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Google Chromeの展望と分析

2008年9月1日、Googleは新しいオープンソース・ブラウザGoogle Chrome(リンク)を発表した(リンク)。誰の目から見てもGoogleはWebの大物であり、そのGoogleが発表する新しいWebブラウザであるから、予想に違わず注目、分析、予言の的となった。

公式発表に先だって、インターネット上ではかなりの噂が飛び交った。GoogleがChrome紹介のために作成したマンガ(リンク)が、公式発表と9月2日正午(米国太平洋夏時間)のChrome Windowsベータ版リリースに先んじて初お目見えしたからである。

InfoQでは、Google Chromeの公開とその影響について包括的な記事を組み立てるため、時間をかけてコミュニティやニュースメディア、ブロゴスフィアから展望と分析を収集した。

Chromeの紹介

GoogleはScott McCloud氏(リンク)によるマンガ(リンク)を通じてChromeをジャーナリストとブロガーに紹介した。McCloud氏は『Making Comics』(訳注:日本語版『マンガ学』)(リンク)の著者として有名である。McCloud氏がChrome開発者をインタビューし、分かりやすく言い替えてマンガの台詞にしているので、台詞はMcCloudと開発者の合作である。マンガでは、Googleがどの領域でChromeをライバルブラウザから差別化しようとしたかを紹介している。コンテンツよりアプリケーションに焦点を当てていることや、隔離してサンドボックス化したプロセス間の分離達成にプロセス指向アプローチを使用すること、単純化したタブ中心のユーザーインターフェース、高速レンダリングとjavascriptエンジン、ビルトインのincognito(匿名)ブラウジングモードである。

Chromeの売りはいたってシンプルなユーザーインターフェースで、タブ、アドレス/ナビゲーション兼用バー、オプションのツールバーという構成だ。インターフェースの単純化は最新のWebブラウザではごく当たり前の特徴になっているが、Googleはライバルの大半の一歩先を行っている。Ars Technica氏がこの件に関して以下のように述べている(リンク)。:

GoogleがChromeでとったアプローチには違いがあります。既存のWebブラウザから機能を取り除くというよりは、Googleはその色鮮やかな腕を一振りし、テーブルから機能をきれいさっぱり取り払ったのです。メニューセパレーターなんて忘れてしまいましょう。ブックマークメニューさえ必要でしょうか?一体全体、メニューバーなんて全く必要ないのでは?「無」からの出発です。仮定はナシです。必要とされる機能のみを、明確な設計概念に役立てるために追加するのです。

Chromeの特定機能がずば抜けて素晴らしいとか、Chromeの総合的な機能にSafariが驚いてブラウザ戦争に復帰するとかいうことではありません。Apple以外の者がこの分野で、これほど明確なリーダーシップをとったことに意義があるのです。Google Chromeから見れば、Safariのユーザーインターフェースは保守的に思え、Appleが大胆さに欠けているように見えます。そして革新に関していえば、長期的な図式では個々の成功や失敗以上に、全体的な斬新さという点に、いっそう大きな意味があります。

このようにインターフェースを単純化することにより、最も重要なコンテンツ、つまりユーザーがインタラクトしているWebサイトやWebアプリケーションに、いっそう集中できるようにしている。とりわけWebアプリケーションにとっては、Chromeはさらに装備を削減することも可能で、ナビゲーションツールバーや専用リンクさえないインターフェースになり、その結果、ChromeのウィンドウはWebブラウザではなくアプリケーションのように見える。ChromeにはGoogle Gears(リンク)が付属してくるが、Google Gearsの主な目的はWeb アプリケーションの能力を拡大し、デスクトップアプリケーションに近づけることであり、たとえば、ユーザーがインターネットに接続していない時でも、Webアプリケーションが機能できるようにすることである。

Googleは、Chromeの最上段にタブを置き、フレーム内のみならずフレーム外にもドラッグして新規ウィンドウを作成したり、別ウィンドウへタブを移動できるようにしたりすることにより、タブ・インターフェースを最も強調している。タブはお互い独立し、サンドボックス化されているので、個々のアプリケーションのように扱われ、タブ1つがうまく機能しなくても、Chrome全体のエクスペリエンスを台無しにするようなことはない。マンガではプロセス分離について多少詳しく紹介しているが、ChromiumサイトにはChromiumがサポートしている4つのプロセスモデル(リンク)と、この4つの長所と短所をより詳しく説明している。:

ベータリリースでは、Chromiumは4つの異なるプロセスモデルをサポートし、実験と測定を可能にしており、大部分のユーザーにマッチするデフォルトモデルの選択に役立つでしょう。

Chromiumはデフォルトで、ユーザーが訪問するWebサイトのインスタンス毎に別個のOSプロセスを使います。しかし、ユーザーはChromium起動時にコマンドラインスイッチを指定し、他のアーキテクチャから1つを選択できます -- ChromiumはWebサイトのインスタンス毎に別個のOSプロセスを使う代わりに、Webサイト毎に1つのプロセスを使うか、接続されたタブをグループとして隔離するか、すべてをひとつのプロセスに置くことができます。4モデルは、コンテンツの出所を反映するか、ブラウザのユーザーインターフェースを反映するか、あるいは両方を反映するかという点で違っているのです。

プロセスやスレッドの話題はいつも物議を醸すが(リンク)、Chromeの発表も例外ではない(リンク)

Chromeは、Incognitoという秘密のブラウジングモードも搭載している。ブラウザ履歴を保存せず、ウィンドウを閉じればcookieが消去されるという機能で、ユーザーは読み込み専用セッションでブラウズできる。

テクノロジーと内部

ChromeブラウザはChromiumプロジェクト(リンク)の成果であり、このプロジェクトではWebKit Webブラウザエンジン(リンク)を新しいGoogle V8 JavaScript Engine(リンク)やSkiaベクトルグラフィックス・エンジン(リンク)、Google Gears(リンク)に結びつけている。

WebKitブラウザエンジンは、KDEプロジェクトのKHTMLとKJSエンジンのフォークとしてAppleがスタートさせたもので、Safariブラウザの基礎となっている。WebKitはその後、KDEに再度採用されている。Googleは自らのAndroid携帯電話プラットフォームにすでにWebKitを利用しており、Googleにとっては当然のソリューション(リンク)となった。Chromeを紹介するマンガには、以下のように書かれている。:

WebKitは効率的にメモリを使い、埋め込みデバイスへの適合が容易で、さらに新米のブラウザ開発者にしてみれば、楽に習得して、うまく機能するコードベースが作れました。ブラウザは複雑です。WebKitがうまくできている点の1つに、シンプルにまとめられていることが挙げられます。

Windows初のベータ版で使われたWebKitのバージョンは、WebKit 525.13のようであり、最新バージョンではなく、多少のセキュリティ上の脆弱性を伴う(以下のセキュリティの項を参照のこと)。ユーザーの中には、アンチ・エイリアシングやシャドーなど、SafariのWebKitレンダリングとChromeではレンダリングに相違があると気付いた方もいるだろう(リンク)。フード下で使われているSkiaグラフィックスエンジンがもたらす効果によるものかもしれない。

WebKitとの統合について、ChromiumのFAQには以下のように書いてある。:

ChromiumのソースコードにはWebKitのソースのコピーが入っています。Chromiumのリリースのニーズに応じて、WebKitの最新版や特定ブランチを対象に、たびたびスナップショットしています。

目標は、WebKitコミュニティの一員としていっそう効果的な働きをし、周期的なアップデートをよりスムーズに行うために、保持しているコピー間の差異をサイズ的に小さくし、複雑性を軽減することです。

V8 JavaScript Engineはオープンソースで、Google Code上にホストされているが(リンク)、既存のJavaScriptエンジンを採用するというより、Chrome向けに書かれている。V8は10万行以下のC++で書かれており、スタンドアロンでも、C++アプリケーションへの埋め込みでも動作可能だ。

V8を作成した最も重要な理由は、パフォーマンスのように思われる。V8 Design Documentation(V8設計マニュアル)(リンク)には、「V8は…JavaScriptの大型アプリケーションを高速に実行するために設計されています」と書いてある。V8に関するChromiumのブログには「スピードの必要性」(リンク)という題の下、以下のように書かれている。:

Google Chromeは、パフォーマンスのためにゼロから設計した新しいJavaScriptエンジン、V8を搭載しています。よく起こるボトルネックでとりわけ解消したかったのは、Webアプリケーションで使用可能なJavaScriptコードの量と複雑性が制限されることでした。

V8では数々のパフォーマンス改善や刷新を主張しているが、その中には、隠れクラスを使った高速なプロパティ・アクセスや、動的なマシンコード生成、効率的なガベージコレクション(stop-the-world、世代別、参照カウント、圧縮)、小さなオブジェクトヘッダ、ゼロから作成したマルチスレッド、などがある。V8開発チームのリーダーはLars Bak氏(リンク)で、Avi Bryant氏(リンク)が言うようにBak氏は「StrongtalkとHotSpot Java VM両方の技術的なリーダーであり、元々のSelf VMへも多大な貢献をした」人物であり、VM関連ではBakの名がついた特許が多数存在する。

Matthieu Riou氏が指摘するように(リンク)、V8は伝統的な意味合いのバーチャルマシンではない。中間表示、つまりバイトコードは存在しない。その結果「V8バイトコード」にコンパイルする独自の言語を書くことはできないが、JavaScriptへのクロスコンパイルは可能である。それでも、V8が他の動的言語のエンジン役を果たせる、とDave Griswold氏は確信している(リンク)。:

こうしたプロパティのおかげで、V8は瞬く間に動的言語で最有力のVMになると思います。Smalltalkの素晴らしいプラットフォームになるはずです。

FAQで指摘されているように、Google GearsもChromiumプロジェクトに移動した。:

GearsはChromiumのプラグインなので、sqliteを2コピー、V8を2コピー持つことになります。ばかばかしいですね。GearsがChromiumですばらしく快適に動作するように、コードを統合しています。同じコードベースから他のブラウザ向けのGearsを作成し続ける計画です。

Google ChromeはFlashやPDFのようなプラグインをサポートしているが、現時点ではブラウザ拡張はサポートしておらず、計画段階である(リンク)

歴史

Niall KennedyがGoogle Chromeの歴史を記録している(リンク)。まず、Googleがブラウザ強化を推し進めたところから説明しているが、Ajaxを多用し、HTML5およびブラウザ「acid」遵守ではIan Hickson氏と協力したところから始め、Google GearsやBrowser Sync、Safe Browsingなどのブラウザ拡張機能までカバーしている。その後は、GoogleのAndroidプロジェクトについてReqwireless社と一緒に手に入れたWebKitブラウザの話とともに語り、Skiaベクトルグラフィックス・ライブラリやGreenBorderセキュリティ・サンドボックスを説明している。最後に、Ben Goodger氏がリーダーを務めるChromeチームとLars Bak氏が率いるV8チームについて語っている。

WiredのSteven Levy氏も自身のInside Chrome: The Secret Project to Crush IE and Remake the Web(Chromeの内幕:IEを壊滅させ、Webを再建するシークレットプロジェクト)(リンク)で、創始期の2001年までさかのぼり、Chrome開発の舞台裏を明かしている。:

CEOのEric Schmidt氏が「ブラウザは重要」と言っています。Schmidt氏は1990年代に起こったブラウザ大戦争の時期、サン・マイクロシステムズの最高技術責任者を務めていましたから、分かっているはずです。Google共同創設者のLarry Page氏とSergey Brin氏も分かっています。Schmid氏tはこう言っています。「私が2001年にGoogleに加わるとすぐに、LarryとSergeyが『Googleだけのブラウザを作るべきだ』と言ったのですが、私の答えはノーでした」

Levy氏は初代のプロトタイプやV8チーム、早くにリークがあったにもかかわらずサプライズとなったChrome公開を取り上げている。:

Googleブラウザほど市場の勢力図を変える可能性のあるものが2年も秘密にされていたのには驚きます。プロジェクトの開始から約1年後の2007年中頃まで、グループ外の従業員にチームが行っていることを見せることさえなかったのです。当時の最新プロトタイプを特集したTech Talkシリーズ(このイベントの目的のひとつが、増大を続けるチームの社内求人でした)の第1回では、火山が爆発するような反応がありました。タブを新しいウィンドウにドラッグするといった様々な機能のデモが行われると、Googler達からは拍手喝采が自然発生しました。Chromeについて知っている人間の数が増加するにつれ、避けられないことが起こりました -- ブログの1つや2つにリークがありましたが、時たまのブログから全貌が明らかになるようなことはありませんでした。全部をまとめて結論を出すような記者はいなかったのです。「Googleブラウザについては、非常に長い間噂されていたからだと思います -- 伝説の大男やネッシーの目撃談のようなものです」とUpson氏が述べています。

公開:Windows版のみ、じゅうたん爆撃、プライバシー、EULA

Googleの発表はマンガが姿を現したときから始まっており、その後はブログの投稿があり、1日遅れでベータ版が利用可能になった。その間、マンガ自体が注目を集めた。Josh Evnin氏(リンク)が称賛したのは、マンガの中に「実際のGoogler達」が名前つきで登場することと、専門的なトピックを提示して上手に説明するという両方をやってのけている方法であった。:

さらにGoogleがうまいのは、高度に技術的なプロセスを説明しようと躍起になっていないことです。メッセージを必要最低限まで単純化しており、このマンガの読後に啓発されたような感じを受けるのです。たいていの技術文書は、基本のすべては理解済みと仮定して、理詰めでまくしたてるようなところがあります。Googleは、専門知識がほとんどないような人間でも、その大部分が理解できるように新技術を説明することにより、障壁を取り除いています。巷にある他のオープンソースプロジェクトのほとんどが、できていないことです。技術文書はただの文書ではないのです…エクスペリエンスへ参加しませんか、という暗黙の招待状なのです。.

要するに、この文書の質の高さにとても感心したのです。実際に全部読みましたし、自分で使っているソフトウェアの技術文書でこんなに読んだことはありません。私がマルチスレッドとマルチプロセスの違いを面白いと思うなんて、誰も想像しなかったでしょう。

Google Chromeは現在のところ、Windows向けのベータ版のみ利用可能だが、他のプラットフォーム版も間もなく利用できるようになる予定である。MacとLinux版の両方について言及されているが、明確な公開日は不明である。Mac版Chromeは熱望されており、Mac版がないことについてSergey Brin氏が「困惑する」と言うと、ニュースで報じられた(リンク)。Mac版Chromeは、Camino(リンク)のプロジェクトリーダーであり、開発リーダーも務めるMike Pinkerton氏(リンク)や、Google Desktop for Macに取り組んでいるGoogle従業員の努力の賜物である(リンク)

Amanda Walker氏がGoogle Macについて指摘している。Chromeチームには特定のOSに精通した人達もいるが、それでもチームは1つであり、チームの全員がすべてのプラットフォームに貢献する。現状と進行状況について、Walker氏は次のように書いている。:

現時点では両方とも「それぞれのピースは構築済みで、テストにもパスしたけれど、まだChromeアプリケーションにはなっていない」状態です。Windows版に追いつこうと必死に、急いで作業していますが、いつリリースできるかについてうわべだけの日付を決めるつもりはありません -- 確固たる判断を下せるほどの予測はできませんし、Windowsのパブリック・ベータ版から学べることも大いにあると予想しています。プラス面としては、プロジェクトが公になったので、毎週、進行状況を観察できるでしょう(そしておそらく貢献していただくことさえ可能でしょう)。バージョンが安定したら、現在Windows版で行っているように、公式ベータ版を作成します。まだ日付は未定ですが、いよいよ間近になったら、皆さんにお知らせします。

Linux(リンク)およびMac OS X(リンク)向けのChromium開発の追跡に興味があるなら、チェックすべき情報源はおそらくChromium開発サイトだろう。

Chromeの公開は失策無しというわけにはいかなかった。WebKitにはじゅうたん爆撃の欠陥(リンク)があり、公表済みである。Googleが統合したWebKitより後のWebKitバージョンでは修正されているが、Chromeがじゅうたん爆撃の被害を受けやすいのは明らかである。Chromeはベータ製品だが、マンガではChromeの設計には元からセキュリティが備わっていると売り込んでいる。

同様に、Chromeがプライバシーの一線を越えていると感じる人もいる。omnibox(Chromeの専門用語でいうロケーションバーのこと)への入力が進むとChromeに提案してもらえるが、この提案を可能にするには定期的にデータを選択した検索エンジンに送らねばならず、デフォルトのデータ送付先はGoogleになっている。この方法で確保されるデータ量(リンク)を懸念する声にGoogleは返答済みだが、Chromeとプライバシーの事情が思ったより悪い(リンク)と論じる向きもある。

Matt Cutts氏はGoogle Chromeチームに話を聞いて、Chromeがいつ「家に電話する」ようになるのかを尋ね、次のように要約している(リンク)。:

Google Chromeが公開されればすぐに、プライバシーについての厳しい質問をして、Google Chromeがいつ、どのようにgoogle.comと通信するようになるかを知りたがる読者が現れると分かっていました。ですから、この問題に正面から取り組むことに決めたのです。心配すべきことがあるかどうか、Chromeチームに聞きました。一言で言うと、心配するようなことはありません。 

こうした言質にもかかわらず、ドイツの情報セキュリティ連邦政府機関はユーザーに対し、Chromeを使わないよう警告したと報道されている(リンク)

Chromeで閲覧したコンテンツのすべてについて(リンク)Googleがライセンスを保持するとほのめかしている(リンク)サービス契約条件も、槍玉に挙げられている。Matt CuttsとGoogle Chromeの上級プロダクト顧問のRebecca Wardは、この契約条件が間違いであったと意見が一致している(リンク)。契約条件は9月3日水曜日に修正され、論争は大方沈静化した。

ブラウザ戦争とその他の動機

Chromeの公開は、かつてMicrosoftとNetscape/Mozillaが争ったブラウザ戦争の再開と予告する人がたくさんいる(主な競争参加者はこれくらいだったが、すべてのブラウザにはその長所を喜んで喧伝する部隊がいる)。すでにChromeを排除したがっている(リンク)人もいれば、静観(リンク)の態度をとっている人もいる。

Googleは他のブラウザとの競争を望んでおらず、単にネットワーク配信アプリケーションをデスクトップアプリケーションと区別できない状態まで前進させ、そうすることでOSをバックグラウンドに押しやりたいのだ(リンク)、と論じる者が多数いる。

この話をする人たちは、とりわけMicrosoftを対抗者に祭り上げたがるが、そうすると二大巨人のぶつかり合いを想像できるからである。

他のブラウザ:比較と影響

Chromeは、他のブラウザですでに行われたことを繰り返しているに過ぎない、と考える人もいる。Georgios Kasselakis氏はOSNewsで(リンク)、ChromeのプロセスモデルはIE8のものと大差なく、ChromeのタブはOperaのタブに酷似していると論じており、Operaのタブに関してはOperaユーザー(リンク)が共感している。

V8の高速性にはベンチマークの裏付け(リンク)があると主張しているが、他のブラウザメーカーも開発路線上のスピード向上を同様に主張している。

MozillaのFirefox 3.1にはスピードを向上させるTraceMonkeyが搭載され、Brendan Eich氏が自身でテストしている(リンク)。 Eich氏の意見では、TraceMonkeyはカテゴリによってはすでにV8より高速で、その他のカテゴリでも「いい勝負をしている」が、次のように指摘している。:

V8はすばらしい出来で、設計もよく、スピード向上の余地もあります(また、Chromeは一見して良い〜すばらしい出来で、マルチプロセス・アーキテクチャは最高だけれど、私みたいな古株のUnixハッカーからしたら、称賛しか出てこないのはわかっているでしょう)。

傍観者が理解しなければならないのは、この競争はプレーオフではないので、競争中の各VMが所定の誇大宣伝イベントの時点で排除されるわけではないということです。理論的な積極性に欠けるアプローチと比較すると、Franz&Gal形式のトレーシングの方に「ヘッドルーム」があると考えていますが、その理由は、コードを特殊化する能力を備えているからであり、大部分のJavaScriptプログラムに本来備わっている潜在的な型に基づいて、ランタイムでは変数を定数にし、デッドコードと条件を排除します。私たちが正しいなら、今後数週間か数ヵ月の間に分かるでしょうし、あなた方皆にも分かるでしょう。

InfoQでこれまでに説明されたように(参考記事)、WebKitチームはすでに新しいJavaScriptインタプリター、俗称SquirrelFishに取り組んでいる。John Resig氏が詳細なパフォーマンス分析(リンク)をしており、SquirrelFishが少なくとも所々でトップに来ている。

JavaScriptのパフォーマンスに焦点が当てられるのは、エンドユーザーにとっては良いこと、と誰もが同意する。エンジンの作成者が誰であろうと、結果としてずっと高速なJavaScriptエンジンが手に入るからである。

Webブラウザ1つの参入によって、すでに市場に出回っている既存Webブラウザがどんな影響を受けるのかと思う人も多数いるだろう。Internet Explorerのマーケットシェアは引き続き低下するので(リンク)、Microsoftの人気はすでに衰えていると思う者もいる。Firefoxが苦戦する可能性が高い(リンク)と心配する人もいる。なぜなら、Internet ExplorerとSafariはWindowsとMac OS Xにプリインストールされてくるので、多数のユーザーが自分から選択したわけではなく、単にIEかSafariを利用するが、自ら選択をしてブラウザをダウンロードするという、市場の小セグメントをめぐってはFirefoxとChromeが争うことになるからである。初期の統計値がこれを裏付けているようだ(リンク)。Googleの反論は、注目が高まれば、使用するブラウザには選択肢があることを人々が思い出し(リンク)、おそらくその選択の権利を行使するだろう、というもの。Marc Andressen氏さえ(リンク)、Chromeによって競争が盛り上がり、全ブラウザが向上する、と考えているようである。

補足の分析

この記事ではGoogle Chromeに関する最も一般的な見解と分析について書いているが、Chromeとその影響については、もっと小規模の対話もどっさりある。:

  • Carsten KnoblochはすでにGoogle Chromeの携帯版(リンク)をリリースしたが、ドイツ語がわからない読者は英語版のまとめ(リンク)を読んだ方がいいかもしれない。
  • KDE開発者の中には、WebKitの原点への貢献が認められない(リンク)ことが多すぎると感じている者もいる。
  • Googleが運営するChrome Help(リンク)グループには、機能に関するリクエストと提案がすでに1500件以上寄せられている(例:FTPのサポート、テーマ、匿名モードでのChrome起動、など)。 
  • ChromeはGoogleがクラウドコンピューティングに進む次の段階である、と考えている人(リンク)が大勢いる(リンク)。Information Weekが時代思潮をうまくまとめている(リンク)。 
  • Jesperは第一印象(リンク)として、ChromeのWebKitインスペクターは著しく場違いと述べている。
  • Yakov Fainによると、Google ChromeにはJava 6 U 10が必要で、これにはJavaFX開発者が喜ぶ(リンク)とFainは考える。JavaFX開発者はすでに、JavaFX/Chromeのデモ(リンク)で喧伝に乗っている。
  • 新規のChromeユーザーは、特別なaboutページ(リンク)などの使用のヒントを見た方がいいかもしれない。
  • GoogleのAndroidがChromeのスタックを部分的に利用する可能性があるが、詳細は煮詰まっていない(リンク)
  • ツールキットのファンは、Googleがどのようにクロスプラットフォームの開発(リンク)を行っていくかを知りたいだろう。:

    組み込みのツールキットを入れるには時期尚早です。カスタムドローイングの大部分がSkiaというライブラリ経由で、Skiaはボタンとチェックボックスは描けないけれど、線と長方形は描くという点で、Cairoに相当します。

    ツールキットについては譲れない意見を持っている人たちが大勢いますが、大きな対立を引き起こす原因の一部となっているのが、両ライブラリともが実際にChromeのニーズを満たせることです。事実、Chromiumの大部分ではWebページの表示が単なるカスタムレンダリングです -- たとえば、 HTML選択コントロールのポップアップさえ、WebKitによってカスタムで描かれています -- ツールキットが目に見える実際の場所は、フォームコントロールの見え方、プリファレンスや「別名で保存」ダイアログのような種々のダイアログだけになるのではないかと予想します。

    そうは言っても、GTKを使うことを計画しています。Qtが嫌いというわけではなく、チームにはGTKの経験の方が豊富で、現在のFirefoxのLinuxへの依存に匹敵します。どうか落ち着いてください。 :)

情報源

この記事のこれまでのリンクや分析、見解があまりにも膨大なため、Google Chromeに興味のある方々や動向をキャッチしたい方々のために、最も一般的な情報源を以下に挙げておく。:

  • Google Chrome Site(Google Chromeのサイト)(リンク)
  • Chromium Blog(Chromiumのブログ)(リンク)
  • Chromium Site(Chromiumのサイト)(リンク)
  • Chromium Developer Documentation(Chromium開発者のドキュメンテーション)(リンク)

原文はこちらです:http://www.infoq.com/news/2008/09/google-chrome-perspectives

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