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複合型チームにおけるT字型スペシャリストの価値

原文(投稿日:2013/11/27)へのリンク

ソフトウェア開発技術誌Methods & Tools編集者のFranco Martinig氏,Scrum創案者のひとりであるKen Shwaber氏など評論家が先日,多能性を持った開発者,いわゆるT字型スペシャリストの価値をテーマにした執筆と講演を行った。この論評は単独のものではない。ある種の権限を所持するチームの重要な構成要素として,多能的なスペシャリストに対する認知度がいかに高まっているのかを論じるものだ。

Martinig氏は先日,自身が命名した "ルネッサンス型ソフトウェア開発" に関する記事を書いた。その中で氏は,クロスファンクショナル(cross-functional, 機能横断的)な"T字型"開発者,すなわち解析やテスト,ユーザ対応など,複数の仕事でチームに貢献できる人材の持つメリットについて述べている。

Schwaber氏もまた,チームメンバ個々の持つ集団体験や周辺スキルが問題解決プロセスにおいて重要な役割を果たし得る,という内容のブログ記事を書いている:

チームに所属する人はすべて,最大限の要求に対して最大限の成果を上げるという,チームの目標に貢献できるスキルと経験を持っています。それまではほとんど使われなかった洞察や記憶,スキルなども,いつ役に立つか分かりません。それがスクラムチームの美しさ,予期せぬ成長の相乗効果なのです。

Zumobi創業者のJohn San Giovani氏は先頃,"The Artist-Geek Hybrid" と題したTEDトークを行った。そこで氏は,Zumobiが広範な経験と "パーティに右脳を提供する" 人材を採用しようとしていることを,私たちに語っている。氏の説明によれば,ユニークなソリューションとは,個々のさまざまな関心や経験の交わる "ワイルドカード" が生み出すものなのだ。ThoughtWorksのハードウェアハック研究所で責任者を務めるテクノロジアーティストのPeter McWIlliams氏は,この講演について報告するとともに,その上位集合であるチームのワイルドカードにも価値がある,と付け加えている:

ワイルドカードの持つ価値は,専門分野と専門分野の交差によるものに限りません。複数の観点,複数のアプローチにもパワーがあるのです。

内在するTを引き出すためには,クロスファンクショナルなグループを作り上げるだけで十分だとは限らない。Martinig氏とShwebber氏はともに,従来型の組織構造における役職名が,責任の絶対的境界を作り出している点を指摘する。Martinig氏は "プログラマ,ソフトウェアテスタ,DBA,ビジネスアナリスト" といったレッテルが結果的に,個人が自身の領域から踏み出してコラボレーションすることを阻害しているとして,次のように書いている:

大規模なソフトウェア開発組織では,個々の経験に従って人材をプログラマやソフトウェアテスタ,DBA,ビジネスアナリストというように分離する,テイラー主義(tayloristic)的なアプローチを選択しがちです。このような部門分割は同時に,開発者の心に暗黙的な "階層構造" をも作り上げるのです。

T字型のチームメンバになるというのは意識的な行動だ。Paddy Power PLCでアジャイルテスト主席技術者を務めるAugusto Evangelisti氏は,テスト担当者を対象に,チームの開発および解析力に貢献できるオールラウンダへとT字化するための入門記事をブログに書いている。自分の役割から踏み出すことに消極的なテスタに対して,氏はその必要性を説く。BAや開発者と積極的にコラボレーションして,前向きに学び支援することに自身の時間を充てるよう,氏は彼らに勧めている。

GitHubのTim Berglund氏にQConで行った基調講演 "First Kill All The Product Owners" についてインタビューしたとき,氏はプロダクトオーナの役割について,能力のあるクロスファンクショナルチームが全体として担うべきだ,という考えを説明してくれた。"何かを開発する上で責任のある人々すべてが,そのプロダクトの定義に責任を持つ" というのが,氏の提示するシナリオだ。製品のライフサイクル全体を通じてチームに権限を与えることにより,その領域に対してのチームの熱意を高め,製品に対する当事者意識の向上を実現できるのだ。

Evangelisti氏は最後に,T字型スペシャリストになることのメリットを次のように要約する:

ですから,遠からず職を失うようなつまらないI字型スペシャリストは止めて,T字型のアジャイルテスタ(あるいはチームメンバ)になってください。そうすればあなたは,チームにとって今よりも重要な,もっと価値のある存在になるでしょう。そして何よりも,自分独自のテスト手法(アクティビティ)に常軌を逸して固執しないことです。あなたの同僚が,あなたを手助けできなくなってしまいますから!クロスファンクショナルなアジャイルチームの世界へようこそ!ここには立場の違いというものはありません。アクティビティこそが問題なのです。

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