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グーグル社、Cloud WANで企業ネットワークの革新を狙う

原文リンク(2025-04-30)

グーグル社は、Cloud WANの一般公開を発表した。今回発表となったCloud WANは、自社グローバルネットワークインフラを活用したCloud Wide Area Network(WAN)の新たなマネージドソリューションである。

Cloud WANは安全性、信頼性、パフォーマンスの高いエンタープライズバックボーンの実現のために設計されたマネージドソリューションであり、従来のマルチプロトコルラベルスイッチング(MPLS)ネットワークや導入が複雑なSD-WANの代替ツールとしての使用が期待されている。

グーグル社のグローバルネットワークは、202箇所のポイントオブプレゼンス(PoP)、200万マイル以上に及ぶ光ファイバー、33本の海底ケーブルで構成されており、SLA(サービス品質保証)では99.99%の信頼性を獲得している。このグローバルネットワークにがGoogle CloudやCross-Cloud Networkソリューションの両方を支えており、今日ではCloud WANの基盤形成もまかなっているとのことだ。

今回の発表の狙いは、SaaS・クラウドアプリケーションの導入やAIの台頭で複雑化の加速するエンタープライズネットワークへの対応である。グーグル社では、従来のMPLSネットワークではコストが高騰する一方、ダイレクトインターネットアクセス(DIA)実装型のSD-WANでもアプリケーション性能やセキュリティにおける問題が生じる可能性を指摘している。原因としては、分散型AIインフラの登場でスケーラビリティ、セキュリティ、コスト効率化への要求が高まりを受けて、ネットワークの要件が急速に複雑化している現状が挙げられる。

Google Cloudのブログ投稿で、グローバルネットワーク技術チームのチームリード Subhasree Mandal氏は、AI時代が新たな課題をもたらしていると解説する。AI時代のもたらす課題の筆頭としては、AI駆動アプリの利用やモデルトレーニングによるネットワークトラフィックの増大が挙げられる。

弊社では、マルチシャードネットワークによる水平型アーキテクチャを導入し、ネットワークキャパシティの迅速な拡張を行ってきました。このアーキテクチャでは、各シャードがネットワーク内で異なるインスタンスとして互いに独立しています。 需要の増大に併せた各シャード内部でのネットワークスケーリングや、シャード数の増大が可能です。ですが、この方法では、複数のISP(インターネットサービスプロバイダー)をネットワークキャパシティー確保に利用しているようなものであり、インターネット回線における冗長性も生じてしまいます。

Cloud WANでは、エンタープライズコネクティビティの簡素化を目指した統合ソリューションを提供しており、データセンター間、支社間、キャンパス間などの離れた拠点を回線接続でつなげることが可能だ。

(出典: Google Cloudウェブサイト

ブログ投稿の中で、同社はCloud WANの主な利用ケースとして以下の2つを挙げている。

  • 高性能なクロスリージョン接続: データセンターネットワークが広範囲にわたる大規模なグローバル企業であれば、Cloud InterconnectやCross-Cloud Interconnect(マルチクラウド接続用)などの、フレキシブルな接続オプションを検討するのもよいだろう。現在プレビュー段階のCross-Site Interconnect新機能では、データセンター間でのL2プライベート接続が可能になっている。

  • 支社間・キャンパス間でのネットワーク移行: Cloud WANでは、同社のプレミアムティアネットワークが拡張されており、支社間やキャンパス間でのクラウドリソースやSaaSアプリケーション接続セキュリティが向上している。これにより、マネージドソリューションとセキュリティが一括化できるため、総所有コスト(TCO)の削減を実現している。また同社のプレミアムティアネットワークはアプリケーションパフォーマンスの最適化を目的に設計されており、ピアリング接続を広範囲に活用しグーグルネットワークトラフィックの追跡効率が最大限にまで引き上げられている。

(出典:グーグルブログ投稿

Nestle社のITプラットフォーム接続・音声部門のシニアプラットフォームグループマネージャー Matteo Di Maggio氏は、Cloud WANに関するYouTube動画で以下の見解を述べている。

Cloud WANへ移行したところ、もうパフォーマンスの向上を実感できています。時代遅れになったテクノロジーを一新することで、さらなるコスト削減が期待できるでしょう。

グーグル社は、Cloud WANの導入により、公共インターネット比で最大40%パフォーマンスが加速できるほか、カスタマーマネージド型WANソリューションで最大40%のTCO(総所有コスト)の削減が可能になると発表している。 同社ではTCOを削減する取り組みとして、MPLSへの依存度の軽減、キャリアニュートラルなファシリティのデプロイ統合、柔軟な価格オプションの設定を実施している。

また、顧客企業で使用しているマネージドサービスプロバイダー(MSP)からもCloud WANへのデータ移行や運用を行えるほか、Accenture社、HCLTech社、Wipro社をはじめとするグローバルシステムインテグレーター(GSI)からもCloud WANサービスが提供されていることのことである。

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