Apache Software Foundationが統合開発環境(IDE)のApache NetBeans 13をリリースした。Maven、Gradle、PHPの部分的アップグレードに加えて、従来よりもシンプルでスムーズな起動エクスペリエンスが実現されているという。Javaで記述され、当初はJavaコミュニティを対象としていたNetBeansだが、現在はHTML5、PHP、C/C++などの言語サポートを備えた、クロスプラットフォームの多言語IDEである。
今回のリリースには、ルック・アンド・フィールのデフォルトとして、FlatLaf Lightテーマも含まれている。Java Swingデスクトップアプリケーション用に開発されたオープンソースのクロスプラットフォームルック・アンド・フィールであるFlatLafは、グラデーションや影を持たず、HiDPI表示をサポートする。MetalやNumbusなど他のルック・アンド・フィールのテーマや、FlatLaf Darkも引き続き選択が可能だ。
NetBeans 13には、NetBeans用にチューンされたJavaコンパイラのフォークであるnb-javac
がバンドルされている。NetBeansプロジェクトでは、構文のカラー表示やコード補完、リファクタリングといった機能において、構文解析や軸解析といったさまざまな理由でnb-javac
を活用している。ただし、これまでと同じように、ユーザの希望するJDKビルドのコンパイラを使用することも可能である。これまでのリリースでは、IDEの起動において、初めてJavaプロジェクトを作成する際にダイアログボックスが表示されて、JDKのインストールとアクティベーションを行う必要があった。今回のリリースでは、この必要がなくなった。これがユーザに対して、よりスムーズな起動エクスペリエンスを実現したという根拠になっている。Javaプロジェクトに関するバグも数多く修正されている。
今回のリリースにはMaven 3.8.4へのアップグレードに加えて、mnvd
の使用に必要なMaven Daemonの最小限のサポートが含まれている。mvnd
をプロジェクトに組み込んでポータブルにすれば、自分のマシンにMavenをインストールする必要がなくなるため、多くのユーザがその恩恵を受けられるだろう。
Gradleのサポートも強化されている。テンプレート操作におけるプロジェクトのローディングなどの大きなバグが解消され、Java-platform
Gradleプラグインの最小限のサポートが追加された。
NetBeansはJava以外にも、GroovyやPHP、JavaScript、C/C++といった主要言語をサポートしている。今回のリリースでは、クラスフィールドのコード補完やソース解析時の無限ループの発生など、Groovyに関する既存のバグがいくつか修正されている。シフト+F6というショートカットを使用して、プロジェクトの一部ではないGroovyスクリプトを独立して実行することも可能になった。
NetBeans 13では、PHP 8.1のサポートが強化されるとともに、PHPの静的解析ツールであるPHPStanもサポートされている。PHPStanを開発したOndřej Mirtes氏はこのユーティリティの説明として、次のように記している。
PHPStanをご存じない方のために、PHPStanはコード内のバグ検出に焦点を置いたPHPの静的アナライザです。アプリケーションを実行するより前に、あらゆるクラスのバグをキャッチします。
当初"Xelfi for Java IDE"という名称であったNetBeansは、1996年に、チェコのシャルル大学に籍を置く数学と物理学の学生グループによって開発された。その後、Sun MicrosystemsのフラッグシップIDEになり、2000年6月にオープンソースとして公開されている。
OracleがApacheに対して最初にNetBeansの寄贈を提案した1年後の2017年9月、Apacheのインキュベーションプロセスに従った最初のコード寄贈が行われた。
Javaの父であり、Amazon Web Servicesに籍を置く著名なエンジニアであり、NetBeansのユーザとして広く知られるJames Gosling氏は、次のようなツイートで今回の新リリースを歓迎している。
NetBeans 13が公開されました!しばらく前から早期リリースを使っていましたが、なかなか良いです。ぜひ使ってみてください。さらに素晴らしいことに、すべてオープンソースなので、あなたも開発に協力できます!
NetBeans 13には、他にも多数の修正が加えられている。NetBeansを使用したい開発者は、今すぐNetBeans 13をダウンロードすることができる。新規ユーザには、NetBeansの"Getting Help"ページにある多数のチュートリアルが参考になる。