることを示すものだ。

チームのグループ(あるいは組織)全体が支持することで、信頼はより影響力のある存在になる。まずは組織自体から始めることだ。

BryterのクラウドインフラストラクチャエンジニアであるJaycee Cheong氏に、ハイパフォーマンスチームにおける信頼と安全について聞いた。

InfoQ: 信頼をどのように定義していますか?

Jaycee Cheong: 私は信頼を、他の人に頼ることができると信じること、と定義しています。ハイペースな技術遷移の中にいる私たちは、常に高いレベルの不確実性に直面する一方で、高品質なアウトプットの提供という期待とプレッシャを受け続けています。チーム内にセーフティネットを持つことは、ハイパフォーマンスチームの要素のひとつである、と私は思っています。

InfoQ: 革新的なハイパフォーマンスチームにおいて、心理的安全(psychological safety)の向上が重要である理由は何でしょうか?

Cheong: チームの心理的安全とは、チームに所属し、安心して学び、貢献し、現状に挑戦することができると感じられると同時に、グループの設定の中で、すべての結果において恥ずかしさや疎外感、何らかの罰則といったものを恐れることのない状態です。

Googleは、チームパフォーマンスに関する同社の調査結果から、チームの心理的安全を、ハイパフォーマンスチームの重要な5つの要素のひとつに挙げています。

2004年のEdmonson氏らの研究では、相互関係における信頼と敬意がチームの心理的安全を促進するという点が強調されています。この事実に関する認識を、技術的リーダシップのコミュニティに広めたいと思っているのです。

InfoQ: チーム内の信頼を育てるために、何ができるのでしょうか?

Cheong: フィードバックの提供と追及、根回し、スポンサーシップなど、いくつかの行動やコンセプトがあります。

フィードバックの提供と追及:

ハイパフォーマは仲間に対して、より肯定的なフィードバックを提供します。ハイパフォーマンスチームに関する研究データでは、ハイパフォーマンスチームは、一般的なチームに比較して6倍近い肯定的フィードバックを持つことが示されています。

チームのフィードバック文化は2つの行為に分けられます。すなわち、フィードバックの要求と提供です。

私はキャリアの中で、"何かフィードバックはありますか?"というような、ざっくりした質問でフィードバックを求めるという失敗をしたことがあります。これでは曖昧過ぎて、要求した相手の役には立ちません。効果的にフィードバックを求めるための確実なステップは、具体的かつ自由形式の質問をすることです。具体的な質問をすることで、要求の焦点を絞ることができます。コーチングを求めているということを明確に示し、取り組みを行うことのできる領域があると仮定するのです。

チームにおいてフィードバックの文化を促進する場合には、具体的かつ肯定的なフィードバックを提供することで、仲間とのつながりを得ておいた方が常に安全です。前向きのつながりを持つことができれば、信頼もより高くなります。コードの変更にハートの絵文字(emoji)を使って、彼らの仕事のよさを認めてください。小さな部分から始めて、積極的なメンバによって文化を維持することで、チームの成長とパフォーマンスに資する、という手法はいつでも有効なのです。

根回し(Nemawashi):

"根回し"というのは、何年か前に私が聞いたことばで、意思決定プロセスにおいてコンセンサスに価値を置くという、日本の管理パラダイムです。

例えば、何十年も前から根回しを採用しているToyotaでは、社員が何らかの提案を作成すると、承認を得る前にすべてのレベルのマネジメントにそれを回覧する、というプラクティスがあります。

私たちのチームでは、現在でも根回しが実施されていて、仲間との信頼構築に役立っていると思っています。ただし、提案を上層部の間に回すのではなく、アイデアをチームの各メンバで回覧して議論し、フィードバックを取り入れることでチームのソリューションとして洗練する、という方法に変えています。

1対1の設定でアイデアを議論することは、アクティブなリスニングを実践するよい方法であり、オープンなコミュニケーションを促進することになります。それによってチームメンバが、自らの価値観や考え方、特に相反する視点を共有することが可能になるのです。

この土台作りによって、プロフェッショナルな状況の中で、個人の関係という価値ある絆を築くことができます。それが、"あなたのフィードバックは私にとって大切なので、一緒にこの仕事に取り組みたいと思っています。私と私の仕事にとって重要なものなのです"と、チームメンバに伝えるシグナルなのです。

スポンサーシップ

スポンサーシップは従来、どちらかというと階層的な設置における権威者からのサポート、という意味で用いられてきました。マネージャからキャリアのスポンサーシップを受ける、というようにです。最近の組織ではチームの自律性が高まっているため、以前よりも漠然とした社会的ダイナミクスがチーム内に存在しています。すべてのコミュニティがそうであるように、私たちはそれぞれ、家族や専門家ネットワークといった社会資本(social capital)をその中に所持しています。

社会資本とは、コミュニティ内の人々の間に信頼と協力を促進するための一連の規範です。在職期間、公式あるいは非公式なリーダシップ、経験など、社会資本を獲得する上で肯定的な影響を持つものはいくつかあります。

同一レベルのスポンサーシップを、それを最も必要とする人に提供することによって、社会資本への賢明な投資を行うのは、チームメンバからの信頼を勝ち得るための確実な方法なのです。お互いがアドボケート(advocate、擁護者)になって熱意を生み出し、新たなアイデアやプロセスに重きを置き、効率的な作業を支援することが、ハイパフォーマンスチームであることの証です。

InfoQ: 信頼関係を構築する上で、組織には何ができるのでしょうか?

Cheong: チーム内の信頼を促進するためには、組織が模範を示すことから始めなければなりません。

リーダがミスを認めたり、思慮深い弱さを見せたりするような行為は、同僚との間の信頼を育む方法をチームに示すものになります。

信頼を構築するためのもうひとつの確実なステップは、組織の現在のポリシを評価することです。一般的に組織には、自分たちの文化を反映したポリシを採用するよりも、継承されているという理由で従来の管理プラクティスを採用するという傾向があります。フレックスやリモートワークといった自己管理を促進するガイドラインを採用することは、チームメンバに対する組織の信頼行動であり、ひいては組織の心理的安全を促進することになります。

InfoQ: どのようなメリットがありましたか?

Cheong: 私が見たメリットは、チーム活動への参加意識の向上、チームの自己管理や自己組織化に対する信頼の拡大、といったものです。信頼構築を中心とした心理的安全をチームに提供することにより、チームはより生産的になり、重要事に集中することが可能になる、すなわちハイパフォーマンスチームになることができるのです。

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