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根回し(nemawashi)とコラボレーションボードを使ったリーダシップの明確化

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原文(投稿日:2020/10/22)へのリンク

ハイパフォーマンスチームに必要なのは管理ではなく、リードである。コラボレーションボード(collaborative board)は、リーダとチームが方向性とイニシアティブを一致させる場だ。ミーティングから会話を切り離すには、根回し(nemawashi)を使えばよい。

Fernando Guigon氏はAgile Tour London 2020で、氏がZenSumと呼ぶアプローチを使ったリーダシップの発揮方法について講演した。

過去2世紀にわたって組織は、古くは"思考者(thinker)"と"実践者(doer)"、現在は"管理(control)"と"実施(execution)"を区別することで、何よりも管理に重きを置いてきた、とGuigou氏は言う。

Taylorが時代遅れであることは誰もが認めるところです。それにも関わらず、私たちは今でも同じ思想を使い続けています。この事実を認識し、それを克服しなくてはなりません。人はリソースではないのです。個人の管理からチームのリードへと移行する必要があります。

今日のチームが経験している摩擦点を取り除き、組織全体が同じ考えを持つことによって、我々はアジャイルチームから完全にアジャイルな組織へと移ることができる、と主張する氏は、

ミーティングをキックオフ、サポート、承諾(acceptance)という3つのタイプに分離して、チームとリーダで構成するコラボレーティブボードを使って体系化することを提案する。根回しによって、ミーティングを焦点の明確な、短時間の、的を射たものにして、明確な結論を打ち出すことが可能になる。議論は時間を要したり、積極的な参加者のみが関与するものになる場合があるが、このアプローチならば方向性を保ちながら、権限付与と自律性を促進することができる。

新しいタイプの組織を構成するのは、発展し、前進し、考え、意思決定を行うチームであり、それに必要なコンディションを作ってチームをサポートすることがリーダの役割だ、とGuigou氏は言う。ZenSumは、このような環境を作る上で、リーダーシップチームを支援する。

InfoQはFernado Guigou氏に、アジャイル組織になるということ、ZenSum、根回し、コラボレーティブボードについてインタビューした。

InfoQ: "アジャイルチームを持つ組織"から"アジャイル組織"に移行する上で、障害となるのは何でしょう?

Fernando Guigou: 一言で言えば、すべて(あるいは"考え方")です。

コンサルティングや新たな採用、あるいは認証といった形での投資によって、私たちがアジャイルを取り入れようとしても、古い考え方がまだ組織内に残っているのです。最高の大学の授業料を払えたとしても、知識を買うことはできません。

セラピストに行く時と同じようなものです。投資は必要ですが、それにも増して重要なのは、自分の側から大きな努力を払って習慣を変える必要がある、ということなのです。Frederic Lalouxの言うように、組織は作り変えられるのです。それは新たなアイデンティティであり、より明確な目標であり、仕事のやり方のすべてです。

InfoQ: ZenSumとは何でしょう、何を提供することを目的としているのでしょうか?

Guigou: ZenSumはアジャイル組織への移行に直面した組織を、複数の方法で支援するためのアプローチです。

次のようなものを含んでいます。

  • さまざまなアジャイルアプローチの統合ビュー
  • アジャイルチームが発展するための明確なコンテキスト
  • 組織全体にわたって同じ思想を一貫して用いること

ZenSumは、つながりがないと考えられているさまざまなフレームワークを統合するものです。これについては、"Agile Tetris"というビデオで説明しています。

ZenSumは、実際の問題が何であるかに重きを置き、双方向コミュニケーションを促進し、明確なコンテキスト(目的、制約、ソリューション空間)を定義することによって、自主性、サーバントリーダシップ(servant leadership)、価値創造が結実するようにします。自主性は、"レッセフェール(laissez-faire、なすに任せよ)"やカオスとは違います。タイムボックスアプローチによる同意済みバウンダリ内におけるオーナシップであり、説明責任なのです。

InfoQ: ZenSumとDervOpsはどのように関わっているのでしょうか?

Guigou: DevOpsには2つの面があります。ひとつには、コラボレーションの文化的側面があります。これは不可欠なもので、ZenSumのコアバリューでもあります。もう一面は、これまででは考えられなかったものを可能にする、テクノロジの驚異的な発展に基づく強固な基盤です。

どちらも必要なものです。考え方としては、完全な互換性を持ったさまざまなアプローチを"全体像(big picture)"に組み上げる、ということになります。

例えば、スプリント毎にすべてを手作業でテストしなければならないようでは、スクラムの適切な導入は無理な話です。今日のソフトウェア開発でデプロイメントパイプラインを持たないというのは、机や椅子やデスクライトがないのと同じようなものです。そのような状態でプロジェクトを実行しているのであれば、事前計画に多くの時間を割く代わりに、その時間をパイプライン構築に着手するために使ってください。

InfoQ: ZenSumは根回しをどのようにサポートしているのでしょう、その目的は何なのでしょうか?

Guigou: 私は90年代から、ミーティングに関する不満を耳にしてきました。テニスゲームのようなミーティング — ふたりの参加者が意見を交わし合って、他の人たちは意見が行き来するのを見ている状態が多すぎるのです。

多くのミーティングは結論の出ない会話(conversation)に過ぎません。そのような状態を乗り越えられないようなのです。ミーティングも会話も必要である、しかし一緒にしてはならない — ここがポイントです。

根回しはここで、会話とミーティングの分離を求めます。スクラムで違うイベントとして行うように、それぞれが明確な目的を持つのです。

ミーティングは公式かつ具体的で、ポイントが決められています。サプライズはない、という前提です。事前に議論したすべてのものを公式に認める場であり、全員が同じ立ち位置に立つための集まりなのです。決定が伝達されて公式に合意される、公式な瞬間がミーティングです。

会話はそうではなく、アドホックに始められます。必要な頻度で、必要な時間を掛けて行われ、必要な(関心のある)参加者のみが関与します。焦点を絞った議論はここで行われます。

この分離が根回しなのです。単純ですが、結果はパワフルです。

InfoQ: コラボレーションボードの役割について教えてください、組織の連携を実現する上で、どのような効果があるのでしょうか?

Guigou: 連携は主として、リーダシップの責任です。

ですが、リーダがマネージャのように振る舞うことが非常に多いのです。昔の"思考者(Thinker)"のように、多くを決定し過ぎています。

そうではなく、リーダは、ハイパフォーマンスチームが思考し意思決定するためのコンディションを作り上げ、決定事項を自律的かつ整合性のあるものにするための基準を明確化するべきなのです。

人はいつでも意思決定をするものですが、それが間違っている場合もあります。明確な兆候は、誰もが"忙しい"にも関わらず、些細な部分に多大な労力を費やして、重要なポイントを見逃したり遅れたりする、というものです。

コラボレーションボードはチームとリーダが会う場所です。ボトムアップで与えられた課題をボトムアップの提案によって明確化することで、ビジョンへの方向性を維持し、本来の問題に焦点を合わせるのです。

ここでの根回しは、承認を確実にする役割を果たします。リーダ層はコストやメリット、リスクに基づいた意思決定をし、他のチームとの整合性に気を配ります。

ミーティングには、キックオフ、サポート、承諾という3つのタイプがあります。

リーダシップとはチームにアクティビティを割り当てるものではなく、問題や、何ができるかというビジョンをもたらすものなのです。それを受けたチームは、この方向へ進むための独自の提案を持ち上げます。それがキックオフミーティングで承認されることにより、サイクル全体が起動するのです。

重要なのはサポートミーティングです。サポートミーティングは、チームがフィードバックやサポートを求める場です。状況報告の場ではありません。状況報告では、物事がポジティブに表現される傾向があるからです。サポートミーティングの目的は真逆です — リスクや問題点を報告することで、リーダシップがチームの成功を支援する場なのです。

最後の承諾ミーティングではサプライズはなく、結果をつつがなく受け入れるべきです。リスクは事前に十分キャッチして、リーダによる支援を可能にする必要があります。ここでも根回しが、ミーティングの短縮と単純化に一役買います。

システム全体は自然のエコシステムのように動作し、チーム(あるいはリーダ層を含めた、チームによるチーム)はその中で価値を提供しながら成長し、発展していくのです。失敗した場合はスコープが縮小され、最終的にはそのチームメンバが他のチームに参加して学習します。

チームは、自らが共同作業者として選んだリーダに対して独自に練り上げた提案と、提示された中から自らが選択した課題に立脚して構成されます。

これらすべてが完全に透過的なコンテキストの中で行われることで、必要な場所で情報を利用できるようにするのです。

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