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ソフトウェアチームを非同期コミュニケーションに移行する

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原文(投稿日:2021/12/23)へのリンク

一部の企業がオフィスに立ち戻り、ハイブリッドな形での仕事を始めている中で、我々の業界に多いと思われる、リモートワークの継続を希望する社員が疎外される危険性が生じている。James Stanier氏は、非同期的なコミュニケーション手段を多用して、ミーティングで話をするよりも文書を書くことに、より多くの時間を使うように提案する。

Stanier氏はQCon Plus November 2021で、リモートワークのための非同期コミュニケーションへの移行について講演した。

ハイブリッドな環境で働く人たちが、オフラインでの会話やホワイトボード、ランチ、仕事後の飲酒といった過去の働き方に戻るようなことがあれば、オフィスにいない人たちは疎外されることになるだろう、とStanier氏は言う。

遠隔地にいる人たちには、オフィスにいる人たちが自らの頭の中やホワイトボードに書き留めている、重要な情報へのインターフェース — あるいはアクセス手段がありません。

遠隔地で、特にフレキシブルな就業時間や違う時間帯で働く人たちに対して、仕事の状況を読み、学び、対話するチャンスをより多く与えるために、もっと非同期的なコミュニケーション手段を使う努力をするべきだ、とStainer氏は提案する。

非同期コミュニケーションがパンデミック以前においても使われていたことに注目するべきだ、とStainer氏は言う。同じオフィスに席を置くチームであっても、Slackを使って互いにチャットすることがあった。しかしながら、完全なリモートワークを実践する場合や、全社員をリモートワーカの対象にするような場合には、非同期コミュニケーションの持つ意図性がそれとは違うものになる、とStanier氏は説明する。

明確で、簡潔で、意図的なコミュニケーション方法の必要性が認識されるようになります。ミーティングで話すよりも、互いに向けた文章を書くことに時間を費やすようになるのです。

そのためにStanier氏は、リモートワークでない人たちも含めて、すべての社員をリモートワーカとして扱うように提案する。

同じロケーションにいる人たちも含めた全員がカメラとマイクを通じてミーティングに参加する、というように、すべての人たちにリモーワーカとして対処すれば、リモートワーカのエクスペリエンスは大幅に標準化されることになります。そうなれば、意思決定の文書化とアーカイブが重要になることは間違いありません。それが働き方の変革を生み出し、ハイブリッドワークが成功する可能性を高めることになるのです。

さらにStanier氏は、チームがより非同期的なコミュニケーションを導入する際の課題についても言及する。

文章を書くことが得意な人ばかりではありません。私は常々、文章を書くということは、この業界ではスーパーパワーなのだと思っています — 書き留められた言葉というものは、直接会って話をするよりも、より明確に、より遠くへ、より長く、影響を与えることができます。職場において自身の母国語以外の言語でコミュニケーションをしている人たちや、直接会うことで人間関係や絆を築くことに慣れている人たちは、これが難しいのです。

非同期コミュニケーションは新たなリーダの登場を促す可能性も秘めている、とStainer氏は指摘する。

旧態依然とした職場では柔和で目立たない存在だった、新たな時代のリーダたちが、今、自らの時代を迎えています。

非同期的な対話へと意図的に移行するためには、互いに忍耐強く対応する必要がある、それは今後ますます必要とされるスキルだからだ、とStanier氏は結論付けている。

James Stanier氏に、リモートワークにおける非同期コミュニケーションについて聞いた。

InfoQ: リモートワークを行う上で、最も大きなコミュニケーション上の課題は何でしょう?

James Stanier: 私たちは長い間、オフィスをコミュニケーション上のハブとして過ごしてきました。チームと席を共にして、深く考えずにその場でコミュニケーションし、会議室やホワイトボードを使った共同作業をしていました。リモートワークは、このような対話パターンのあり方を根本から覆します — 書き物による非同期的なコミュニケーションへの依存度が高まり、コラボレーションには物理的なツールに代えてディジタルツールを使うことが必要になります。対話も、これまでよりも注意深く、明確に計画されたものでなければなりません。

InfoQ: リモートワークでは、なぜ非同期コミュニケーションに移行しなければならないのでしょうか?

Stanier: すべてのコミュニケーションを非同期的にする必要はありません。ですが、非同期コミュニケーションへの移行は、Eメールやチャットや資料など、対話時間を越えて永続化するアーティファクトを、結果としてより多く残すことになります。これらのアーティファクトは蓄積や検索が可能です。さらに重要な点として、チームが何を考えたのか、現在何をしているのか、将来何をするのか、といったことに関する監査証跡の作成が可能になるのです。

InfoQ: そのような監査証跡を残すことのメリットは何でしょう?

Stanier: 非同期コミュニケーションが増えることの最大のメリットは、アーカイブし、発見し、将来的に構築することの可能なアーティファクトの増加です。チームが3年間にわたって設計資料を作成すれば、そこで行われたすべての意思決定とその理由に関するアーカイブが完成します — 新たに参加するメンバにとって、これは素晴らしいリソースになります。社内ミーティングをすべて記録し、保存している会社は、自らの社史を書いていることになります。リモートコラボレーションはある意味において、外部のユーザに対するドキュメントの向上にもつながります — 優れたAPI資料を作成することが、企業に対しても、そのクライアントに対しても、2重の意味で影響力を持つからです。

InfoQ: 非同期コミュニケーションは、多くのチームが現在行っているコミュニケーションとはどのように違うのでしょうか?

Stanier: 非同期コミュニケーションを使う場合には、明確で、簡潔で、意図を持ったコミュニケーションを行う必要があります。例えば、コードベースに何らかの重要な変更を行う上で、その高レベルな実装戦略を、第3者がコメント可能な設計資料(Googleの提供するテンプレートがあります)として投げるために時間を使うとします。その時間は、自分のコードや機能に関するドキュメント作成に使われたのです。これはリモートで非同期的なコミュニケーションに移行した成果です。非同期コミュニケーションでは、あなたが寝ている間に対話が進行する場合もあります。そのためのコミュニケーションは、あなたのメッセージを、可能な限り曖昧さのない、インパクトのある方法で伝えらるものでなくてはなりません。それによって、誰かが一日を無駄にするのか、前に進めるのか、という違いを生じさせるかも知れないからです。

InfoQ: 非同期コミュニケーションから同期コミュニケーションまでの領域分布は、どのようなものなのでしょうか?

Stanier: 図で示すのが最も分かりやすいでしょう。

非同期コミュニケーション

左から右に向かって、完全な同期型から非同期型へと進んでいます。常にオフィスで作業しているチームは、この図の左端に位置しているので、リモートワークには対応できません。リモートワークをサポートするようなコミュニケーションパターンに移行するためには、コミュニケーションを意識的に右方向へと押し進める必要があります。

InfoQ: コラボレーションの方法を改善したいと思う分散型チームに対して、何かアドバイスはありますか?

Stanier: 自分たちのコミュニケーションの同期レベルを確認した上で、日常のやり取りの多くを今より1~2段階、右へシフトするような実験をしてみてください。毎日のスタンドアップを書きもので非同期に行ってもよいですし、ステータスミーティングを記述の更新に代えるのもよいでしょう。全員をリモートワーカとして扱うことから始めるのも一法です。お互いの対話方法がどう変わるか、仕事のペースがどう変わるか、どのようなドキュメントが書き残されるのかを見てください。よい結果が得られることを保証します。

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