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Hugging FaceとEntalpicがLeMaterialを発表:AIが材料科学を変える

原文リンク(2024-12-20)

EntalpicHugging Faceと共同で、材料科学における重要な課題に取り組むオープンソースイニシアチブ、LeMaterialを立ち上げた。LeMaterialは、主要なリソースからのデータを、670万件のエントリーによる調和のとれたデータセットであるLeMat-Bulkに統合することで、材料探索を合理化し、LED、バッテリー、太陽電池などの分野における技術革新の加速を目的としている。

材料科学は量子化学と機械学習の交差点に位置し、さまざまな技術を進歩させる機会を提供している。しかし、この分野は多様なソースからのデータを統合するというハードルに直面している。これらのデータセットは広範囲ではあるが、フォーマット、パラメータ、スコープが異なっており、以下のような課題を生み出している。

  • 一貫性がないフォーマットやフィールドの定義。
  • Materials Projectでの酸化物重視といったバイアス。
  • NOMAD が材料特性よりも量子化学に重点を置いているといった範囲の限定。
  • データベース間で類似した材料を結びつける識別子の欠如。

これらの問題は、MLモデルのトレーニング、相図※の構築、新物質の発見を複雑にしている。LeMaterialは、こういった主要なソースからのデータをLeMat-Bulkに統合することで、これらの課題に対処しようとしている。LeMat-Bulkは、670万のエントリーと7つの材料特性を持つ調和されたデータセットである。
※訳者により引用補足。

LeMaterialは、OptimadeMaterials ProjectAlexandriaOQMDなどの確立されたリソースを基に構築され、まとまりのあるフレームワークに組み込まれている。LeMaterialの特徴には以下のようなものがある。

  • 標準化:LeMat-Bulkは、データセット間で一貫した特性定義を保証する。
  • データセットの互換性:研究者は、PBE、PBESol、またはSCAN関数を使用して計算された互換性のあるサブセットにアクセスしたり、互換性のないより広範なサブセットを探索したりできる。
  • 重複排除:材料フィンガープリンティング・アルゴリズムが重複構造を識別し、データベース間で類似材料を結びつける。

LeMaterialの革新的な貢献のひとつは、材料フィンガープリンティング手法である。この手法では、材料に一意の識別子を割り当てるため、研究者は材料が新規のものか、カタログ化されたものかを素早く判断できる。PymatgenのStructureMatcherのような従来の手法と比較して、フィンガープリンティング・アルゴリズムは、特に大規模なデータセットを扱う場合に、より高い効率と精度を示している。

LeMaterialは、様々なアプリケーションを通じて材料科学研究に大きな影響を与えるところまで来ている。LeMaterialは、詳細な相図の構築を可能にし、研究者に化学空間※をより効果的に分析する能力を提供する。このプロジェクトは、異なるDFT関数間の材料特性の比較を容易にし、その挙動と変化に関する知見(分析によって得られた発見)を提供する。
※訳者により引用補足。

EntalpicのCEO兼共同設立者であるMathieu Galtier氏は、このリリースは材料科学界にとって重要であると強調する

たしかに、スタートアップがこのようなコア技術をオープンソース化するのは異例だが、Entalpicは学術、スタートアップ、産業のエコシステムとともにこそ成功すると心から信じている。我々の分野はまだ競争力がない。AIが持続可能な再産業化の力になると、協力して示さなければならない。

LeMaterialは、コミュニティ主導の取り組みとして意図されている。研究者は、フィードバックの提供、データセットの拡大、ツールの開発による貢献が奨励される。

IBMの主任研究スタッフであるPeter W. J. Staar氏は、コラボレーションの可能性を強調した

これは素晴らしい取り組みだ! 我々もこの分野で研究しており(PatCID、Hugging Face上のホストモデルとデータセット)、ぜひ協力したい。

興味のある開発者は、Hugging Faceでデータセットを探すか、GitHub経由で貢献が可能だ。

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