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計算知識エンジンWolfram|Alphaへのインタビュー

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原文(投稿日:2009/7/30)へのリンク

2009年5月18日、Wolfram Researchの計算知識エンジンであるWolfram|Alphaが正式にリリースされた。主要製品のMathematicaで知られているWolfram Researchは、長い間、科学的計算ソフトウェアのもっとも評価の高いサプライヤーの1つだ。そのため、Wolfram Researchの新しい検索エンジン、Wolfram|Alphaの公開に関するニュースはかなり注目を集め、大きく取り上げられた。"Googleキラー"、"知的検索"、"セマンティック検索"? 流行語となっている専門用語の多くは、Wolfram|Alphaが公開される前からこの製品に関連付けられていた。公開されて2ヶ月たった今、私たちは、実践的な経験に基づいてWolfram|Alphaを評価するより良い立場にいる。Wolfram|Alphaに関するよくある質問を振り返ってみる時だ。Wolfram|AlphaとGoogleの関係は何か? 市場でWolfram|Alphaをどのように位置付けるか? Wolfram|Alphaは、セマンティックウェブ検索エンジンのどの範囲にあるのか? Wolfram|Alphaは、市場でどのように利益を出せるのか? InfoQは、これらの質問について尋ねるため、中国のWolfram Research Inc.のビジネスマネージャ、Xiang Wang氏を招く機会があった。

なぜWolfram|Alphaは計算知識エンジンと呼ばれるのか? この製品の説明から何が分かるのか?

私たちは、Wolfram|Alphaを計算知識エンジンと呼びます。なぜなら、Wolfram|Alphaは、ウェブを検索してリンクを返す代わりに、内部の知識ベースに基づいて計算することでアウトプットを作り出すからです。

Wolfram|Alphaは、絶えずGoogleと比較されている。Goolgeが一般ユーザ向けの検索エンジンである一方、Wolfram|Alphaを市場でどのように位置づけるか? また、Wolfram|AlphaとGoogleの関係に対するあなたの見解は何か?

Wolfram|Alphaは、Googleに対して補完的です。検索エンジンは、ウェブに存在するページへのリンクを提供します。Wolfram|Alphaは、ビルトイン知識ベースとアルゴリズムを使って特定の質問に答えます。Wolfram|Alphaは、ウェブ検索をするためのサイドバーリンクがあります。この目的や強みは、今日の検索クエリではありません。尋ねられる質問を完全に新しいものとして扱うことができます。過去の検索の経験に基づいて期待しているのは、人々が一度Wolfram|Alphaの機能を知れば、人々のクエリが急速に進化してWolfram|Alphaのクエリになることです。検索と異なる使用パターンとして、人々は異なったパラメタで同じ質問をしながら、Wolfram|Alphaをもっと体系的に利用するでしょう。

技術的な話をすれば、Ask Jeeves、Google Base、Powerset、Cycプロジェクトなどのような関連する力作とWolfram|Alphaとの重要な違いは何か?

Wolfram|Alphaは、それらのものと異なります。Ask JeevesとPowersetは、ウェブ上にあるリンクを示す検索エンジンです。一方で、Wolfram|Alphaは計算から得た情報を提供します。

Wolfram|Alphaは従来の検索エンジンより「賢い」と言われているが、システムの中で実際にどのくらい人工知能の技術が採用されているのだろうか。どのように推論は行われるのか? 事実や要求は何に由来するのか? 適合しない場合はどうなるか? 例えば、イスラエル/パレスチナ領域に関する情報はどのように表されるだろうか?

Wolfram|Alphaは、人間らしい人工知能というよりも巧みに作られた人工物です。Wolfram|Alphaがすることの一部は、特に言語を理解する分野において、人間がすることと同じものかもしれません。しかし、第一の目的は命令に従った計算をすることであり、一般的知能として機能することではありません。Wolfram|Alphaは、計算の基礎として確立した科学的なモデルや他のモデルを使います。新しい計算をするときは、必ず新しい事実を効果的に引き出します。あなたが尋ねた議論の的になるデータに関して、数値データと特定の問題を異なる方法で扱います。数値データに関して言うと、計算を完了させる様々な値をWolfram|Alphaキュレータが一般的に割り当てます。あなたの質問にあったイスラエル/パレスチナ領域問題のような特定の名前や単語の解釈のような問題に関しては、Wolfram|Alphaは一般的にユーザに手に入れたい仮定を選ばせます。私たちは、自動テスト、専門家による見直し、結果を確実なものにするために使う外部データの確認にかなり努力しています。しかし、無数のデータの中で、そこにエラーが存在するのは避けられません。問題を見つけた場合は、どうかご報告ください。

Guardian誌編集者Charles Arthur氏の記事で、Wolfram|Alphaは「セマンティックウェブ検索」と述べられていた。Wolfram|Alphaがセマンティックウェブ検索かどうか知りたい。内部的にセマンティックウェブ技術を採用しているのか? それともセマンティックウェブから考えを使っているのか?

Wolfram|Alphaは、直接セマンティックウェブ技術を利用していません。Wolfram|Alphaは、独自の内部セマンティクスと形而上学による内部知識ベースを持っています。

Wolfram|Alphaシステムの基礎をなすデータの蓄積は、おおよそ10兆以上の個別にタグ付けされたデータだと言われている。大量のデータの背後にどのようなデータモデルがあるのか知りたい。

Wolfram|Alphaには、数多くのフィードバックを通して増え続けている何兆もの要素があります。

管理されたデータは、外部の世界にとっても価値のあるものだが、現在、Wolfram|Alphaに限定されている。例えば、RDFで一般に公開する予定はあるか? または、ウェブサービスとしてWolfram|Alphaの機能を公表するのか?

Wolfram|Alphaのデータの大部分は、たいてい複数の情報源に基づく計算によるものです。バックグラウンドにある情報源と参照先の一覧は、関連するWolfram|Alphaの結果ページの下にある"Source information"(情報源)ボタンを使って見られます。

さらに、データの一部は、すでにロードオンデマンドで計算可能なデータとして、Mathematicaユーザが直接利用できます。また、ユーザがWolfram|Alphaから加工されていないデータを入手できるようにAPIを開発中です。

加工されていないデータの入手先は? データは異なる情報源からくるので、種類が違ったり、一致しなかったりという問題が起こりえる。そのような問題をどのように扱うのだろうか?

データは、様々な異なる情報源からきて、Wolfram|Alphaチームによって組み合わされ、管理されます。Wolfram|Alphaデータをチェックするために、自動と手動の両方の方法によるポートフォリオを使います。これには、統計、視覚化、ソース照合、専門家による見直しを含みます。

自然言語の理解は、システムの重要な部分だ。システムをひときわ目立たせるために、このシステムを独自のものにする特定の技術や戦略を使うか?

Wolfram|Alphaは、言語的な入力を理解するために新しい数多くの方法を導入します。たいていこれらの方法は、伝統的なNLPのようなものではありません。Wolfram|Alphaは、完全に文法的に正しい文章よりも言葉の断片を扱わなければなりませんから。

Wolfram|Alphaは、Stephen Wolfram氏の「A New Kind of Science」(NKS) (新しい科学)に関係するものを示すと言われている。「NKS」の考え方がどのようにWolfram|Alphaに適用されているか、手短に詳細を説明してほしい。

Wolfram|Alphaは、単純な基礎をなす規則からリッチで複雑な行動を生み出すNKSの考え方を、概念的かつ実践的に利用します。いろいろな意味で、Wolfram|AlphaはNKSにとって最初の"キラーアプリ"です。 (Stephen Wolfram氏のブログの投稿をご覧ください。http://blog.wolfram.com/2009/05/14/7-years-of-nksand-its-first-killer-app/)

より明確に、または、より一般的にWolfram|Alphaの目指す場所は?

Wolfram|Alphaの長期的な目的は、すべての体系的知識を誰でもすぐに計算し、アクセスできるようにすることです。私たちが目指しているのは、すべての実在するデータを収集し管理すること、すべての知られているモデル、メソッド、アルゴリズムを実装すること、何に関してでも計算できることはすべて計算可能にすることです。私たちの目的は、科学の成功と知識の体系化を成し遂げることです。これによって、事実に基づく質問に対する最終的な答えを誰でもが得られる1つの情報源を提供します。

Wolfram|Alphaは、専門的職業から教育レベルまですべての範囲の人々に、可能な限り広範囲に渡る専門家レベルの知識と機能をもたらすことを目指します。私たちの目的は、完全に自由な形式の入力を受け入れ、強力な結果を生成し、最大限明瞭にその結果を表す知識エンジンの役割を果たすことです。

Wolfram|Alphaは野心的な長期間の知的努力であり、私たちは、長い間、そして、これから何十年もますます多くの機能を提供するつもりです。世界レベルのチームと数えきれないほどの分野からトップの専門家を迎え、私たちの目的は、21世紀の知的業績の主要なマイルストーンとなるものを作り出すことです。

最後の質問だ。Wolfram|Alphaがすばらしいと知っているが、仮定される利益モデルに関して何か見解を示してもらえないだろうか? ビジネスプランはどうなっているのだろうか?

私たちは、数多くのWolfram|Alphaのビジネスモデルを探っています。主要なサードパーティとのパートナーシップやスポンサーシップ、今後、専門家と企業向けバージョンを作ることなどです。

専門家向けバージョンの詳細はまだ決定されていませんが、計算に含めるためにサーバにデータをアップロードできる機能(アップロードユーザのみ)、グラフやデータをダウンロードする機能、そして、計算に使えるさらに多くのCPU時間が含まれるでしょう。さらに、企業向けバージョンは、企業内部で実行するように設計され、企業のデータベースに直接アクセスできるでしょう。例えば、ユーザは、"製品A/製品Bの売上" や "John Smith氏の販売目標" などの質問を尋ねるかもしれません。

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