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「Ameba流Scrum」を浸透させるために私たちが実践したこと

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現在、コミュニティサービスだけでも40以上のサービスが提供されている、サイバーエージェントの「Ameba」サービス群。ネットユーザーの嗜好をとらえたサービスを短期間で次々とリリースできる秘訣は、各開発チームが導入し実践するScrum開発手法にある。ScrumはAmebaにおいてどのように浸透していったのか。同社アメーバ事業本部 サービス部門 コミュニティ事業部の大﨑浩崇氏に推進の過程やコツを聞いた。


エンジニアの大量採用を契機に、開発プロセスの問題意識が芽生える


サイバーエージェントのコア事業であるAmebaは、ベンチャースピリットを持ち続けながら業容・規模を拡大していった同社の経営方針や社風をよく表しているブランド名称と言える。まさに時代のニーズに即して姿形を変えながら増殖していくAmebaのサービス群を見るに、旧来の開発スタイルでは到底成り立たないことは容易に想像がつく。

 そんな同社で日々開発に携わるエンジニアたちが実践するのが、アジャイル開発手法のScrumだ。大崎氏によれば、ある時点で事業部トップから号令がかかり、そこから一斉に採用したわけではなく、現場のエンジニア発でいくつかの段階を経たのちに浸透していったという。

 「2007年~2011年頃、私たちはAmeba流Scrumの黎明期と呼んでいるのですが、目の前の業務に追われる日々で、開発プロセスの概念すら意識する余裕がありませんでした」と大崎氏は当時を振り返る。そんな中、2010年からサイバーエージェントはエンジニアの大量採用を始め、約3年間で社内のエンジニア比率が10%から45%へと急増する。大所帯となり、プロジェクト数も激増し、適切な開発プロセスなくしては先に進むことはおろか、コントロール不能に陥りかねない状況に直面した。

 「まさに混乱期を迎えたわけですが、この状態から開発プロセスに対する問題意識が芽生えました。多様な文化や働き方が入り交じることによって、必然的に開発の指針となるようなプロセスが求められていったからです」(大崎氏)
 

現場発の改善アクションが全社にも波及


2012年からは芽生えた問題意識が実践に移されることとなる。何人かのエンジニアが、自分のプロジェクトにスクラム開発を導入し始めた。「チームビルドはうまくいっていて、足りなかったのはプロセス、秩序でした。Scrumはフレームワークとして理解しやすく、開発マニュアルとしての役割にもなるので、現場のエンジニアの理解は早かったです」と大崎氏。

 幾つかの開発チームでの実践では、急に差し込まれたタスクにも対応するための重複不可の優先順位づけや、バーンダウンチャートを活用した進捗の正確な把握と予測などが取り組まれ、進捗の見える化・自律的なコミュニケーションといったScrumの基本的な考え方が他のチームにも伝播していった。「当社は、社内勉強会が活発で、他のチームが成功していたなら、自らのチームにも取り入れる形で、Scrumが徐々に浸透していきました」と同氏は話す。またこの頃、社内だけでなく「アジャイルサムライ道場」という読書会やワークショップを開催するなど、社外のエンジニアとの交流も始まっている。

 2013年になると、Scrumによるサービス開発のノウハウが蓄積され、多くのチームが企画からリリースまでを1カ月から3カ月といった短期でこなしていく。こうしたScrum導入の取り組みと成果が研究レポートにまとめられ社内で表彰されるといった具合に、役員陣もエンジニアの働き方やプロセスの重要性について認識することとなる。大崎氏はこの頃より普及期を迎えたとして、「混乱の中で始まった、現場発のアクションが、役員陣や組織全体に浸透し始めたわけです」と話す。
 

目標を数値化して、Scrumによる開発プロセス改善を組織のミッションに位置づける
 

 ボトムアップ型でScrumの導入が広がり、ビジネス成果に生み出すことに成功したアメーバ事業本部。大半の開発チームにおいてScrumが浸透したことで、新たな課題も浮上している。

 「背景に社内での人材流動性を高めていく方向があり、エンジニアがどのチームに移ってもすぐに即戦力として活躍できるよう、開発の統一化を目指しています」と大崎氏。同氏によれば、Scrum開発支援ツールについては、社内で標準が正式に決められたことはないが、先行導入チームにならうかたちでデファクト標準的なツールが定まりつつあるという。具体的には、チケット駆動開発のためのチケット管理システムに「JIRA」、アジャイル補助ツールに「JIRA Agile」、コミュニケーションツールに「HipChat」、ドキュメント作成ツールに「Confluence」といったアトラシアン製ツール群である。

 アメーバ事業本部でのScrum導入の取り組みが順調に進んでいるのは、冒頭でも述べたサイバーエージェントの経営スタイルや社風との親和性が高かったことも大きいが、エンジニア発の開発プロセス改善の実践として学ぶことは多いはずだ。
導入のコツとして大崎氏は、経営陣や組織を巻き込み、組織としてのミッションを確立することの重要性を説く。「開発手法の改善自体はディフェンシブな取り組みです。そこで、具体的な目標をKPIなどの数値に落とし込み、Scrum開発プロセスの下での達成を組織のミッションと位置づけられるようにはたらきかける必要があるでしょう」

 

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