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エンタプライズアーキテクチャはクラウドコンピューティングに関連するのか

最近出された Deloitte Debates(翻訳者注:Deloitte Consulting 社の刊行物)" クラウドコンピューティングはエンタプライズアーキテクチャを無用にするか?" は(クラウドコンピューティングに移行することで)企業がEAにかかわる問題を排除できるかという問いかけで始まる:

ビジネステクノロジの世界は、クラウドコンピューティングの世界にあるようなリモートにあるコンピュータにホストされた比較的小さいがよりアジャイルなアプリケーションのネットワーク、つまり”ほぼエンタプライズ”アプリケーションの世界にシフトしつつある。大規模でモノリシックなエンタプライズソリューションへの依存を減らすことで、持続可能なエンタプライズアーキテクチャ(EA)を構築するという困難な仕事もまた我々の手から離れると考えたくなる。従って、多くの企業はクラウドコンピューティングに移行することで多くのEAの頭痛から逃れられることを期待している。しかし、実際の世の中でそのようにことが運ぶものだろうか?

ディベートには上の問いかけに対する多くの論点及び反論が含まれている。EAをクラウドで置き換えることの支持者は次のような主張をしている:

我々はEAの頭痛の種をアウトソースすることが出来る。もう基盤となるITインフラストラクチャやOSや各種ソフトウェアのパッチなど管理する必要が無くなる。ベンダは最高クラスの標準やプロセスを持ってくるので我々はそれを採用すれば良い。自前のものを修正する必要などない。我々がクラウドに移行するのは我々が機敏にそして俊敏になるためだ。エンタプライズアーキテクチャはこれと全く逆方向のもの。もしクラウドの上にEAの層をかぶせてしまえば、クラウドを使うことの利点の大半を失ってしまう。

その反論としては:

あなたの仕事やプロセスをクラウドに押し出すことが出来たとしても、それらは一つとして独立なものではない。エンタプライズアーキテクチャにより全てを統制しビジネスを支援するということは変わらないだろう。どんな素晴らしいツールでありどんな場所にあろうとも、ミッション、プロセス、テクノロジ、そしてビジネスイニシアティブといったものの間の関連や依存性を規定し管理しなければならないことに変わりはない。

Deloitteの実践者たちの言葉はさらにこのディベートに重みを加える。Scott Rosenbergerによれば、ある程度のプロセスをクラウドに移すことで技術的で実装にかかわる問題の取り扱いが楽になるものの、

... それだけでは、関係する全ての人、プロセス、そしてクラウドの支援するツールを一体として運営する戦略が必要という基本的な現実が変わる訳ではない。... ということは、(そうしたところで)EAに関してITを忘れて良くなる訳でない。もし何かがあれば、これはむしろ物事を複雑にしてしまう。

Omar Trujillo SeguraもRosenbergの意見に賛成でEAはそれでも関連し続けるという:

どのようなツールを使おうが、根源的な問題はテクノロジではない。ビジネスプロセスの領域からテクノロジの領域まで、すべての異なるコンポーネント間の関連を定義するところに問題がある。そして、そここそがEAが登場してくる場所なのだ。

そしてFlorian Quarreが次のように総括する:

... クラウドのソリューションはコスト削減という面で大きな役割を果たすかもしれない... しかしこういった新たなソリューションも運用モデルとして書かれた、明確に規定されたシステム要件に適合する必要がある。そこでEAが出てくる; 何故なら、どんな新しいテクノロジであってもビジネス駆動のエンタプライズフレームワークの外側でテクノロジを選択するというのはリスキーなことだから。

このディベートに反応して David Linthicum はこのような問題提起があること自体に困惑すると書いている。彼の見解は:

クラウドコンピューティングはエンタプライズアーキテクチャを置き換えるようなものではない。「無限のスケーラビリティ」を提供する訳でないし、「一日数円しかかからない」という訳でもないし、「1時間もかからず使えるようになる」訳でもない - もちろんワイシャツのアイロンがけをしてくれる訳でもない。今より効果的で効率的で弾力性を備えたコンピューティングプラットフォームの提供を期待させる面白いテクノロジではあるが、我々は最近このハイプをばかげたレベルにまで受け入れており、クラウドがこのような過剰な期待に応えられないのではないか私は本当に懸念している。

新たなテクノロジは素晴らしく我々はすぐにでも利用したいと考える。しかし、単にテクノロジのためにテクノロジを使うというのは意味がない。テクノロジの利用は、テクノロジのクールさ度合いで決まる訳ではなく、むしろビジネス要件とそれを支えるエンタプライズアーキテクチャにより決められるべきである。実際に、ある程度のエンタプライズアプリケーションをクラウドに移行させればインフラストラクチャに関する問題が無くなることもあり得るが、クラウド移行によりまずい設計のソリューションが改善される訳ではない。
 

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