ゲームをビジネスオーナの観点で"面白い"ものにするためには、ビジネスニーズとの整合性を確保することが必要になる。そのようなゲームの立案は、"コンテキストを探る"、"ターゲットグループを知る"、"フォーカスを定義する"、"ファシリテーションの方法を決定する"という4つのステップで行えばよい。
Anne Hoffmann氏はOOP 2022で、アジャイルゲームによるビジネスインパクトの創出について講演した。
ゲームと"遊び"との違いについて、Hoffmann氏は次のように説明する。
"遊び"とは、意図を持たない行為です — ただ単に遊んだり、遊ぶこと自体を意図して行うのが"遊び"です。これに対してゲームは、ゴールのような何かを達成する、ということを意図して行う行為です。ビジネスは設定されたビジネス目標を達成する行為ですから、私たちのビジネス環境に相応しいのはゲームの方です。
ワークショップにおいて、ゲームはアイスブレーカ(icebreaker)や啓発者(enlighter)、あるいは学習シーケンスの一環として機能する可能性がある、とHoffmann氏は述べた上で、ゲームの準備段階において、指針となるトピックと回答すべき質問とを提供する"4ステップのモデル"を紹介した。
- コンテキスト — 全体的なコンテキストは何か?スポンサなどとの間で、どのような目標が合意されているのか?
- ターゲットグループ — ターゲットグループには誰がいるのか?参加者は何を期待し、何を望み、何を必要としているのか?
- フォーカス — ゲームに設定したいフォーカスは何か?エクスペリエンスはどうあるべきか?
- ファシリテーション — このゲームのファシリテータとして、前項で定義したエクスペリエンスを創造するために何が必要か?ゲームを公開してその感想を聞くのであれば、どのような質問をしたいか?
この4ステップモデルは、ゲームの効率的な立案作業をサポートすると同時に、ゲームをワークショップ全体とその目標に適したものにする。これこそがビジネスインパクトを創造するということだ、とHoffmann氏は結論付ける。
アジャイルビジネスゲームの立案に関して、Anne Hoffmann氏に聞いた。
InfoQ: アジャイルゲームをどのように定義しますか?
Anne Hoffmann: アジャイルゲームとは、アジャイル指向ビジネスの範疇にあるゲームです。例で説明しましょう。例えば、あなたがコミュニケーションに関するワークショップの責任者であるとします。あなたは、ワークショップのスポンサと協力して、対処すべき事項のリストを書き上げたのですが、スポンサはさらに、ワークショップに革新的な部分や何らかのインタラクションが欲しい、と言っています。アジャイルゲームを導入して、いくつかのトピックを進めることができれば、その解決策になりそうです。そのためには、ワークショップのコンテキストの中にゲームを取り込む上で、ベストな方法を見付けなくてはなりません。
InfoQ: 4ステップモデルをゲームの立案にどうやって使うのか、例を挙げて頂けますか?
Hoffmann: そうですね。コミュニケーションを改善したいグループを対象とした"Yes andゲーム"をセットアップする、という例にしましょう。立案段階において4ステップモデルを使用すれば、次のようになります。
1 コンテキスト — コミュニケーションに関するトレーニングワークショップ。個人のコミュニケーションとその改善がそのトピックになる。
2 トレーニンググループ — 自己の成長に対して強いニーズを持つ、若手プロジェクトマネージャのグループ。
3 フォーカス — (所与のコンテキストにおける)個人のコミュニケーションと自己の成長のための領域発見に焦点を置く。
4. ファシリテーション — "自己と他者のコミュニケーションスタイルについて何を観察したか"、"自身のコミュニケーションスタイルについて何を学んだか"、"個人的なハイライトは何か"というように、自己の成長を省察するための質問集を用意する。これらが出発点として機能する。
InfoQ: ゲームはどうやってやるのでしょうか?
Hoffmann: "Yes and"はとても簡単な即興劇のゲームです。
プレイ方法を説明しましょう。3~5人のグループで、まずグループとしてのストーリを作ります。各人が文をひとつずつ語るのです。これを2ラウンド行います。
第1ラウンドでは、すべての文を"Yes, but"で始めます。
第2ラウンドでは、すべての文を"Yes, and"で始めます。
この方法で、いくつかのストーリを作ります。各セッションの終わりに感想を求めて、その結果について話し合ってください。
両方のラウンドをプレイした後には、何が違ったのかを比較したくなるでしょう。そうなればもう一度、感想と結果の議論を行うのです。