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オンプレミス版Microsoft Azureか? Azure Stackのテクニカルプレビュー版がリリースされた

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原文(投稿日:2016/02/03)へのリンク

Microsoftは先週,最初のMicrosoft Azure Stackテクニカルプレビューを配信した。企業自身のデータセンタ内でAzureサービスを実行可能にする製品である。Microsoftにとって今回は,Azureエクスペリエンスをローカル環境に提供する3回目の挑戦になる。ただし,パブリッククラウドのエクスペリエンスに忠実であった1回目のチャレンジでは,一般ユーザを対象としていた。

テクニカルプレビュー公開を発表したブログ記事の中で同社のMike Neil氏は,今日の企業が直面しているハイブリッドリアリティについて次のように説明する。

しかしながら,パブリッククラウドへの完全移行に対しては,今でも多くの企業が,データの管理権や規制上の考慮などビジネス上の問題を抱えています。これが彼らのポジションを,片足をパブリッククラウドに,片足をオンプレミスにという複雑なものにしているのです。

この問題を解決するためには,場所ではなくモデルとしてのクラウドにアプローチすべきだとMicrosoftは考えます。このモデルには,インフラストラクチャやアプリケーションや利用者といった領域を越えて,プライベート,ホステッド,パブリックそれぞれのクラウドに一貫性を提供するような,ハイブリッドなクラウドアプローチが必要です。Microsoftは本日,Microsoft Azure Stackのテクニカルプレビューによって,ハイブリッドクラウド戦略の新たなステージを提供します – 業界をリードするパブリッククラウドとの一貫性を持った,唯一のハイブリッドクラウドプラットフォームです。Azureから誕生したAzure Stackは,企業自身のデータセンタからAzureサービスを提供可能にします。

一貫性のあるハイブリッドクラウドプラットフォームが求められる理由として,Microsoftは次の3つをあげている。

  • アプリケーション開発者は,‘一度開発すれば,AzureにもAzure Stackにもデプロイ可能’なアプローチによって,生産性を最大化することが可能になります。Microsoft Azureと同じAPIを使用して,オープンソースあるいは.NETテクノロジをベースとしたアプリケーションを開発し,オンプレミスあるいはパブリッククラウド上で容易に実行することができます。Azureのリッチなエコシステムを活用すれば,Azure Stack開発を即時開始することも可能です。
  • ITプロフェッショナルは,オンプレミスのデータセンタリソースをAzure IaaS/PaaSサービスに転換できると同時に,MicrosoftがAzureの運用に使っているものと同じ管理ツール,同じ自動化ツールを使用したサービスの運用が可能になります。このクラウドアプローチは,ITプロフェッショナルに価値ある立場を提供します - コーポレートガバナンス上のニーズに対して誠実に対応しつつ,ビジネスに対する迅速なサービス提供が可能になるのです。
  • 企業などの組織は,法的規制やデータ所有権,カスタマイズやレイテンシなど,自身の置かれた環境下でのハイブリッドクラウドコンピューティング活用が可能になります。Azure Stackはビジネスに対して,テクノロジによる制約を受けることなく,アプリケーションやワークロードの配置場所を選択できる自由を提供します。

実際のAzure Stackテクニカルプレビューには何があるのだろう? Microsoftが言うには,パブリッククラウドのAzureとAzure Stackは,標準化されたひとつのアーキテクチャ,同じユーザポータル,Azure Resource Managerに基づくアプリケーションモデルを使用し,同じツール – Visual StudioやPowerShellなど – をサポートする。テクニカルプレビューは,Windows Server Data Center Editionテクニカルプレビュー4の動作する1台のサーバにデプロイされる。推奨ハードウェア仕様は16物理コア,128GBのRAM,1TB以上のストレージだ。Azure Active Directoryとも接続できる必要がある。また現時点で提供できるサービスは,Microsoftパブリッククラウドが備えている数十のサービスに対して,非常に限定的なサブセットである。2016年第4四半期を目標とする,完全な機能を備えた最初の製品では,仮想マシンストレージブロブとテーブル仮想ネットワークロードバランサVPNゲートウェイWebアプリなど,インフラストラクチャ・アズ・ア・サービスやプラットフォーム・アズ・ア・サービスに関連するコアサービスの提供が期待されている。Microsoftは,Azure Stackの公開までに追加でプレビュー提供するサービスとして,サービスファブリックストレージキューキーボルトロジックアプリモバイルアプリAPIアプリなどをあげている。ブログの発表記事に関するコメントには,ユーザからのフィードバックに基づいて,Azure Machine LearningやService Bus, Azure SQLデータベースなどのサービスを追加する予定があると説明されている。MicrosoftのRyan O’Hara氏はThe Next Platformで,Azure Stackでは意味を持たないサービスについて説明している。

“Azureをダウンロードして社内に置くのでは意味がありません。” Microsoftのエンタープライズクラウド部門のプログラムマネジメントディレクタであるRyan O’Hara氏は,The Next Platformでこのように述べています。“Azure Stackは企業ユーザにとって,まったく別の領域であるべきなのです。ローカル配置可能なサービスの数をできる限り多くするだけでなく,それらのサービスを企業レベルにスケールダウンされたものにする必要があります。また,サービスの中にはAzure Data Lakeやデータインテグレーション,あるいはデータエンコーディングのように,Azureパブリッククラウドのスケールがあってこそ価値があるものも存在します。”

The Next Platformによれば,Azure Stackは“Windows Server [2016]の最小限のNano Serverインプリメンテーションで実行可能”であり,ハイパーバイザとNano Server構成のクリーンインストールの実行によって,必要なパッチやアップデートが行われるということだ。Microsoftは現在でもAzure Stackのアップデートを頻繁に行なっている。時間毎や日毎の更新では頻繁過ぎることは認めるものの,年次のアップデートでは遅過ぎるのだ。

The Next Platformは今回のリリースについて,Microsoftとしての差別化戦略であると評価している。GoogleやAmazonが獲得を望んでいる領地を,彼らも攻撃しようとしているというのだ。

MicrosoftもGoogleも,インフラストラクチャクラウドから踏み出して,自らのインフラストラクチャをプラットフォームサービスとして外部に公開したいと考えを持っていたのですが,ほとんどの企業ユーザから拒絶されていました。彼らがデータセンタに持っているもの – 数百から数千ものアプリケーションが雑然と動作する仮想サーバ – からステップアップするのは,あまりに大きな飛躍だったからです。AWS EC2計算サービスとS3,EBSストレージが人気を博している理由もここにあります。企業のデータセンタとこれらAWSの基本サービスとの間にあるギャップも小さくはありませんが,越えられないほどではありません。GoogleとMicrosoftが数年に及ぶ苦難を経験しながらも,自らのCompute EngineあるいはAzure Virtual Machineサービスのロールアウトを続けてきた理由がここにあります。

しかしGoogleとAWSは, – プライベートクラウドに数億ドルを投資できる米国政府機関を別にすれば – クラウドとはすなわちパブリッククラウドであるという基本的な考え方を,自らの信念として持っています。Microsoft Azureはここに活路を見出そうとしているのです。

“クラウドとは場所である,という多くの人々の考えを,私たちは否定します。” Microsoftのテクニカルフェローで,エンタープライズクラウドのチーフアーキテクトを務めるJeffery Snover氏は言う。“クラウドは場所を選ばないモデルなのです。”

クラウドを構成するインフラストラクチャがどのように分割されているか,という議論は重要ではありません。重視すべきなのは,最先端を行くAzureと,それを世界のデータセンタに導入するMicrosoftの新製品によって,最新のクラウドソフトウェアが従来のものより優秀で,インフラストラクチャとしても強固であると証明することなのです。

Ars Technicaでも説明されているように,Azure Stackは,オンプレミスとクラウドデプロイメントで同じようなエクスペリエンスを提供できるという意味で,言わば“OpenStackのAzure版”とでもいうものだ。Computer WorldのBen Kepes氏がこのテーマを掘り下げている

既存のMicrosoftのフットプリントを持ったAzure Stackが企業にもたらす本当のメリットは,パブリッククラウド利用とプライベートクラウド利用の間に不調和がない,ということです。例えばある企業が,パブリッククラウドとしてAWS(Amazon Web Service)を利用して,プライベートクラウドにはOpenStackを構築していたとすれば,パブリックとプライベートのリソースを相互運用する上で苦労することになるでしょう。その点Azure Stackでは,パブリックとプライベートのサービス間に高い一致性があります。

ハイブリッドクラウドとしてのOpenStackの活用は,しかしながら,期待されたほどにはなっていません。プロジェクトとして多くの分野で非常に成功していますが,ベンダ製品間の一貫性という点については,必ずしも成功しているとは言い難いのが現実です。これはつまり,OpenStackがさまざまなディストリビューション間で一貫したプラットフォームをうたいながら,ディストリビューションにはそれぞれ独自性があるため,クラウド間の移植性に制限が生じている,ということです。

プライベートAzureエクスペリエンスという点では,今回がMicrosoftにとって3度目の挑戦であることも忘れてはならない。2010年に同社は,選択したホスティングパートナがデプロイするAzure Allianceを提案している。この計画が十分な同意が得られずに頓挫した後,2013年になって同社はAzure Packを発表した。当時の説明によると,“Windows Azure Packは,ユーザ自身のデータセンタ内で実行可能なWindows Azureテクノロジの提供によって,リッチでセルフサービス型のマルチテナントサービスを,Windows Azureとの一貫性を備えた形で提供可能”にするものだった。ブログの発表記事に対するコメントでMicrosoftの関係者が,Azure PackからAzure Stackへのマイグレーションについて説明している。

まず最初に重要なのは,Azure PackとAzure Stackでは,アーキテクチャに関する2つの違いに対処している点を理解することです。前者はWindows ServerとSystem Centerに加えて,VMやDB,Webサイトといったコアアイテムのセルフサービスプロビジョニングに関するAzureエクスペリエンスを効果的にエミュレートする,特別なテクノロジ層の上に構築されています。後者(Azure Stack)は,あなた(またはパートナ)のデータセンタからエンドユーザに対して,Azureサービスを構築および提供可能とすることを目的に設計された製品(Windows ServerとSystem Center上にデプロイされるものではありません)です。例えば,Azure Stackの仮想マシンサービスへのインターフェースに使用されるAPIは,AzureのサービスAPIと一致しています。つまり,DC内で本物のAzureサービスが稼働するのです。ご想像のとおり,基盤となるアーキテクチャの異なるシステムのインプレースアップグレードを行なうことは,通常ならば不可能であって,このケースもそれに当てはまります。私たちはこれまでも多くのユーザに対して,Azure Packがリリースされれば,現在のAzure Packデプロイメントの実行と稼働をAzure Packに引き継いで,ワークロードを一方の環境から他方にマイグレーションすることが可能だと話してきました。

ライセンスや価格,あるいは高可用性環境におけるインフラストラクチャトポロジがどのようなものなるかという点については,まだMicrosoftから発表されていない。一方で,Azure Stackを戦略的な製品として評価するのはTechCrunchだ

Azure Stackは多くの点で,Microsoftのハイブリッドクラウド戦略において必然的な次のステップであると言えます。自分自身のデータセンタとAzureの間で定常的にワークロードの移行を行ないたい(あるいは必要時にクラウドのリソースを利用したい)のであれば,データセンタとクラウドで利用できる共通のプラットフォームと共通のAPIを持つことで,プロセスを大幅に簡略化できます。

 
 
 

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