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CanonicalのAlex Chalkias氏に聞く - Kubernetes 1.19エンタープライズサポートとKubeCon

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原文(投稿日:2020/09/08)へのリンク

Canonicalは、先日終了したKubecon + CloudNativeCon 2020に先立って、Kubernetes 1.19のエンタープライズサポートを発表した。

InfoQはKubeCon + CloudNativeCon EU 2020に出席した同社プロダクトマネージャのAlex Chalkias氏に、今回の発表とKubernetesの将来、さらには企業への採用をCanonicalがどのように後押ししていくのか、などに関して話を聞いた。

Chalkias氏はまず、CanonicalがLinux、Kubernetes、クラウドに長く関わっており、それが同社をして、データセンタ内の従来型のモノリスから現代的なクラウドネイティブ環境への企業の移行を可能にする理由となっている、と説明した。

InfoQ: Kubernetesリリースチームはまだ、Kubernetes 1.19を公式にローンチしていません(注: インタビュー時点ではリリースされていなかった)。それでもやはり、先日発表されたCanonicalのKubernetes 1.19エンタープライズサポートの話題から始めたいと思います。Kubernetesを取り巻く機運や、Kubernetes 1.19の重要な機能について話して頂けますか?

Chalkias: 世界的な混乱がKubernetesの最新リリースにも影響を与えています。前例のない20週というリリースサイクルが生まれたことで、調整に必要な個人的時間を十分に確保することが可能になりました。Kubernetesが成熟するにつれて、リリースが少なくなるのは当然のことでしょう。長期サポート(LTS)が12~14ヶ月にまで延長されたのもそのためです。Kubernetes 1.19には、APIレベルの追跡機能などの興味深い進化がいくつかあります。この追跡機能では、APIが必要以上に長期間ベータに留まることの防止や、廃止予定のAPI呼び出しに対して警告することが可能になっています。

Kubelet用のクライアントTLS証明書のローテーションも注目すべき機能です。セキュリティ上重要な機能が、1.19で安定版に加わっています。最後はストレージ容量の追跡機能です。ポッドをデプロイする時に永続化ストレージ・ドライブの監視が可能になったことで、リソースアロケーションを支援すると同時に、動的なストレージプロビジョニングへの足掛かりにもなっています。

InfoQ: Kubernetesのコミュニティディストリビューションに対して、Canonicalはどのような付加価値を提供するのでしょうか?

Chalkias: Cannonicalは2つのディストリビューションがあって、いずれもアップストリームのKubernetesに完全に準拠しています。Charmed Kubernetesは、0~1,500日間の宣言操作(declarative operations)が可能な企業向けマルチクラウドKubernetesです。コンテナオーケストレーションや下位インフラストラクチャに煩わされることなく、自分たちのネイティブアプリケーションに集中することが可能になります。MicroK8sは、ワークステーションやエッジ、IoTアプリケーションを対象とするzero-ops Kubernetesです。最も一般的なKubernetesアドオンを装備していて、開発から運用までのKubernetes on-railsを実現します。

InfoQ: 先日開催されたKubeCon + CloudNatievCon EU 2020について聞かせてください。仮想エクスペリエンスについてどう思いましたか、また、開発者やアーキテクトにとって、今回のカンファレンスはどのような意義があったのでしょうか?

Chalkias: 仮想イベントを推進するテクノロジは、ライブイベントでの個人間の対話を再現するという課題を、今に至っても解決できていません。そうではありますが、Linux FoundationのイベントチームとCNCFコミュニティが協力して、技術系のみならずビジネス関係の参加者にも興味深いセッションやアクティビティを含んだ、包括的な仮想イベントとして大きな成功を収めることができました。

おもなポイントとしては、

  • CNCFコミュニティの大幅な成長 — 企業がクラウド採用によるCOVID時代への対応を試みていることから、そのランクに参加するプロジェクトや、プロジェクトにコントリビュートしてイベントに参加するユーザが増えている。
  • ケーススタディセッションやエンドユーザパネル、エンドユーザ主導のTechnology Radarを通じて、CNCFがエンドユーザを重視していること。
  • サービスメッシュテクノロジの急激な興隆 — Consul、Istio、Linkerd、Envoy、OpenServiceMeshなどのソリューションによって、18パーセントのビジネス組織がサービスメッシュを実務で運用している。

InfoQ: サービスメッシュはカンファレンスでも、多くの講演で取り上げられていました。Canonicalとしては、サービスメッシュや関連技術の採用を容易にするような、具体的な計画はありますか?

Chalkias: 当社のディストリビューションはいずれも、サービスメッシュとしてIstioとLinkerdをサポートしています。当社のディストリビューションに統合可能なサービスメッシュと、その開発に関わるコミュニティの動きを見守りながら、このテクノロジの採用に関して、当社の顧客と協力して開発を進めているところです。

InfoQ: 話は変わりますが、CanonicalはMicrosoftとの協同開発でWSL 2 GA for Windowsを発表しています。WSLの開発動機、アーキテクチャ、動向、ロードマップ、クラウド対応の見込みなどについて教えて頂けますか?

Chalkias: 当社はWindows Subsystem for Linuxのバンドルが始まった頃から、Microsoftと提携しています。より多くの選択肢を提供して、Ubuntuをより多くの開発者に届けることが目的でした。WSL 2では、完全なLinuxバイナリアプリケーション互換性とパフォーマンス向上を提供する新たなアーキテクチャに基づいているため、大きなシフトが導入されることになります。WSL 2は軽量な仮想マシン内で動作する本物のLinuxカーネルを使用しており、2秒以下で起動します。Microsoftとの提携を通じて設計されたUbuntu 20.04 LTSは、WSL 2との完璧なペアリングと機能拡張を実現しています。

非常に多くの企業が、WSL 2でUbuntuを採用し、活用しています。コストをかけることなく、自身のワークステーションをAI/ML、クラウドDevOps、さらにはシームレスで高度な相互運用性を備えたハイブリッド環境へと拡張しているのです。WSLの次は、GPUとGUIのアプリケーションサポートを提供する予定です。開発中の新機能は、WSL上でUbuntuを使用するユーザを、GPUを利用するアプリケーションや開発におけるNVIDIA CUDAやDirectMLサポートのようなワークフローから開放して、MicroK8s上でKubeflowを使用できるようにするものです。さらに、Linux GUIアプリケーションのサポートを拡張して、GNOME BuilderやKDeveloper、Emacsなどのツールを使用した、ネイティブでクロスプラットフォームな開発を可能にします。他にも開発中のアイデアがたくさんあるので、9月9~10日に開催するmicroWSLConfで、新機能やロードマップアイテムの簡単な紹介を行う予定です。

InfoQ: KubernetesとCloud Nativeコミュニティの背後には大きな勢いがありますが、これらのテクノロジを企業が採用する上で、大きな課題となっているものは何でしょう、またCanonicalとしては、そのような懸念にどう対処しようとしているのでしょうか?他に何か、加えておきたいことはありますか?

Chalkias: Kubernetesはまだ、比較的新しいテクノロジです。従ってビジネス、特にテクノロジの最先端を行っている訳ではない企業にとっては、新たな課題を持ち込むことになります。Kubernetesを採用する上で最も大きな問題は、データセンタの経済性に関するものです。モノリシックなレガシアプリケーションからマイクロサービスアーキテクチャとコンテナ化されたアプリへ移行することに経済的なメリットがあるのかどうか、企業は判断に苦慮しているのでコストは移行作業と結びつけられることが多いのですが、その他の重要な課題として、Kubernetesクラウドの運用に関わるコストや、Kubernetesの専門家が市場には比較的少ないことが挙げられます。実行中のワークロードに影響することのないアップグレードの実施や、トラフィックのピーク時にセキュリティパッチを適用する作業などといったことも懸念材料になっています。Kubernetesを取り巻く環境が成長と変化を続けてるため、"クラウドネイティブなスタック全般"の専門家を見つけるのは、いまだ難しいことなのです。当社は、Kubernetesやクラウドネイティブなアーキテクチャへの移行を考えている企業や、Kubernetesをコモディティとしてインフラストラクチャコストを削減してイノベーションへ投資したいと望む企業に対して、信頼できるアドバイザになりたいと考えています。当社のKubernetesディストリビューションはクラウドからエッジまで、開発から運用まで、マルチクラウドのあらゆるユースケースに対応することを可能にします。経験のない企業には、フルマネージドなKubernetesも提案しています。

要約すると、Chalkias氏の話は、KubeCon + CloudNatiev Con EU 2020カンファレンスの中心テーマであった、クラウドネイティブテクノロジの形成における、より多くのユーザの関与についてであり、さらにはKubernetesの将来や、Kubernetesとその関連テクノロジの普及と企業採用に対してCanonicalの果たす役割についてである。

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